東堀通沿いにある「台湾キレイ茶芸大使館」は、台湾のお茶を40種類近く揃えている専門店です。こちらのお店で評判の夏限定かき氷が9月末までと聞き、Things編集部、慌てて取材に行ってきました。迎えてくれたのは台北出身の店主、キレイさん。夏バテにもぴったりという台湾茶の特長など、いろいろとお話を聞いてきました。
台湾キレイ茶芸大使館
賀来 綺玲 Kirei Kaku
1962年台北市生まれ。26歳のときにファッションデザインを勉強するため来日。31歳で結婚し新潟へ転居。2000年に「台湾キレイ茶芸大使館」をはじめる。
——「キレイさん」って素敵なお名前ですね。店名は「台湾茶で綺麗になれる」ってことから来ているんだろうと思っていたら、店主さんのお名前でもあったんですね。
キレイさん:そうなんです。日本語で「キレイ」の意味を知ったときはびっくりしました。
——キレイさんはどんなきっかけで日本にいらしたんですか?
キレイさん:日本には26歳のときに留学生として来ました。もともと台湾で洋服のパタンナーとして働いていたんです。でも、もっとファッションの勉強をしたくって。最初は東京にいたんだけど、結婚して新潟に引っ越して来たんですよ。
——はじめて新潟に来たときのことって覚えていますか?
キレイさん:私は台湾の首都台北出身ですし、当時は「日本と言ったら東京」と思っていたんです。だから、新潟に来たときは正直「田舎だな」って思いました(笑)。もちろん今はそんなことは思わないし、日本にはいろいろな場所があるって知っているんですけどね。
——「台湾キレイ茶芸大使館」のことも教えてください。ずっとこの場所でお店をやってきたんですか?
キレイさん:2000年から、ずっとここでやっていますよ。お店をはじめた頃は今より古町周辺が賑わっていて、お友達から「商売をするんだったら古町がいいよ」ってアドバイスをもらったの。
——お店をはじめるきっかけは?
キレイさん:子どもが小学生に上がって、子育てがひと段落したから「何かやりたいな」と考えていたんです。その頃、市内の台湾茶が飲める喫茶店に行ったんですけど、そこのお茶を淹れる作法は私が知っているやり方とは違っていました。それで「台湾のお茶を本格的に楽しめるお店があってもいいよね」と思ったんですよ。「私が知っている台湾のお茶を日本の皆さんに紹介しよう」って。
——キレイさんは本場のお茶のことをよく知っているわけですもんね。
キレイさん:私のように台湾出身の店主がやっているお店は、新潟ではここだけだと思いますよ。現地に行かなくても台湾のお茶が手に入るし、茶器も揃えているので、台湾に旅行した気分になってもらえると思います。
——お店にはどれくらいの種類のお茶があるんですか?
キレイさん:店内には30〜40種類くらいかな。でも、本当はもっとたくさんの種類があるんですよ。効能などから大きく分類して○○系というのがいくつかあって、同じ系統のお茶でも味や香りが違うんです。たくさんの種類の中から好みのお茶を選ぶのは、台湾の人にとっては当たり前のことかもしれないですね。
——いろいろなお茶があると思いますけど、特におすすめのお茶はなんでしょう?
キレイさん:いくつかありますけど、お客さまの要望によってご紹介することが多いんですよ。台湾では漢方的な考えが暮らしに根付いているから、それに基づいて身体のコンディションに合ったお茶をご案内するんです。「夏バテでダルさを感じたり、食欲がなかったりってときには、このお茶がいいですよ」というふうに。
——台湾のお茶と日本のお茶、なにか違いはありますか?
キレイさん:いちばんの違いは「お茶を発酵してあるかどうか」かしら。発酵されていない日本のお茶は、漢方の考え方では「涼性」です。でも発酵してある台湾のお茶は「暖性」だから身体を温めるといわれています。
——私、キレイさんが出してくれたお茶をふた口いただいただけなのに、身体がポカポカしているんです。これもお茶の効果なんですね。
キレイさん:今日お出ししたお茶は血流を良くするといわれているものだから、冷え性や生理痛に悩んでいる方にはおすすめですよ。
——5月〜9月までの期間限定だというかき氷にも、養生できるエッセンスが入っているんでしょうか?
キレイさん:うちで出している「スノーかき氷」は、台湾ではポピュラーなものです。軽い口どけの氷に、マンゴーや美肌に効くとされる「愛玉オーギョウゼリー」、「仙草美容ゼリー」などをトッピングしたものです。身体の熱や湿気を取り除く効能がある食材を使っているので、夏バテに効くスイーツです。見た目や味もそうだけど、効能も夏にぴったりなんですね。
——へえ〜。お茶だけじゃなくて食べ物にも元気の源が含まれているんですね。
キレイさん:どれもお薬じゃないから、「これで病気が治りますよ」というものではないんです。でも、せっかくだから自分の身体に合う食材を摂り入れたいですよね。身体の具合や悩みを聞いた上で、「これが合いそうだな」というものをご紹介して、それで調子が良くなってくれたらすごく嬉しいです。
——じゃあ、けっこう身体のことに詳しいお客さんが多いんですか?
キレイさん:そんなこともないですよ。この数年、なかなか海外旅行ができなくて、ここで台湾の雰囲気を味わいたいというお客さまもいらっしゃいますね。あとは、日常的に台湾茶を愛飲してくださる地元の方が多いかな。
——最後に、キレイさんが大切にしている考えを教えてください。
キレイさん:コロナ禍の影響もあって、最近はコミュニケーションが希薄になっているように感じるんですよね。そんな思いがあるから、このお店で台湾出身の私とお話して「生の台湾の人との交流」を楽しんでもらいたいんです。お店ではお茶を楽しんでもらうだけじゃなくて、北京語、台湾語のレッスンや茶道教室もやっています。私ができることであれば何でもお伝えしたいんですよ。
台湾キレイ茶芸大使館
新潟市中央区東堀通4-452
025-226-3637