西蒲区五之上(旧潟東村)にある「暮らしの道具と民芸 うさぎや+(たす)」。店先からは粟ヶ岳をはじめいくつもの山々が望め、裏庭には鳥の巣箱があります。なんだかおじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに来た、小さい頃の夏休みが思い出されるような場所。お店を営む長谷川さんに、いろいろとお話を聞いてきました。
うさぎや+
長谷川 順子 Junko Hasegawa
1959年福島県生まれ。福島の大学を卒業後、結婚を機に新潟に転居。公務員として働きながら趣味で裂織をはじめ、40代前半に独立。裂織作家としての活動を経て、2013年に旧村松町で「うさぎや+」をオープン。2022年、店舗を西蒲区に移転。
——なんだかすごく懐かさを感じる、素敵な建物ですね。
長谷川さん:去年まで10年ほど旧村松町にお店を構えていたんですけど、ここからの景色と建物が気に入って移転してきました。草刈機の音がご近所迷惑ではないかとかいろいろ気が引けるところがあって、広くてよい場所があったらいいなとあちこち探していたんです。築70年の古い平屋は、主人にも協力してもらい、なるべく自分たちで手をかけて修繕しました。
——店内には家具や小物類、民芸品といろいろありますね。「うさぎや+」さんはどういったお店なんでしょう?
長谷川さん:コンセプトは「築70年の古い家が脇役のモノ(主役)との出会いで幸せを感じてもらう店」。「暮らしを豊かにする道具」「長く使われてきた古家具」「素朴でかわいらしい民芸品」、この3本柱のお店です。
——商品は長谷川さんがセレクトされているんですか?
長谷川さん:私が集めてくるものもあれば、主人がチョイスするものもあります。アフリカの籠やグアテマラの民芸品など、卸業者さんを介して仕入れているものも一部ありますけど、できるだけ直接買い付けに行くようにしています。お伺いできる場所に限りがあるので、新潟、東北、長野の作家さんのものが多いかな。
——「なるべく直接買い付けしたい」というのには、何かお考えがあるのでは?
長谷川さん:その「もの」だけじゃなくて、作家さんの暮らしぶりや人物像も含めて「うさぎや+」にお迎えしているような気がするんです。だから作家さんに直接お会いして仕入れたいと思うんでしょうね。
——長谷川さんはどうして「うさぎや+」をはじめたんでしょう?
長谷川さん:ものづくりが好きで、公務員として働きながら趣味で裂織をはじめたんです。教えてくれるところがあるというので習いに行き、どっぷりハマりました(笑)。もっと本格的に裂織をやりたくて、40代前半で仕事を辞めて、10年くらい「裂織工房 うさぎや」という屋号でクラフトイベントだとかギャラリーの企画展で作品を販売させてもらって、暮らしの足しにしていました。それから自然と「自分のお店を持ちたいな」と思うようになったんです。
——それで旧村松町にお店を持たれたんですね。
長谷川さん:裂織をメインにしたお店にしようと思っていたんですけど、私の作品だけでは品数が足りなくて。それまでイベントなどで知り合った県内外の職人さんの作品も集めたお店にしました。「うさぎや」に私以外の作家さんの作品も「プラスされる」のだから、「うさぎや+」という店名にしたんですよ。
——裂織という技法、はじめて知りました。
長谷川さん:裂織にはリサイクルの要素があるんですよ。着なくなったお洋服を裂いて織ると、丈夫になってもう一度使えるようになります。寒いところの文化みたいですね。
——細かい手仕事でしょうし、作るのが嫌になりませんでしたか?
長谷川さん:飽きることなく、毎日織っていましたね。作るのが嫌になったり、集中できなかったりってことはまったくありませんでした。作品づくりもイベントに行くのもぜんぶが楽しみでしたよ。
——レトロな家具もこのお店にぴったり合いますね。
長谷川さん:古家具は、最初は売り物ではなかったんです。古いものが好きなので、以前のお店でも気に入った棚とかテーブルとかを備品として使っていました。そしたら、それを売って欲しいというお客さまが度々いらっしゃって。しばらくお断りしていたんですけど、なんだか申し訳ないから「お店にあるものはぜんぶ売りましょう」ということにしました。それで古家具が商品に加わって、今みたいなお店になったんです。
——ライトもテーブルもぜんぶ買うことができるわけですね。
長谷川さん:ぜんぶを売り物にしているんだけど、どれも愛着があるので、いざ「これが欲しいです」と言われるとドキッとすることもあります(笑)
——長谷川さんの裂織作品も気になります。
長谷川さん:実は2年ほど前に体調を崩し、細かい作業に目が回るようになってしまいまして。裂織仕事はお休みしていたんですが、だいぶ回復してきたので、そろそろ新作に着手したいと思っています。
——秋に向けて、素敵な企画があるそうですね。
長谷川さん:9月と10月には布小物の作家さん、11月は革製品の作家さんの企画展を計画しているところです。年に3、4回は企画展をやりたいと思っているのに、計画性がなくて毎回準備がギリギリになってしまうんです。来年以降はもうちょっと余裕を持って取りかからないといけないですね。
暮らしと道具と民芸 うさぎや+
新潟市西蒲区五之上243
毎週土曜日、第3・4日曜日 10:00~16:00営業