立川志らくの元で修業を積んだ
新潟出身の落語家「立川らく萬」。
カルチャー
2026.01.27
日本の伝統芸能のひとつに「落語」があります。落語にはいくつかの流派があり、立川談志が創設した「落語立川流」もそのひとつです。「落語立川流」といえば、落語にとどまることなく、テレビのバラエティ番組でも活躍している立川志らくが有名ですよね。その立川志らくに弟子入りして「真打」を目指して頑張っているのが、新潟出身の落語家「立川らく萬」さんです。新潟市で行われていた落語会の会場を訪れ、らく萬さんからいろいろなお話を聞いてきました。
立川 らく萬
Rakuman Tatekawa(落語家)
1993年新潟市西区生まれ。新潟大学を中退した2015年、落語家の立川志らくに入門し「らくまん」の名を受ける。2023年には二ツ目に昇進し「らく萬」と改名。落語の他にもテレビ、ラジオで活躍中。ジャズや旅先での食べ歩きが好き。
弁護士を目指して入学した大学で、
落語の魅力にハマってしまう。
――落語との出会いはいつだったんですか?
らく萬さん:小学1年生のときには耳にしていました。それというのも、落語好きな母がCDで頻繁に古今亭志ん生(ここんていしんしょう)の落語を流していたんです。意味はよくわからなくても面白いと感じていましたね。中学生のときには、母に連れられて寄席へも行きました。
――幼い頃から落語を聞いてきたんですね。
らく萬さん:でも成長するうちに落語への興味は薄れて、ジャズや自転車競技にのめり込んでいったんです。
――そういうことって、よくありますよね。どうして再び落語に?
らく萬さん:弁護士か報道記者になりたくて新潟大学法学部に入学したんですが、弁護士を目指すのなら弁がたつように落語を勉強したらいいんじゃないかと母から勧められ、落語研究部に入部したんです。
――それで落語にハマったんですね。
らく萬さん:中学時代に所属していた吹奏楽部は集団パフォーマンスだったので、個人パフォーマンスの落語が新鮮に感じたんです。先輩たちの前で落語を披露したときに、4年生の先輩から「面白い」と絶賛されたことで、人を楽しませる喜びを知りました。
――落語をはじめてみて、いかがでした?
らく萬さん:一般のお客様の前で落語を披露する寄席が催されて、そのとき、落語を披露した新入生のなかで誰がいちばん面白かったかのアンケートを取ったんですけど、私は選ばれなくてとても悔しい思いをしたんですよね……。
――それは残念でしたね。
らく萬さん:その翌日にデイサービスセンターで同じネタを披露したんですが、前日にスベったところを反省して伝わりやすい話し方を意識してみたら、それだけでウケるようになったんですよ。自分の力量次第でこんなにも反応が変わるのかと驚きました。ウケてもスベっても、すべて自分の責任なんですよね。
――そうした難しさも含めて、落語の面白さにハマったわけですね。
らく萬さん:落研の活動が忙しすぎて、大学を中退することになってしまいました。落研に入部するときに「落語にハマってしまったら、そのまま落語家を目指せばいい」と冗談で言っていたのに、冗談じゃなくなってしまったんです(笑)

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持ちネタをリスペクトしていた落語家、
立川志らくに弟子入りする。
――本格的に落語家を目指すことにしたのは、どうしてだったんですか?
らく萬さん:落語にハマったこともありましたけど、両親の影響があったのかもしれません。父はカメラマン、母はライターをやっていて、いずれも人との出会いから様々なことを学び、自分の仕事にフィードバックしているんです。落語家もそれに近いような気がしたんですよね。
――らく萬さんは、立川志らくさんのお弟子さんなんですよね。
らく萬さん:小学生の頃によく聞いていた落語が、古今亭志ん生の「無精床」だったんですけど、志らく師匠の持ちネタにも「無精床」があって、よりギャグが盛り込まれていました。私も落研では「無精床」をはじめ、師匠の持ちネタをよく演じさせていただいていたので、師匠の元に入門させていただこうと決心したんです。
――どんなふうに入門させてもらったんですか?
らく萬さん:入門させていただきたい旨を手紙にしたためて送ってから、師匠に会いに行ったんです。ものすごく緊張しましたけど、落語や入門への思いを伝えました。それから改めて親と一緒にご挨拶に伺って、その一週間後に上京して入門することになったんです。
――それで落語家としての修業がはじまったわけですね。
らく萬さん:落語家には「見習い」「前座」「二ツ目」「真打」という序列があるんです。最初は「見習い」として、師匠の身の回りのお世話をさせていただきます。2ヶ月ほどすると「前座」にしていただき、「らくまん」という芸名をいただきました。それから8年間修業を積んで「二ツ目」に昇進し、芸名も「らく萬」に改めたんです。
――「二ツ目」になるには、かなり修業を積まなければならないんでしょうか?
らく萬さん:「落語を50演目覚える」「太鼓を叩けるようになる」等の条件を満たした上で、師匠からの許可をいただいて昇進することができます。「二ツ目」になるとようやく自分で仕事を受けて、落語の上演をすることができるんです。

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テレビやラジオ、ファッションショー、
昇進して広がった仕事の幅
――「二ツ目」になってから、仕事の幅は広がったんでしょうか?
らく萬さん:そうですね。落語会の他にテレビやラジオのお仕事もやらせていただいてます。
――おっ、どんな番組なのか教えていただけますか?
らく萬さん:FMつしまで「立川らく萬の萬だらけ」という番組を担当したり、BSN新潟放送の「土曜ランチTVなじラテ。」でグルメレポーターをやったりしています。その他にイベントの司会もやりますし、着物屋さんのファッションショーでは顔に金箔を塗って、モデルとしてランウエイを歩きました(笑)
――いろんなお仕事をされているんですね(笑)
らく萬さん:テレビやラジオの仕事って、落語とは使う頭が違うんですよ。落語はあらかじめ準備した芸を披露するのに対して、テレビやラジオはその場での瞬発力が求められるので、とても勉強になります。師匠からは「10通り用意しておいて、そのうちひとつでも使えたら御の字だと思え」とアドバイスをいただきました。
――新潟のテレビ番組でも活動されているんですね。
らく萬さん:テレビ番組以外にも、偶数月の第3日曜に本町商店街にある「#きーぼうdo.」というレンタルスペースで、定例落語会「まんかい」を開催しています。地元である新潟の皆様にも私の落語を聞いていただき、応援していただけたら嬉しいですね。
――これを機に落語にハマる新潟県民が増えるといいですね。
らく萬さん:今年の7月26日に、志らく師匠を新潟県民会館へお招きして落語会を開く予定なんです。ぜひ足を運んでいただき、名人の落語に触れていただきたいですね。

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「真打」になってからが、
落語家として本当のスタート
――2026年がスタートしたばかりですけど、新年の抱負があったら教えてください。
らく萬さん:落語には本題に入る前の「まくら」というものがございまして、自己紹介や時事ネタなんかを話しながら会場の雰囲気を温めるんです。私はどうも自虐ネタに走りがちで、お客様から「笑えない」というお声もいただいてしまったので、今年は明るく前向きな「まくら」を心掛けたいですね。半分ナルシストなくらいで丁度いいかなと思っています。
――自虐ネタはダメなんでしょうか? 私は割と好きなんですけど……(笑)
らく萬さん:これから楽しい落語で笑っていただこうというのに、お客様をどんよりさせてしまうんですよ(笑)。私の好きなジャズで例えるなら、スイングで盛り上がる前にブルースばっかり聴かせているようなものでしょうか。
――なるほど(笑)
らく萬さん:あとは一年でも早く「二ツ目」から「真打」に昇進したいですね。そこからが、ようやく落語家としてのスタートだと思っています。ただ「真打」になれればいいというわけでもなく、できるだけいいかたちでなりたいと思っているんです。そのために芸を磨くのはもちろん、お客様とのお付き合いを大切にしていきたいと思っています。地元である新潟の皆様にも、ぜひ私の落語家としての成長を見守っていただけたら嬉しいです。

立川 らく萬
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