弥彦山の麓に広がる越後平野の田園地帯。そのなかに「La Bistecca(ラ・ビステッカ)」という名前のレストランがあります。ここでは自社農場で育てた岩室牛のステーキが味わえるのだとか。今回はシェフの齋藤さんにお話を聞いてきました。
株式会社 藤田牧場
齋藤 朋敬 Tomoyuki Saito
1962年新潟市西蒲区(旧巻町)生まれ。精肉店の事務員から料理人に転身。「ホテル東急イン」「サントピアワールド」「レストランめいぷる」で働いた後、2015年に「株式会社 藤田牧場」に就職。「焼肉ふじた牧場」での勤務を経て「La Bistecca」を任される。子どもの頃から磯釣りが趣味。
——田園風景のど真ん中にあって、とっても眺めがいいお店ですね。正面に弥彦山も見えるじゃないですか。
齋藤さん:ありがとうございます。農用地域活用の規制緩和で可能になった「農家レストラン」の全国第1号店なんですよ。四季折々の景色を楽しめますが、私のオススメは田植え直後の青々とした田園風景ですね。ちょっと蛙の声がうるさいけどね(笑)
——全国で最初ってすごいですね。こちらは齋藤さんが経営されているお店なんですか?
齋藤さん:「株式会社 藤田牧場」が経営しているレストランです。私はこのお店を任されているシェフなんですよ。周りにある「ミルク・カフェ」も「株式会社 藤田牧場」が経営しているお店ですし、「ジェラテリア・レガーロ」もグループ会社が経営しています。
——齋藤さんは昔から料理がお好きだったんですか?
齋藤さん:そうでもなかったんです(笑)。だから最初は精肉店で事務仕事をやっていました。でも肉を配達に行った取引先で調理場を覗いているうちに料理の仕事が面白そうに思えてきたので、その後、当時新潟駅前にオープンしたばかりだった「ホテル東急イン」で働きはじめました。
——ホテルではやはり洋食を担当されて?
齋藤さん:洋食がメインだったんですけど、他の部署で人手が足りなければヘルプに入るので、和洋中はひと通り経験しましたね。おかげで今でもそのときに覚えた知識や技術を生かすことができます。
——人手が足りないっていうのは、かなり忙しかったっていうことでしょうか。
齋藤さん:オープンしたばかりのホテルだったので忙しかったですね。寝る間もなく働いたけど、私もまだ若かったし、何より仕事を覚えられることが楽しかったので苦ではなかったですね。
——充実した修業時代だったんですね。どのくらい働いていたんですか?
齋藤さん:17年くらい働いていました。でも父が亡くなってしまい、私がいないと家には女性だけになってしまって不便だったので、夜勤のない仕事を探すことになったんですよ。ちょうどその頃、阿賀野市の「サントピアワールド」がリニューアルオープンすることになって、園内にあるレストランの立ち上げに呼ばれたんです。
——遊園地のレストランというのも忙しそうですね。
齋藤さん:週末になると2万人の来場者が押し寄せる状態が2年くらい続いて、結局、家に帰れない日々が続きました(笑)。お客様がレストランのキャパを超えてしまって、屋外の売店でお弁当の販売をして対応したこともありました。レストランはもちろん、すべての飲食コーナーや売店を管理していたので大変でしたね。
——せっかく夜勤のない職場に転職したのに(笑)。「サントピアワールド」のレストランではどのくらい働いていたんですか?
齋藤さん:3年半です。その後は知り合いから頼まれて、岩室温泉にある「ほてる大橋」が経営しているレストランを任されることになりました。ステーキをはじめ、パスタ、ハンバーグ、肉料理、魚料理といろんな洋食をやっているお店で、店内にある薪ストーブも人気があったんです。だから休みの日はほとんど薪割りをしていましたね(笑)
——本当に休む暇がないですね(笑)。それにしても、毎回、どなたかから誘われたり頼まれたりしてお店を移っていらっしゃるんですね。それだけ多くの方たちから信頼をされているということですね。
齋藤さん:「株式会社 藤田牧場」も社長に誘われたんです。いつもタイミングよくというか、運がいいというか……ありがたいですね。
——「La Bistecca」では、どんなことにこだわって料理を作っているんでしょうか?
齋藤さん:なんといっても材料にこだわっています。フジタファームの雌牛と黒毛和牛の雄牛の間に生まれた牛を、新潟米や稲わらを与えて育てた岩室牛を使っているので、クセがなくて旨味たっぷりなんです。丸々一頭分の肉が届くので、ステーキはもちろん、いろんな部位の料理を作っています。
——自家産の牛肉とは贅沢ですね。
齋藤さん:牛肉だけじゃなくて、お米も自社栽培の「岩室産こしひかり」を使っています。農薬や化学肥料の使用を抑えながら、牛の堆肥を使った循環型農業で育てていて、もみのまま貯蔵することで品質と美味しさを保ち続けているんです。野菜もできるだけ地元の岩室で作られたものを使っています。
——自社栽培の食材を使っているから、安心して料理を提供できますね。おすすめはどんなメニューなんですか?
齋藤さん:店名の「La Bistecca」というのは、イタリア語で「ビーフステーキ」という意味なんです。だからフジタファーム自慢の岩室牛ステーキを食べてほしいですね。脂がしつこくなくて食べやすいから、子どもからお年寄りまで美味しく味わっていただけると思います。
——実はかなりストレートな店名だったんですね(笑)。調理をする上でこだわっていることはありますか?
齋藤さん:ソースやスープをはじめ、市販のものは使わずにできるだけ手作りしています。自分で作っているから、材料に何を使っているのかわかって安心だし、食物アレルギーの方にもある程度対応できるんですよね。あとは食べる人の顔を思い浮かべながら料理するということでしょうかね。
——それにしても、ステーキのお肉の焼き加減って難しそうですよね。
齋藤さん:火が弱過ぎると肉汁がなかに閉じ込められないし、強過ぎるとパサついてしまいますから、微妙なさじ加減はやはり経験がものをいうと思います。肉を焼くのって案外時間がかかるんですよ。私ひとりで調理しているので、お客様が集中するとお待たせすることになってしまうんですが、ちゃんとした料理を食べていただきたいのでお待ちいただけると嬉しいですね。
——観光シーズンの週末なんかはお客さんがたくさん来て大変そうですね。
齋藤さん:大変ですけど、お客様から「美味しかった」と言っていただけたり、何度も足を運んでいただけると、手間暇かけた料理が伝わったようで嬉しいです。
La Bistecca
新潟市西蒲区橋本259
0256-77-8677
11:00-14:30/17:00-21:00(ディナーは土日祝のみ)
水曜休(祝日の場合翌日)、12月31日-1月3日