カジュアルにいろんな額装が楽しめる「INCH FRAME WORKS」。
ものづくり
2020.02.03
壁に飾りたいお気に入りの絵や写真、皆さんはどうしてますか? 額縁を買って額装してみたいんだけど、画材店や額縁店に注文するのは敷居が高いし…ちょうどいいサイズのものを探すのも面倒だし…。そんなふうに悩んで結局作品を飾れずにいる人も多いんじゃないでしょうか? そんなときに頼りになるのが、誰もが気軽に楽しめる額装を目指して立ち上げられた工房が「INCH FRAME WORKS(インチフレームワークス)」です。今回は中村さんと水品さんのお二人に額装の魅力についてお話を聞きました。

INCH FRAME WORKS
中村 正史 Masashi Nakamura
1982年新潟市江南区生まれ。印刷会社に勤めた後、新潟市中央区の額縁店に就職。プライベートの額縁作りからはじまり、2019年に同じ額縁店で働いていた水品さんと「INCH FRAME WORKS」をオープン。お笑い好きが高じて中学生時代に芸人を目指したこともあったが、相方に振られて諦めた過去を持つ。

INCH FRAME WORKS
水品 麻矢子 Mayako Mizushina
1976年三条市(旧下田村)生まれ。新潟市中央区の額縁店に17年勤めた後、もっと気軽に額縁を使ってほしいという思いから、後輩だった中村さんと共に2019年「INCH FRAME WORKS」をオープン。趣味はイラストを描くこと。
自分で額縁を作りたい。お客さんの思いを形にしたい。
——こちらの工房にはお洒落な額縁が色々ありますね。そもそもなぜ額縁のお店を始めることになったんですか?
中村さん:以前からもの作りの仕事をしたかったんです。勤めていた新潟市内の舗額縁店で額装の知識や技術を勉強しながら、プライベートでオリジナルフレームを作って楽しんでいたんですよ。そしてあるとき、お店の売り場に自分でカスタムした写真立てサイズのオリジナルフレームを6点くらい置かせてもらったんですね。そしたら驚いたことに完売したんです。そのことで手応えを感じて、自分で作った額縁を売ってみたいって思うようになりました。

水品さん:私も中村さんと同じ額縁店で17年間働いていたんです。お客さんの要望に沿った額縁を探して額装する仕事だったんですが、額縁メーカーってそんなに多くないので、似たような額縁しかないんですよ。だからおすすめした額縁と、お客さんがイメージしている額縁との微妙な色の違いを指摘されるたびに、歯がゆさを感じていたんですね。私も元々もの作りが好きだったので、自分達で額縁を作れればそういう要望にも応えられるんじゃないかって思ったんです。あと17年間額縁店で販売をやっていて、自分の中にやりきった感じがあったので、何か新しいことをやってみたいと思い始めたんですよね。
——それぞれの思いが合致した感じなんですね。工房が北方文化博物館のイベントステージの上ってすごいですよね(笑)
中村さん:北方文化博物館では毎年藤の咲く季節に、藤棚のライトアップをしてるんですよ。そのときに開催される伝統工芸の展示イベントを私もスタッフとして手伝っていたんです。その打ち合わせの席で、今度額縁の工房を始めたくて場所を探しているって話をしたら、この場所を紹介してもらったんです。このスペースには今までもいろんな工房が入れ替わり立ち替わりしてたようで、そのときたまたま空いてたんです。そこで、この場所に工房を作って昨年から活動させてもらってます。いろんな人の縁でやらせてもらってるって思えますね。

お客さんのふんわりしたイメージを形にする難しさ。
——「INCH FRAME WORKS」では自分たちで作った額縁を販売してるんですよね?
水品さん:というよりは、額装なんです。お客さんに額装したい絵や写真を持ち込んでもらって、それに合わせた額縁を作ったりマットボードを入れたりして額装する工房なんですよ。たとえば絵手紙をもらって飾ってみたいけど、どうやって飾ったらいいのかわからないっていうお客さんの相談に乗って、アドバイスをしながら額装しています。お客さんの気持ちに沿いながら、額装する作品をより良く見せられるように気をつけてます。お客さんの持っているふんわりしたイメージを、形にしていくのが私たちの仕事なんです。
——販売ではなく額装をする工房なんですね。額装の難しいところを教えてください。
水品さん:お客さんの持ち込む作品も要望も様々ですから、同じものはないし正解はないですね。色についても細かい指示があるので、可能な限り対応しています。
中村さん:一言の要望もなくて完全にお任せだったりすると、それはそれでプレッシャーなんですよね(笑)。全ての責任がこちらにかかってきますから、引き渡しまでドキドキしますよ。でも、信用してもらえるのはありがたいと思います。

——それこそお客さんのイメージを形にする難しさですね。技術的にも難しさってあるんですか?
水品さん:私は主に塗装を担当することが多くて、塗装する時は仕上がりをイメージしながら工程を考えていくんです。でも、木目の様子とか塗料の染み込み具合で色や木の表情が変わってしまい、仕上がりのイメージが変わってしまうこともありますね。とても難しいところです。
中村さん:完成のイメージによってシンプルな塗装のときもあれば、手間がかかる塗装もあります。シンプルな塗装では、水性塗料で色を塗って手や布で磨くだけなんです。これはこれでいい味が出るんです。逆に手間がかかる作業の例としては、水性塗料を塗った後に盛り上げるための塗料でモールドをつけて、さらに水性塗料を塗ってサンドペーパーで磨き、また水性塗料を塗って仕上げに布で磨くっていう…。こういうのもイメージを形にするために必要な工程ですね。

気軽に額装をオーダーできるカジュアルな店になりたい。
——これから「INCH FRAME WORKS」をどんな工房にしていきたいですか?
中村さん:「額縁」っていうとすごく仰々しいイメージを持つ人が多いみたいなんですけど、額装するものはけっしてアートに限らないと思うんです。もっと身近なインテリアとして楽しんでほしいですね。額装の楽しみを若い世代の人にも知ってもらえたらと思ってます。そのためにも腕を磨いて、オーダーを受けた額装ひとつひとつを丁寧にやっていきたいですね。
水品さん:服を買う時って、ブランドショップもあればカジュアルな店もあって、いろんなタイプの店がありますよね。それと同じように、額装する時もいろんな店があっていいと思うんです。「INCH FRAME WORKS」がお客さんから気軽に額装の相談をしてもらえる、カジュアルな店になればいいと思ってます。額装した作品を渡したときにすごく感激してくれたお客さんの表情を見て、もっとこういうお客さんを増やしたいなってと思ったんです。額装の魅力にハマる人が増えてくれるように、うちがその取っ掛かりになってくれたらいいですね。

額装の楽しみや魅力を広めるため、お客さんのオーダーに合わせたオリジナルフレームの製作をしている「INCH FRAME WORKS」の中村さんと水品さん。敷居が高いと感じる額装のイメージを取り払って、もっとカジュアルで気楽な額装店を目指して活動をしています。みなさんも世界にひとつのオリジナルフレームで、気軽にインテリア感覚で額装を楽しんでみてはいかがでしょうか。
INCH FRAME WORKS
〒950-0205 新潟県新潟市江南区沢海2-15-25 北方文化博物館西門イベント広場内
025-369-4067
土曜日曜休(他不定休有)
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