今年2月、JR新潟駅南口に「Sync. café&bar(シンク カフェアンドバー)」というお店がオープンしました。黒と白を基調にしたシックな空間で、ワインをはじめとしたお酒やお料理が楽しめるお店です。今回はオーナーソムリエの福田さんを訪ね、接客サービスやこだわりについてお話を聞いてきました。
Sync. café&bar
福田 明儀 Akinori Fukuda
1986年新潟市北区生まれ。「鉄板・備長炭火焼ジョー」「Soi」「よね蔵グループ ビストロ椿」「燕三条イタリアン Bit」を経て東京にある三つ星フレンチレストランで働いた後、新潟に戻って2023年2月に「Sync. café&bar」をオープン。以前はスノーボードやロッククライミングによく出かけていた。
——福田さんはいろいろな飲食店で経験を積まれたようですね。昔から飲食業に興味があったんでしょうか?
福田さん:最初は建築に興味があったので、専門学校で建築を勉強してリフォーム会社に就職したんです。ところが実際に働いてみると自分の思い描いていた仕事とはかけ離れていたので、すぐ退社することになりました。その後、百貨店で物流のアルバイトをはじめたんですけど、バイト仲間が古町のショットバーで働いていたので、僕もそこで一緒に働くことになったんです。それが飲食業との出会いでした。
——飲食業は建築業よりも福田さんに合っていたんでしょうか。
福田さん:そうですね。ショットバーの他にも「鉄板・備長炭火焼ジョー」「Soi」といった飲食店でサービスの仕事をして、飲食業の楽しさを知りました。「Soi」では社長から受けた影響が特に大きかったですね。お客様とのコミュニケーションを学ぶことができました。
——飲食業のどんなところが楽しいなって思いますか?
福田さん:お客様との距離感が近いところですかね。何かサービスをしたときに、お客様から「ありがとう」と言っていただけるのが嬉しいんです。
——ところで、お料理に合わせたお酒を選ぶペアリングは、どこで勉強されたんでしょうか?
福田さん:「燕三条イタリアン Bit」で働いていたときに、コース料理のペアリングを担当しました。ノンアルコールドリンクも担当していたので、「雪室コーヒー」や「冨士美園(ふじみえん)」のお茶に出会うこともできました。そのふたつは今、「Sync.」でも提供させていただいているんです。ソムリエの資格もその頃に取りました。
——いろいろと実りのある職場だったんですね。
福田さん:でも、もっとサービスの高みを目指した勉強がしたくて、東京にあるミシュランガイド三つ星フレンチレストランで修業することにしたんです。
——フレンチレストランのサービスって、厳しくルールが決められているイメージがありますけど。
福田さん:細部にわたるまで徹底していましたね。僕は居酒屋時代の言葉遣いがなかなか抜けなかったので「居酒屋じゃないんだから」とよく注意されていました(笑)。姿勢や所作はもちろん、気の使い方も勉強しましたね。
——気の使い方っていうと?
福田さん:例えば複数のお客様がご来店されたら、最初に椅子を引いて着席補助をするべき人物は誰なのか、まず見極めたり、お客様が右利きなのか左利きなのかまで目を光らせて、カトラリーやワイングラスの位置を変えたりするんです。あと、お料理が冷めないうちに召し上がっていただけるよう、使っている食材、調理方法、召し上がり方を10秒以内で簡潔に説明しなければならないんですよ。
——へぇ〜、すごく細かい気遣いが必要なんですね。
福田さん:そのおかげで、アッパー層のお客様に対する対応や、高級ワインの勉強をさせてもらうことができました。
——「Sync. café&bar」をオープンされたのはどんなきっかけで?
福田さん:家庭の事情で新潟に帰ってきたんですが、前の店に戻るか自分で独立するかの2択だったので、独立する道を選んで「Sync. café&bar」をオープンしました。とにかく気軽にお酒が楽しめるお店をやりたかったので、僕の得意なワインを生かしたワインバーをやろうと思ったんです。
——でも、ワインって高級なイメージがありますよね。
福田さん:イタリアやフランス以外に、ニューワールド系のワインも多く取り揃えています。その中に安くても美味しいワインがあることを皆さんに伝えて、もっとカジュアルにワインを楽しんでいただきたいんですよね。だからワインメニューにも絵を入れたりしてわかりやすくしています。
——福田さんオススメのワインってあるんですか?
福田さん:それを聞かれることが多いんですけど、お客様それぞれの好みもありますので正直難しいんです。だからオススメを聞かれたときは、逆にお客様がどんな気分なのかを聞いたり、どんな好みなのかを聞くようにしています。例えば甘口か辛口か、酸味があるものかないものか、軽めと重めのどちらがお好みか……という感じで。
——カウンターの上には、ワイン以外のお酒も置いてありますよね。
福田さん:うちのお店はワインのイメージが強すぎるみたいで、他のお酒が飲めないんじゃないかと思われているみたいなんですけど、日本酒や焼酎、ウイスキーもご用意しているんです。
——お料理やおつまみのセレクトは、何を基準にされているんでしょうか。
福田さん:もちろんお酒とのペアリングです。あとスーパーでは買えないものを基準に選んでいます。おつまみでは原木から使っている生ハムとか、熟成期間や産地にこだわったチーズがオススメですね。
——チーズや生ハムはお酒によく合いますよね。カフェとしてはどんなメニューが楽しめるんでしょうか。
福田さん:「雪室コーヒー」や「冨士美園」の日本茶が楽しめます。僕は専門学校時代に抹茶の立て方を教わったので、茶筅で立てた抹茶を使った「抹茶ラテ」もお出ししています。新潟にちなんだお菓子やフルーツを使った、アフタヌーンティーも人気がありますね。
——「Sync. café&bar」でも接客サービスに力を入れていく予定ですか?
福田さん:もちろんです。お客様との距離も近いお店ですからね。今まで僕がお世話になっていたお店のお客様が「会いに来たよ」と言って寄ってくれると本当に嬉しいんです。
——福田さんが今までやってこられたサービスが、お客さんにも伝わっていたんでしょうね。
福田さん:お客様に名前を覚えていただくことを、自分のミッションにしていた頃もあったんですよ。お客様との会話のなかでお名前や職場を教えてもらえたら、1週間以内に「先日はありがとうございました」って挨拶に行っていたんです。そうすると、またお店に来てくれるんです。そんなふうに仲良くなったお客様のなかには、15年経っても交流のある方もいますね。
——それってなかなかできないことですよね。
福田さん:僕は他に取り柄がなかったから(笑)、そういうところで努力していたんです。僕を今まで育ててくれたのはお客様だと思っています。
——お客さんへの感謝の気持ちをずっと大切にされているんですね。
福田さん:新潟の人たちが飲食店を選ぶポイントって、「誰に会いに行くか」「誰の料理を食べたいか」というように、「人」が基準になっているような気がします。ここは駅に近いけど人通りの多い場所じゃないから、うちのお店を目指して来てくれるお客様しか来ないと思うんです。だから「駅南に来たから福田の店に寄ろうか」って思い出してもらえるようなお店になりたいですね。
——ありがとうございました。最後に「Sync.」という店名の由来を襲えてください。
福田さん:もともと「In Sync.」という単語で「息を合わせる」とか「同調する」といった意味があるんです。食材、料理とワインの調和はもちろん、人や街とも調和していけるお店を目指していきたいと思っています。
Sync. café&bar
新潟市中央区笹口1-10-20
025-290-7191
11:00-23:00
月曜休