新潟市中央区の寄居町は学校や教会が多く、どことなく文化的な雰囲気が感じられる街です。その一角に「パンヤ オルタ」というお洒落なパン屋さんがあります。季節感のある食材を使ったパンから、メロンパンやクロワッサンといったお馴染みのパンまで、たくさんの種類が揃っています。今回はオーナーの星野さんに、いろいろとお話を聞いてきました。
パンヤ オルタ
星野 正臣 Masaomi Hoshino
1974年十日町市生まれ。東京のホテルでベーカリーに配属されたのがきっかけで、パン職人の道を歩む。都内のパン製菓専門学校や福岡のベーカリーで働いた後、新潟に戻ってスーパーで働きながら開店準備をし、2009年に「パンヤ オルタ」をオープンする。寿司が好物で好きなネタはエンガワ。
——星野さんは昔からパン職人を目指していたんですか?
星野さん:いえ、最初は料理人になりたかったんです。幼い頃から晩ごはんの支度をする祖母の手伝いをしていて、料理を作るのが好きだったんですよね。親に負担をかけたくなかったので、専門学校には行かないで、働きながら勉強する道を選んだんです。そこで東京に出てホテルに就職したんですが、最初に配属されたのがベーカリーだったんですよ。
——洋食でも和食でも中華でもなく、ベーカリーだったんですね。
星野さん:そうなんです。でも、今までパンなんて作ったことがなかったから新鮮さもあって逆に面白かったんですよ。今まで食べてきたスーパーに売っているパンとはまったく違う味に、「パンってこんなに美味しいんだ!」っていう驚きや感動もありました。それでパンの魅力にハマっていったんです。
——でもホテルの調理場って、相当厳しかったんじゃないですか?
星野さん:当時は厳しいのが当たり前でしたからねぇ……。私はそのホテルが最初の職場だったから、どこも同じようなもんなんだろうと思っていたんです。だから厳しさはあまり感じなくて、むしろ先輩たちへの憧れの方が大きかったですね。なんにしても、どんな状況でもへこたれないメンタルは身についたんじゃないでしょうか(笑)
——知らないうちに鍛えられていたわけですね。
星野さん:そうかもしれませんね(笑)。その後は先輩と一緒に品川のホテルに移ったんですが、パンをもっと理論的に学びたいという気持ちが強くなって、パン製菓専門学校の事務員兼講師助手をはじめました。それまではホテルの中しか見てこなかったので、はじめて外の世界を見たような気がして、また新鮮でしたね。子どもが生まれてからは、子育てのために奥さんの実家がある福岡で暮らしながら、パン屋の製造責任者をやっていました。
——新潟へはいつ頃戻ってきたんですか?
星野さん:2007年の中越沖地震の少し前でした。パンの仕事をはじめたときから、いつかは地元に戻って自分でパン屋を開きたいと思っていたんですよ。そこで独立準備をしながら十日町のスーパーで働いていたんですが、そのスーパーが被災してしまったので、聖籠の系列店で働くことになったんです。そのタイミングでこの物件と出会って、2009年から「パンヤ オルタ」をはじめました。
——星野さんはどんなことにこだわってパンを作っているんですか?
星野さん:シンプルなパンほど難しいし、気を使って作るようにしています。それから、毎日同じ品質のパンを作るために、細かい違いに気をつけるようにしています。気温や湿度によって生地の状態が違っていることに気づけるかどうか、冷蔵庫が壊れたときの変化に気づけるかどうか、細かい違いに気づくためには経験が必要なんですよ。
——同じ品質を保つためには、その差異に気づけるかどうかが大切なんですね。食材に対してのこだわりはありますか?
星野さん:できるだけ地元でとれる旬の食材を使って、その食材の味や季節感を生かして作るようにしています。でも食材の味を生かしすぎると味がボケやすいので、味のバランスには気を使っていますね。
——季節感を生かしたパンには、どんなものがあるんですか?
星野さん:春はふきのとう、夏は酸味の効いたレモンクリーム、秋冬は芋や栗を使ったパンを毎年作っています。季節限定商品を待っていてくれているお客様も多くて、時期になると「いつから販売がはじまるの?」って問合せをいただくんです。毎年お客様に背中を押していただきながら作っています(笑)
——熱烈なファンがいるんですね(笑)。定番商品ではどんなものが人気なんですか?
星野さん:年間を通して安定した人気があるのは「メロンパン」ですね。オープン時から小麦粉の配合や食感を、ちょっとずつマイナーチェンジしながら続けてきた人気商品です。「あんパン」も根強い人気がありますね。
——毎日何種類くらい並ぶんでしょうか?
星野さん: 50種類くらいですね。その他、一緒にお店をやっている弟が作っているお惣菜も20種類並びます。
——へ〜、お惣菜まで売っているんですね。
星野さん:弟はずっと洋食をやってきたので、惣菜パンの具材も作ってもらっているんです。具材に冷凍品や既製品を使うパン屋さんもありますが、うちでは弟が野菜本来の香りや味を生かして手作りしてくれています。
——それは心強いですね。
星野さん:弟だけじゃなくて、働いてくれているスタッフには助けられていますね。アルバイトも入れて現在11人のスタッフがいて、なかには長く勤めてくれている人も多いので本当に感謝しています。楽しく仕事ができて生活も豊かに潤うよう、みんなが安心して働ける環境を作っていきたいですね。
——お話を聞くだけでもチームワークのよさを感じますね。今後はどんなふうにお店をやっていきたいですか?
星野さん:今は新型コロナウイルス感染症のためにイートインスペースを中止しているんですけど、落ち着いたら再開して、お客様にできたてのパンやお料理を召し上がっていただきたいです。これからも日々もっと勉強して、美味しいものを作り続けていきたいですね。
いつも生活の中にあるパンだからこそ季節感を大事にしたい。そんな思いの伝わる「パンヤ オルタ」の星野さんのパン。取材にお邪魔したときも、モンブランやアップルパイなど秋冬の食材を使った美味しそうな商品が並んでいました。パン屋さんに足を運んで季節を感じてみるのもいいものですね。
パンヤ オルタ
新潟市中央区寄居町697 マンション北陸1F
025-201-9777
7:30-18:30
日曜休