飲食店の店内や居酒屋のトイレに、ユニークな絵手紙や色紙が飾ってあること、ありますよね。書かれている温かい書や絵にほっこりと心が和みます。「己書(おのれしょ)みゆき楽々道場」では、そんな書や絵の書き方を教え、その魅力を伝えています。今回は師範を務める本田さんのもとを訪れ、魅力を含めて「己書」についてのあれこれを教えてもらいました。
己書みゆき楽々道場
本田 みゆき Miyuki Honda
1964年長岡市生まれ。いろいろな事務職を経験しながら、50歳でハンドマッサージとヘッドマッサージの資格を取得。老人施設でのボランティアを経て、2016年に「ドライヘッドスパ Myu(ミュー)」を開業。2018年12月に「己書」師範の資格を取得し、2019年2月に「己書みゆき楽々道場」をはじめる。美味しいものを楽しむことが好き(特にアルコール)。
——今日はよろしくお願いします。最初に「己書」について、どういうものなのか教えてください。
本田さん:「己書」というのは、読んで字のごとく「自分だけの文字」のことをいいます。型にハマることなく自由に自分を表現できる筆文字のことなんですよ。
——文字を書くだけじゃなくて、絵も描いたりするんでしょうか?
本田さん:「己書」のメインキャラクターはお地蔵さんなんですけど、誰でも簡単に描けるようになります。文字も「書く」というよりは「描く」に近い表現なんですよ。私も教えるときは「絵として文字を描いて」と伝えています。
——アートして文字を書く感覚なんですね。
本田さん:そうなんです。だから一般的な書道みたいに決められた「書き方」というのはないんです。二度書きや三度書きをしちゃってもOKで、これは「己書」の歌にも歌われているんです(笑)
——歌まであるんですね(笑)。「自由に書いていい」といっても、書き方はあるんでしょ?
本田さん:まあ、そうですね。ただ、これに関しては講座を受けた方だけにお伝えしていることですので、ここで公開することはできないんですよ。正式な「己書」には師範だけが持っている「己印(おのれいん)」を押してあります。
——非公開の部分がとても気になりますね(笑)。講座はこのお部屋で開いているんですか?
本田さん:ここで開くこともありますし、「クロスパルにいがた」「新潟市江南区文化会館」といった公共施設や「アトリエfulufulu(フルフル)」さんなど6カ所の会場を借りて、ひと月に10回ほど開催しています。
——このマンションは「己書」を教えるために借りているんですか?
本田さん:もともと住居として使っていたんですけど、新居に引っ越したのでこの部屋が空いたんです。そこで部屋を売ろうとしていた夫から私が借り受けて、「ドライヘッドスパ Myu(ミュー)」というサロンを続けてきました。毎月きちんと夫に家賃を払っているんですよ(笑)
——なかなかシビアなご夫婦なんですね(笑)。
本田さん:それ以前は左官業を営む夫の事務所の一角で営業していたんですけど、4年くらい経った頃に「そろそろ出て行ってくれないか」と言われてしまいました(笑)
——(笑)。ところで、本田さんはどのように「己書」と出会ったんでしょうか?
本田さん:もともと字を書くことは好きなんです。以前は書道を習っていて、中学生までなら教えることができる師範の資格も持っています。あるときフェイスブックで「己書」の体験会を行う告知を見つけたので、好奇心で参加してみたら初体験ですっかりハマってしまって、体験会が終わる頃には「私も資格を取って師範になろう!」と心に誓っていました。
——「己書」のどんなところに、そこまでの魅力を感じたんですか?
本田さん:上手下手関係なく誰でも自由に書けるし、やってみると何だかわからないけど楽しいんですよ。
——「何だかわからないけど」ってどういうことですか(笑)
本田さん:やってみるとわかるんですけど、言葉で説明するのは難しいんですよ(笑)。でも、初めて体験した人は口を揃えて「何だかわからないけど楽しい」って言いますね。
——ますます気になる(笑)。その後、師範の資格を取るために講習を受けたんですね。
本田さん:2月からはじめて12月には資格を取りました。私は新潟で「己書」師範の資格を取った1期生なんですけど、当時はまだ6人しかいなかったんです。
——師範の資格を取るにはどうしたらいいんですか?
本田さん:4級までは受講していれば誰でも取ることができます。3級から1級までは試験があって、師範の資格はその先になるんです。私は資格を取った2カ月後に「己書みゆき楽々道場」をはじめたんです(笑)
——どんな人たちが「己書」を受講しているんですか?
本田さん:いちばん多いのは40〜50代の女性ですね。子育てが落ち着いて時間やお金の余裕ができたので、自分の趣味を楽しみたいという気持ちで受けに来られます。介護疲れで癒しを求めて来られる方もいますね。第二の人生を楽しむために来ているシニア世代の方もいて、最年長で80歳手前の方も楽しんでいらっしゃるんですよ。
——本田さんが「己書」を教えるときに心掛けていることがあったら教えてください。
本田さん:楽しんでいただくことですね。だから生徒さんが「難しい」と口にしたら即「難しくない」とか「罰金100円」とか冗談まじりに注意しています(笑)。だから生徒さんも「難しい」と言おうとして「むず……」で言葉を止めたりしてるんですよ(笑)
——とにかく楽しむことが大切なんですね。
本田さん:楽しんで書くことで気持ちが前向きになるし、「幸せフェロモン」が出て脳も活性化され、認知症の予防にもつながるんですよ。集中力もすごく必要なので、私は「書く瞑想」と呼んでいます。
——「己書」をやることで、いろいろなメリットがありそうですね。日常生活に生かして使うことはできるんでしょうか?
本田さん:年賀状や挨拶状に生かすことができるのはもちろん、ちょっとした心遣いにも生かすことができます。例えば母の日に母へ贈るパック寿司に「ほんの気持ちです。いつもありがとう」と書いた包装紙をかけたり、宿泊したホテルや旅館の帰り際にお礼の手紙をお部屋に残してきたり、お食事したお店で箸袋にお礼を書いてきたりしています。
——いただいた方は嬉しいし、心に残るでしょうね。日常シーンでもいろいろと使うことができるわけですね。
本田さん:日常生活で使えるだけじゃなく、自由に書くことは子どもたちの個性を育てる教育につながりますし、シニアの方々の認知症予防にも役立つと思います。何よりも楽しみができることで、日々の暮らしが充実すると思うんですよ。ぜひ一緒に楽しんでみていただきたいです!
己書みゆき楽々道場
新潟市中央区神道寺1-2-26 日東神道寺マンション
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