伝統の染色技術と、時代に合った製品づくり「越後亀紺屋 藤岡染工場」。

「越後亀紺屋 藤岡染工場」にお邪魔して、染物について教わる。

古くから日本に伝わる手ぬぐい。その用途は実にさまざまです。手洗い後に手を拭く、流れる汗を拭く、入浴の際には体を洗うのにも使い、掃除のときには頭のチリよけにかぶる、などなど。わざと端っこを縫わないことで水切れがよく、乾きもいいので、清潔を保つことができるという工夫もなされています。そんな手ぬぐいをはじめ、いろいろな染物製品を作っているのが阿賀野市にある「越後亀紺屋 藤岡染工場」。今回は専務の藤岡さんに、染物について教わってきました。

 

越後亀紺屋 藤岡染工場

藤岡 利明 Toshiaki Fujioka

1976年阿賀野市生まれ。越後亀紺屋 藤岡染工場専務。寿司や天ぷらなどの和食好き。東京出張の際はガード下の飲み屋で、焼きトン、モツ煮を肴にホッピーで一杯やるのが楽しみ。

 

造形大生とのコラボ手ぬぐいから消防団の法被まで

——今日はよろしくお願いします。越後亀紺屋 藤岡染工場は染色工場なんですよね?どんな製品を作っているんでしょうか?

藤岡さん:いろいろな製品を作っている中でも、手ぬぐいがメインになっています。とくに長岡造形大学の学生とコラボした「新潟手ぬぐい」は2007年から17年間続いている人気商品ですよ。私の妹が長岡造形大学の卒業生だったという縁もあって、妹の恩師である教授からご提案いただいて実現したものなんです。学生のデザインを教授が監修し、それをうちで製品化しています。毎年10種類の新デザインが登場して、現在では50種類が道の駅など観光施設で販売されています。

 

 

——このシリーズの手ぬぐいは、いろんなところでよく見かけますね。

藤岡さん:あとは、財布、がま口、ポーチ、トートバッグなどの生活雑貨や、エプロン、ハンチング、前掛けなど渋めなファッション雑貨などのオリジナル商品を作って販売しています。あと、5〜6年前からはじめた「tewel(テオル)」というコラボ商品があります。新潟県の紡績メーカーで作っているふきんの生地を使って、うちで染色した手ぬぐいテイストのタオルです。観光みやげの要素が強い「新潟手ぬぐい」と違って、より生活に密着した製品を作ってみたいと思っていたんですよね。今回のコラボでそれが実現しました。

 

 

——ちなみに、オーダーではどんな製品を作っているんですか?

藤岡さん:販促品として配ったり、オリジナルグッズとして販売する企業の手ぬぐいが多いですね。そのほか、消防団の法被(はっぴ)、酒蔵の前掛け、祭り半纏(はんてん)などのオーダーをもらっています。染物製品というのはだいたいが分業でおこなわれているので、うちのように受注からデザイン、染色、納品まで一貫しておこなっている工場はめずらしいんですよ。その分、お客さんの要望をしっかり受け止めた製品を作ることができると思ってます。

 

創業270年以上続いている老舗は、糸染めから始まった。

——藤岡染工場さんはいつ頃から続いているんですか?

藤岡さん:創業が江戸時代の寛延元年(1748年)ということですので270年以上続いています。

 

——おお、すごい。

藤岡さん:初代が阿賀野市で糸染めをはじめて、三代目が江戸で「印染め」という、文字や柄を入れて染め上げる技術を学んできた頃から「亀紺屋」という屋号で呼ばれはじめたそうです。現在は私の父の代で八代目になります。

 

——「亀紺屋」という屋号にはどんな意味があるんでしょうか?

藤岡さん:そもそも江戸時代の頃には染物屋のことを「紺屋」と呼んだらしいんですね。もとは藍染の職人を指していたようですが、のちに藍染に限らず染物屋全般の代名詞になったのだそうです。うちの先祖には代々「亀」の字がつく名前の者がいたことから「亀紺屋」と呼ばれるようになったようです。でも「亀」というのが染物に使う「瓶」の当て字だという説もあるみたいですね。

 

——職人さんは現在何人いらっしゃるんですか?

藤岡さん:現在は6人の職人がいます。昨年の1月に60年間勤めてくれたベテランの職人が引退し、そのベテラン職人が育てた若手職人たちががんばってくれています。一番若い職人は25歳で長岡造形大学出身です。ほとんど手作業ですから、職人の感覚というのがとても大切なんですね。若手職人がどんな風に育ってくれるのか楽しみです。

 

3つの染色技法を使い分けて製品を生み出す。

——染物について、いろいろ教えてください。

藤岡さん:はい。まずは、デザインしたものをプリントアウトして、手でカッティングして型紙を作ります。それから染色するわけですが、3通りの染色技法があるんです。ちょうど今「浸染(しんせん)」の作業中ですので、工場に行ってみましょうか?

 

——(移動して)ここが工場ですか。…おお!なんか長い布を前に作業されてますが、何をしているところですか?

藤岡さん:これは「浸染」という技法で、半纏を染める作業をしているところです。「浸染」は「浸し染め」とも呼ばれて、法被や前掛けのように大きいものや生地が厚いものを染めるときに使われる技法なんですよ。今やっているのは、白く抜いて染まらないようにする部分に糊を塗り、その上から砂をかける作業です。家の壁などを塗装するときに、塗らない部分をマスキングするのと似た作業で、糊と砂がマスキングテープのような役割をするんですね。

 

 

——天然の素材を使った、昔ながらの技法って感じがしますね。

藤岡さん:そうですね。糊の上に砂をかけた後は、おもてに干して天日で乾燥させます。充分に乾いたところで染色槽に何度も浸して生地を染めていくんです。染め上がったところで砂と糊を洗い落とすと、白く抜けた部分が文字や柄として現れるわけですね。

 

 

——他の染め方にはどんなものがあるんですか?

藤岡さん:手ぬぐいを染めるときに使われるのは、「注染(ちゅうせん)」という技法です。「注ぎ染め」とも呼ばれていて、薄めの生地に同じ柄のものを大量に染めるときに使われます。10mの長さの生地に型紙を使って白抜き用の糊を塗って、手ぬぐい1枚分の長さで折りながら繰り返していきます。折り重ねた生地の上から、ジョウロのような形のヤカンで染料をかけて染め上げます。そのとき生地の一番下から掃除機のように染料を吸引し、すべての生地に染料が染み渡るようにするんですよ。その後、水で染料と糊を洗い流し、天井から干して乾燥させます。充分乾いたら裁断して完成です。

 

 

——それでは最後の三つ目の染め方も教えてください。

藤岡さん:「引染(ひきぞめ)」といって刷毛を使って塗りこむようにして染める技法です。繊維に染料がしっかりと食い込んで、使うほどに風合いが出てくるという長所があります。大変手間がかかるので小ロットの製品や、神社ののぼり旗や法被などを染めるときに使いますね。

 

時代に合わせた染物を作り続けていきたい。

——今後はどんな製品を作っていきたいと思っていますか?

藤岡さん:「藤岡染工場」は歴史が古いということもあって、「伝統的な老舗」というイメージを持たれていると思うんです。でも、それで満足することなく、時代の流れに添ったライフスタイルに合わせて製品を作っていきたいと思っています。これからもお客さんの生活の中でよろこんで使ってもらえるものを作り続けていきたいですね。

 

 

造形大の学生や企業とのコラボ製品からオーダーを受けて作る製品など、多くの染物製品を作っている「越後亀紺屋 藤岡染工場」。老舗としての伝統技術を守り続けながら、時代に合わせた製品づくりをしています。「藤岡染工場」がどんな染物製品を生み出すのか、今後も注目したいです。

 

 

 

越後亀紺屋 藤岡染工場

〒959-2021 新潟県阿賀野市中央町2-11-6

0250-62-2175


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