角田山の麓に広がり、季節によってさまざまな自然の姿を見せてくれる新潟市西蒲区「上堰潟公園(うわせきがたこうえん)」。その目の前にある「Taibow! coffee&gelato soft(タイボウコーヒーアンドジェラートソフト)」は、北海道に魅せられた兄弟の夢がぎっしり詰まったカフェです。お店を開くまでのストーリー、なぜこの場所を選んだのかなど、これまでの人生とあわせて、堀内敬祐さん、育郎さんのお二人に、カフェを開くまでの兄弟の物語、お聞きしました。
Taibow! coffee&gelato soft
堀内敬祐 Keisuke Horiuchi
1988年新潟県生まれ。北海道の大学にて陶芸を専攻。卒業後はコーヒーを学ぶため、カフェの専門学校へ入学。スペシャリティコーヒー協会主催のラテアート大会(北海道)にて、2回優勝。全国ファイナルには3回出場の経歴を持つ。
Taibow! coffee&gelato soft
堀内育郎 Ikurou Horiuchi
1990年新潟県生まれ。小樽商科大学にて経済経営を学び、金融機関に就職するも、イタリアのジェラートマシンメーカーへ修業するため渡欧。時間さえあればマンガから経済関連書などを読み漁るほどの読書好き。
――まずはお店のことについて教えてください。どんなコンセプトのお店ですか?
堀内敬祐さん(以下/兄):コンセプトは「北海道でみつけたワクワクを新潟のみなさんのもとへ」です。僕たち兄弟は新潟出身ですが、高校卒業後は北海道で暮らしていました。このカフェは、そこで出会った素晴らしい経験を持ち帰って開いた、そんな店です。店の名前を読んで字のごとく、コーヒー、ジェラート、ソフトクリームが主体となっています。
――“北海道”という気になるキーワードが出てきましたが、ひとまず、コーヒーとジェラート、ソフトクリームについて詳しくお聞きしたいと思います。
堀内育郎さん(以下/弟):まずは、ジェラート&ソフトクリームから。ソフトクリームのテイストは約1ヶ月毎に新しくなります。ジェラートは開店当初から人気のピスタチオをはじめ、カルダモン、バジルなど、スパイスやハーブを使った珍しいテイストも日によって提供しています。ミックスから手作りのソフトクリームは新潟では珍しいので、ぜひ食べてもらいたいですね。
――スパイス、ハーブのジェラートとは珍しいですね。めちゃくちゃ気になります。コーヒーはどのような?
兄:コーヒーメニューの要であるコーヒー豆は、北海道時代にお世話になった「丸美珈琲(マルミコーヒー)」、「Standard Coffee Lab.(スタンダードコーヒーラボ)」の2ヵ所から届けてもらっています。どちらも北海道の師匠で、とてもお世話になりました。北海道は深煎りの文化があるので取り入れつつ、浅煎りも織り交ぜながら、幅広くスペシャリティコーヒーを提供しています。
――それでは北海道についていろいろとお聞きしていきたいと思います。おふたりは、高校卒業後、どうして北海道に行かれたのですか?
兄:中学生時代に野球部に所属していまして、試合中に「脳動静脈奇形破裂による脳出血」を起こして倒れてしまったんです。それにより言語と計算機能に障害が残ってしまい、進学することが危うくなったんですね。それでもどこか大学に行きたいと思い、当時先生といろいろ探していたら北海道の大学を見つけて。その大学では陶芸が学べると知って、昔から工作や器などが好きだったので、北海道に行くことにしたんですよ。
弟:僕も野球部に所属していて、最後の試合が終わるまでは進学先なんて、全然考えていなかったんです。いざ、どうしようかと考えはじめたら、みんな東京とか中心部に行きたがっていて、それがなんか嫌で…。とりあえず東京よりも北にある県に行こうと漠然と思ったんです。それで見学とかしている期間に、たまたま兄のいる北海道へ遊びに行ったら…。もう、決めましたよね。北海道に惚れ込んでしまって。道内の大学を目指しました。
――おふたりは、北海道のどんなところに魅了されたのですか?
兄、弟:あの雄大な大自然と、適度な都会感ですね!
兄:今でもテレビ番組で北海道が紹介されていたりすると、あぁ…また行きたいなって、うずうずしちゃいます(笑)。
弟:北海道に帰りたいなって思いますもんね。
――カフェをしたいなと思ったキッカケも北海道で?
兄:あんまり覚えてはいないのですが、昔から「兄弟でお店をしたいね」って話は何となくしていて…北海道でコーヒーに感動したことが「Taibow! coffee&gelato soft」をオープンしたキッカケですね。初めて「ラテアート」というものを間近で見たとき、大学で学んでいた陶芸は約3ヶ月もかけてひとつの作品を作り上げるのに、一瞬であんな素敵な作品ができるなんてと、とにかく感動しました。それからカフェをやりたいなと思いました。
弟:そんなこんなで、カフェをするならジェラートとかも出したいねって話して、僕はイタリアのジェラートマシーンメーカーで学ぶために渡欧して、帰国してからも北海道のジェラテリアで修業しました。
――北海道で感動したこと、学んだことは、やはりどれも大きかったですか?
弟:とても大きかったですね。兄弟そろって北海道が好きになったし。北海道で暮らしていたので、ほとんど同じ感動を味わってきたんです。それはお店を作るうえでとても良い経験となりました。
――北海道のカフェでも修業はされたのですか?
兄:大学を卒業してから、カフェの専門学校に1年間通いました。その時の先生が、今でもお世話になっている「丸美珈琲」の社長だったんです。コーヒーの味を判別するテイスティング大会で世界3位の経歴もある方で。どうしても技術や知識をもっと学びたいと思い、ダメだと断られてもしつこくお願いして、なんとか働かせてもらいました。
――世界レベルの技術を学んできたんですね。脳出血を起こしたことがキッカケとなり、おふたりは北海道に出会ったと思います。育郎さん(弟)は、どこかでお兄さんをサポートしなければと考えていましたか?
弟:大学時代は同じ北海道で暮らしているし、ぼんやりとは考えていましたが、いざ兄弟でお店をやろうと決めた時にはサポートというよりは大学で学んできた経営学をいかして、数字(お金)の面は自分が担当しようと思いましたね。
――そうなんですね。話していてもそうですが、とても仲が良いですよね。
兄、弟:いや、めちゃくちゃ喧嘩しますよ(笑)。
――目の前には角田山が見渡せて、とても景色の良い立地ですが、どうして新潟市内ではなくこの場所を選んだのですか
弟:当初は別の場所に出したいなって考えていたんですが…。実家が農家をしていて、農業用地として持っていた土地だったんですよ。
兄:はじめてカフェを出すには、ちょっと田舎だし、敷地も大きしと、いろいろ考えることがたくさんあったんですよ。でもこの場所は自分たちの地元でもあり、北海道に似た環境だなってふと思い。この場所でチャレンジしてみようと決めました。
――この場所の最大の魅力はなんですか?
兄:ここから見える自然の景色と、ローカルならではの雰囲気ですね。周辺には彌彦神社や岩室温泉などがあり、ドライブコースになっています。北海道にいた時は、ひとつの目的地へ行くよりも数ヵ所の目的をドライブすることが多くて、その環境にも近い立地だなと。「北海道に近いもの」をこの場所に感じたことが一番大きな理由ですね。
弟:自分たちの人生の大きな転機となった北海道。そこで学び、感じたことは、地元であるこの場所とどこかシンクロしていて、その環境でカフェをやらせてもらえている今はとても充実した毎日です。こだわりのコーヒーやジェラートはもちろんですが、ここから見える景色や雰囲気も一緒に体験してもらい、ちょっとでも北海道を感じてもらえたら嬉しいです。
お互い北海道で暮らし、一緒にカフェをはじめた堀内兄弟。とても仲が良いなぁと、ほっこりする取材の中、ちょっと面白い話が飛び出しました。なんと二人のお母さんは占い師。しかもよく当たるんだとか。実際に開業のタイミングも占ってもらい、結果に忠実にスケジュールを立てたというから驚きです。最近の占いでは、「今年は我慢。来年から変化の年」と出たそうで、オリンピックイヤーでもある2020年から「Taibow! coffee&gelato soft」に何か変化が訪れるかも? 北海道で感じた、体験したことを新潟へと持ち帰ったふたり。北海道で暮らしたから気がついた地元の魅力。きっといろいろなキッカケが重なって、このカフェはこの場所にあるんだと思います。ジェラートを相方にコーヒーを飲んで、豊かな自然を眺められるゆったりとした時間がここにあります。
Taibow! coffee&gelato soft
新潟県新潟市西蒲区松山56-4
0256-77-8619