新潟市中央区の「株式会社MAD PRODUCTION(エムエーディー プロダクション)」は、企業のプロモーション映像やテレビCMなど、様々な映像制作の現場で活躍している会社です。世の中の動画コンテンツが増加し、クオリティの高い映像制作の需要がますます高まっている中、プロとしての作品づくりにどんな思いがあるのか、社長の石村さんに詳しくお話を聞いてきました。
株式会社MAD PRODUCTION
石村 剛 Tsuyoshi Ishimura
1981年燕市(旧吉田町)生まれ。新潟ビジネス専門学校卒業後、株式会社テレビユニオンで5年間勤務。その後、株式会社MAD PRODUCTIONへ転職。2014年から同社の代表取締役へ就任。
——まずは「MAD PRODUCTION」さんの事業内容を教えてください。
石村さん:企業のプロモーション映像、ブライダル映像、テレビCMなどを中心に制作している会社です。2007年に創業してから、結婚式場と契約してブライダルの様子を撮影する仕事をメインに行ってきましたが、5年ほど前からいろいろな企業さんとの仕事を増やしているんですよ。
——それはどうしてですか?
石村さん:少子高齢化の影響もあり、ブライダルの仕事をしていくだけでは、会社の未来が大きく発展することはないかもしれない、と考えました。それで企業とのネットワークを広げて、事業転換に向けた準備をしてきたんです。
——ブライダルと企業案件、両方を平行して事業の柱にすることは難しいんですか?
石村さん:ブライダルの映像づくりと、企業の問題を解決するための映像づくりは、求められるものが大きく違います。これから動画の需要がどんどん伸びていく中で、自分たちの特徴を明確に打ち出していくためには、広く浅く物事を追求するのではなくて、一点に集中して、深く追求することが必要だと思うんです。
——なるほど。「MAD PRODUCTION」としては、どんな特徴を打ち出そうと?
石村さん:これまで培ってきた人間味のある撮影力が特徴ですね。ブライダルの仕事って、「人の心を映像として切り抜く力」がすごく大切なんです。僕たちは、ずっとブライダル映像の最高峰を目指してきたので、その部分には自信を持っています。
——作品として、ただの映像ではない、ちゃんと人の心に伝わる映像を撮る、と。
石村さん:届けたい想いをかたちにすることにこだわっているので、例えば何かをPRする映像をつくる場合には、そのものをただ撮るのではなくて、そのものを軸にした体験だとか、そのものがあることによって生まれる物語を撮りたいんです。そんな映像をつくるには、人間味のようなものが絶対に必要です。AIには表現できない分野ですよね。人がしっかりと作品に関わるから、心の部分を表現することや、根っこにある課題みたいなものを解決することができるんですよ。
——映像制作はいろんな専門分野のプロが必要と聞きます。
石村さん:ひとりではできないことをチームとしてやっていることに強みがあります。社内には、いろんなことを平均的にできる人材も必要ですが、それだけでは不十分です。ディレクター、撮影、編集、音響などそれぞれのスペシャリストをプロダクションの中で育てることで、総合的なパワーを発揮できることができると思っています。
——石村さんがこれからやろうと思っていること、作りたいものはどんなものですか?
石村さん:ショートフィルムのような作品をつくりたいですね。映画館やNetflixで流せるような映像作品です。これからますます動画の需要が高まってくると、新しい作品がたくさん生まれてくると思います。一瞬で記憶から消えてしまう動画も増えてくると思いますが、僕たちは、そんな「短命な動画」ではなくて、ひとつひとつの作品にしっかり想いを乗せて、いつ見ても色褪せない作品をつくりたいと考えています。
——「動画」ではなく、「作品」なんですね。
石村さん:技術はどんどん進化しているし、誰でも簡単にスマートフォンで綺麗な映像を撮ることができますよね。でも、作品に心を入れることができるのは、機械ではなく「人」です。さらにそれができるのがプロなんです。お客さまからプロとしての対価をいただくのだから、自分たちがどんなものを届けなければならないのか、常にしっかり考えなければいけないと思っています。
——映像業界って、これからもっともっと盛り上がりそうですよね。
石村さん:その通りなんですが、僕は地方の映像業界を取り巻く環境に問題を感じているんです。若い人材が育つ土壌が乏しいのではないかと。この業界は、技術革新のスピードがとても早いから、柔軟な発想で臨まないとすぐに置いていかれます。なので、柔軟な発想ができる若い人材が絶対に必要なんですが、若者が活躍できる場所は実はあまり多くありません。当社だけでは人材を受け入れられるキャパが限られているので、業界全体でこの問題に取り組みたいと思っているんですよね。実は今、新潟の映像業界を盛り上げるための、協会みたいなものを作ろうと動き出しているところです。
——おお〜。
石村さん:その協会では、新しい技術を新潟に取り入れることにも注力したいと思っています。現状は、大きな仕事が東京に集中しているし、そもそも新潟には大きな案件を依頼できるプロダクションがないと思われているんです。でも、そうではありません。新潟でも東京と同じレベルの作品をつくることができるし、しかも人件費や維持費が違うから、安く作ることができますよね。クライアントにとってのメリットがあるわけです。大きな仕事をするためにも、自分たちの技術を高めて、実績をしっかり発信するべきだと思うんです。
——頼もしいお考えですね。
石村さん:例えば、東京で活躍しているクリエイターが新潟にUIターンするか迷っているとして、その人が活躍できるステージって、新潟にはあまりないんですよね。でも、そのステージを作ってあげれば、迷わず新潟で働くことができます。そんなことが叶う土壌をつくりたいですね。新潟の映像業界全体のクオリティーも高くなるでしょうし。
——機材販売や技術レクチャーを行う事業もされていますよね。
石村さん:はい。「Viledge」と名付けて事業展開しています。地方のクリエイターのために2020年に立ち上げました。機材はオンラインでも販売しています。これまでだったら、東京に出向かないと買えなかった機材だって扱っているんですよ。安価に提供できるわけではないんですが、お客さまに合ったものを提案しているので、重宝してもらっています。メンテナンスにも対応できるので、安心して頼っていただけているんだと思います。コロナ禍で予定通りにはいきませんでしたが、技術的なことを学べるセミナーなどもこれから開催するつもりです。
——こういう専門的な機材は思うんですが、どんな方が買うんでしょう?
石村さん:いろんな方がいますが、同業のクリエイターさんが買っていくこともあります。
——ということは、ライバルに販売している?
石村さん:この事業には、新潟の映像業界全体の活発化と市場価値を高める狙いがあるんです。新しい技術を取り入れたり、すごい機材を導入したりすることによって、クリエイターの向上心が高まって、さらに良い作品をつくろうと思うはずです。それに、機材にお金を投じるのだから、より稼がなくちゃいけなくなりますよね。そうすると、クリエイターが単価を上げることにつながります。その相乗効果として、業界の相場が上がれば、自分たちにとっても売り上げが立てやすい市場が築かれていくと考えています。ライバルの戦力を上げてしまうと考えるんじゃなくて、動画を作りたいと思っている人たちがクオリティーの高い作品をつくる後押しをすることで、業界全体のレベルアップにもなるし、動画を必要とする市場が大きくなることが期待できるんです。
——すごい戦略ですね。
石村さん:僕は機材が大好きなので、「自分の趣味を仕事に取り入れた」みたいなことでもあるんですけどね(笑)。僕ひとりでやっているプロジェクトですし。会社では扱っていない機材を仕入れて、実際に機能を確かめることもできるから、趣味と多少の実益を兼ねた事業なんです。
——なんでも石村さんに相談して、いろいろと教えてもらえそうですね。さて、今日はありがとうございました。これからの活躍も期待しています。
石村さん:ありがとうございます。僕たちには、「業界の未来を自分たちでつくっていくんだ」という強い想いがありますから、その想いが詰まった作品をしっかり発信して、新潟の映像業界を引っ張っていきたいですね。でも、僕たちだけで市場を作っていくより、たくさんの仲間と市場を作っていく方が効果的ですから、新潟の映像業界全体でこれからを考えていくことが理想ですね。
株式会社MAD PRODUCTION
新潟市中央区幸町13-12 2F
TEL:025-255-5095
Viledge
新潟市中央区幸町13-12
TEL:025-256-8240