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本棚と人がつながる場所「みんなの小さな図書館 ひとハコBase」。

4月1日にグランドオープンを迎える私設図書館「みんなの小さな図書館 ひとハコBase」。中央区近江、笹出線沿いに新しくできたこちらのスペースを見かけて気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は館長の佐藤さんに「ひとハコBase」をはじめた理由やこれから取り組みたいことなど、いろいろとお話を聞いてきました。いつもニコニコ、パワフルで思いやりあふれる佐藤さんの周りには、たくさんの出会いが生まれていました。

 

ひとハコBase

佐藤 清江 Kiyoe Sato

1958年新潟市生まれ。保育士として15年働いた後、25年前から蔦屋書店 新潟万代店に勤続中。2023年、5人の発起人とともに「みんなの小さな図書館 ひとハコBase」を立ち上げる。絵本専門士の資格を生かし、絵本セラピストとしても活動している。

 

絵本のスペシャリストがはじめた、人がつながり交流する私設図書館。

——まずは佐藤さんのこれまでのことを教えてください。

佐藤さん:15年ほど保育士を経験してから、夫の転勤で長岡から新潟に転居しました。そこで万代の蔦屋書店に「絵本の読み聞かせをさせてください」と相談に行ったら、「スタッフとして勤めませんか」とお誘いいただいたんです。それがもう25年前ですね。23年間、児童書を担当して、今は2階にあるシェアラウンジなどの担当をしています。

 

 

——「ひとハコBase」の館長の他に本業をお持ちなんですね。

佐藤さん:今は勤務時間を短くしてもらっていて、出勤するのは週に数回程度ではあるんですけどね。書店の勤務以外にも、絵本の読み聞かせや読書の楽しさを伝える「きいちごの会」を立ち上げて、学校や支援センターなどで読み聞かせをする活動もしています。ずっと絵本を伝える活動をしてきました。

 

——どれくらい絵本をお持ちなんですか?

佐藤さん:300〜400冊はあると思いますよ。「ひとハコBase」に置こうと思いましたが、保育園の園長先生から絵本をたくさん寄贈いただきましてね。その絵本を図書館に置いているので、今のところ私のコレクションは自宅に大切に保管しています。

 

——「ひとハコBase」というのはどういった図書館なんでしょう?

佐藤さん:土肥潤也さんが焼津市の活性化のためにはじめた「みんなの図書館 さんかく」のシステムを参考に立ち上げた私設図書館です。本棚の一区画をオーナーさんにお貸しする「一箱本棚オーナー制度」の導入などを、土肥さんのアイディアから取り入れました。「ひと」と「箱」がつながる基地(ベース)という意味で「ひとハコBase」と名付けたんですよ。

 

——交流の場としての意義もあるそうですね。

佐藤さん:土肥さんが作りあげた「みんなの図書館」には、「図書館を作ったら、地域にどんな交流が生まれるか」という社会実験的な意味も込められています。私たちも「ひとハコBase」でオーナーさん同士のつながりやオーナーさんと利用者さんのつながり、人と地域の関わりなど様々な出会いを作りたいと思っています。

 

小学生から作家まで。さまざまな人と地域が関わっていく。

——佐藤さんが「ひとハコBase」を作ろうと思ったのはどうして?

佐藤さん:今も書店に勤めていますし、とにかく本がある環境が大好きで。お客さまに本の説明をするなど、本を通じて人とつながるのが好きなんです。実は数年前に、絵本のお店をやろうと動いたことがありました。そこで子育て世代を中心に、いろいろな人と接点を持とうと考えたんです。でも私、在庫管理もお金の管理もできないので、お店を持つことに二の足を踏んでしまいました。そんなとき、新聞で三条の「みんなの図書館 ぶくぶく」の記事で読んで、「これならできる!」と思ったんです。

 

——社会実験的な意味もあるそうですが、この場所を選んだのにはどんな理由があるんでしょう?

佐藤さん:発起人メンバーといろいろ調べて、地域に深く関われそうな場所としてここを選びました。近くに小学校や福祉施設があって、バス停が近くにあり、大通りに面している点が決め手です。

 

——発起人メンバーさんがどんな方々か気になります。

佐藤さん:私の他にはSNSの発信が得意な人、経理的な役割をお願いしている人、頼れる相談役、「ひとハコBase」内の園芸店「Pianta moco」の百瀬さん。あとは「財務省」である主人です(笑)

 

——本棚のオーナーさんはどんな方がいらっしゃいますか?

佐藤さん:中央区の皆さんに住んでいる地域の魅力を伝えたいという方もいますし、純粋に本が好きという方もいます。ハンドメイド作家さんや小学生などさまざまですよ。ほとんどの方が何かを発信したい、交流したいという思いをお持ちです。

 

 

——利用者はこの中から好きに本を借りられるわけですね。

佐藤さん:その通りです。そして、ここでオーナーさんが主催するワークショップにもご参加いただけます。この場所でコミュニティを作りたいと考えているオーナーさんがたくさんいるので、それが叶うお手伝いもしたいと思っています。

 

——佐藤さんがご自身の一箱本棚に置かれているのは、絵本ではないんですね。

佐藤さん:絵本は個人的にやっていこうと思っているんです。私が「ひとハコBase」で取り組みたいことは、人と人がつながるお手伝い。例えば、オーナーさんに「この前、こんな人が来てこの本に興味を持っていたのよ」と伝えるとかね。

 

——ふむふむ。

佐藤さん:それから地域を巻き込みたいので、近くの老人ホームや小学校に伺って「『ひとハコBase』にはいろいろな分野のスペシャリストがいます。私たちでよければお手伝いをしますのでお声がけください」と伝えています。

 

——地域との関わりも大切なポイントですもんね。

佐藤さん:「空き家があるんだけど、ただの居場所にするにはちょっと物足りない」なんてお声も聞くんです。そんなときは「私たちでできることならいくらでも協力させてもらいます」とお伝えします。みんなから意見を出してもらって、図書館でできることは何でもしたいと思っているので。

 

ご縁の聖地「ひとハコBase」のこれから。

——今後はどんな展開を考えていますか?

佐藤さん:ここは「ご縁の聖地」なので、人と人とのつながりをたくさん作っていきたいですね。それと、私たちの活動を知って「図書館を運営したい。でもどうやったらいいんだろう」と思う方がいれば、図書館としての運用の仕方などもお伝えしたいと思っています。あちこちに「みんなの図書館」ができたら楽しいと思いませんか? 各地の図書館をめぐって、そのコミュニティも楽しむ「ブックツーリスト」ができたらおもしろいですよね。

 

 

——グランドオープン前ではありますが、今の段階で佐藤さんが感じたことをお聞きしたいです。

佐藤さん:実はもう本棚がいっぱいになってしまって。これから本棚オーナーを希望される方は、本棚が空くのをお待ちいただいています。こんなに反響があるなんて予想外でした。もしかしたら「何かを発信できる場所」って限られているのかなと感じました。人と人が会って話をする。自分のことを知って相手のことも知る。そんな「ひとハコBase」の活動には意義があるんだと、すごく手応えを感じています。

 

——これからの「ひとハコBase」の取り組み、期待しています!

佐藤さん:ありがとうございます(笑)。なんせ小さな図書館ではありますが、ひとまず3年間はここで発信を続けたいと思っています。これからどんな展開が生まれるか私も楽しみです。今はデジタル図書も発展していますが、紙の本はまだまだ生き残れますよ。

 

 

 

みんなの小さな図書館 ひとハコBase

新潟県新潟市中央区近江2-20-30

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