先日のバレンタインデーでお花を贈ったり、貰ったりした方もいたのではないでしょうか。3月に入るとホワイトデーや卒業式もあり、お花屋さんも忙しいシーズンを迎えます。新潟市の学校町通にある「吉田フローリスト」さんもそのひとつ。色とりどりのお花が咲き並ぶ店内で、オーナーの吉田さんにお花の魅力について聞きました。
有限会社 吉田フローリスト
吉田 康彦 Yasuhiko Yoshida
1973年新潟市中央区生まれ。東京の大学を卒業後、湘南の生花店で4年間修業をし、新潟に戻って「吉田フローリスト」に就業。現在は2代目代表としてお店を経営している。お神輿を担ぐのが趣味で、県内各地のお祭りに出没する。
——お花屋さんの店内には、色とりどりのお花が並んでいるので癒されますね。
吉田さん:ありがとうございます。いろいろなお客様の好みに対応できるよう、できるだけバリエーション豊かにお花を揃えることを心掛けているんです。
——「吉田フローリスト」は、いつ頃から続いているお花屋さんなんですか?
吉田さん:生花市場で働いていた私の父が、50年以上前に独立してはじめたお店なんです。でも当初は学校町通の別な場所にあって、同じ学校町通のなかで3回も移転したんですよ(笑)。現在の場所に来てからは30年以上経ちました。
——じゃあ、吉田さんで2代目なんですか。ずいぶん長く続いているお花屋さんなんですね。
吉田さん:学校町通ということで小学校、中学校、高校、大学がたくさんあったので、卒業式や入学式のお花を買いに来る学生も多かったし、新潟大学附属病院も近いのでお見舞いに贈るお花も売れました。以前は新潟県庁や新潟市役所もあったので、歓送迎会に使うお花も需要があったんですよ。
——かなり忙しかったんじゃないですか?
吉田さん:そうですね。親が苦労している姿を間近で見てきていたので、私は花屋になりたくなかったんです(笑)。子どもの頃は正義を守る白バイ隊員や、人に喜ばれるホテルマンになりたいと思っていました。
——それがどうしてお花屋さんに?
吉田さん:なんだかんだいってもお花には興味はあったんでしょうね。フラワーデザインの作品展に足を運んでいるうちに、お花に魅了されるようになっていったんですよ。それで家業の「吉田フローリスト」を継ぐ決心をして、神奈川の大きな生花店で4年ほど修業しました。
——なるほど。修業中の思い出があったら教えてください。
吉田さん:お花についての知識がまったくなくて、名前すら知らない状態で修業をはじめたので、いろいろと覚えることが多くて大変でしたね。お花を配達にいった先で両足を犬に噛まれたりしたこともありましたけど、お届けした相手から喜んでもらえることが嬉しかったです。
——修業後は新潟に帰って「吉田フローリスト」で働きはじめたんですね。
吉田さん:やると決めたからには人に負けない花屋になりたいと思ったので、フラワーデザインを猛勉強しました。当時はまだインターネットが普及していませんでしたから、関連書籍を買い込んでは読み漁って独学で身につけましたね。いろいろなコンテストにも積極的に出展して、県知事賞を3回いただいたこともあります。とてもいい経験になりました。
——それはすごいですね。フラワーデザインの際に気をつけていることってあるんですか?
吉田さん:お花の色で四季を感じることは多いと思うんです。春には優しいパステルカラーの花が多いし、夏には爽やかなビビッドカラーの花が咲いて、秋には落ち着いたアンティーク調のカラーになります。そうしたお花の色を楽しんでもらいたいので、色の選び方や組合せにはこだわっていますね。
——確かにお花から季節を感じることって多いですよね。チューリップが咲きはじめると春を実感したり……。
吉田さん:そうですよね。でも花屋ではチューリップって12月から3月の間に扱っていて、自然のなかで咲きはじめる頃には販売期間が終わっているんですよ。つねに季節を先取りしているので、花屋に来ていただくとひと足早く季節を感じることができます。
——そうなんですか。そういわれてみると、2月なのに春のお花がちらほら見受けられますね。あとケースのなかにデザインされたお花も可愛いです。
吉田さん:ありがとうございます。花屋は飲食店みたいに味で違いを出すことはできませんから、ラッピングやスタイルをアレンジすることでお店の個性を出したいと思っています。花を贈られる人からより喜んでもらえるように、二次利用していただけるようなマグカップやLEGOブロックに花を生けることもあるんです。
——贈られた相手も嬉しいでしょうね。
吉田さん:花を買ったお客様じゃなくて、贈られた相手から感謝の手紙やメールをいただくこともありますよ。そういうときはスタッフにも情報を共有してモチベーションを上げていますね。花屋としての役割を果たせていると感じることができて嬉しいです。
——お花屋さんとしての役割って、どういうものでしょう?
吉田さん:お花を贈ったり贈られたりすることを通して、お花に興味を持ってもらうことや魅力を知ってもらうことが、花屋としての使命だと思っています。重いものを持ったり寒い時期に冷たい水を使ったりするので、花屋はけっこう重労働できつい仕事なんですけど、我慢の先にやりがいを感じることが待っているので続けていられるんだと思います。
——生活のなかでお花を楽しむ方って多いんでしょうか?
吉田さん:増えていると思います。植物が作った酸素を人間が吸って、吐き出した二酸化炭素で植物が光合成をおこなうという……お互いが生きていくために必要な、切っても切れない関係なんですよね。だから人間は本能として、植物への親しみを持っているんだと思うんですよ。
——いわれてみれば、その通りですね。
吉田さん:お花を眺めていると、いろいろと感じることができるんですよ。例えばツボミが開いてあんなに綺麗なお花を咲かせることが不思議に思えるし、虫にも判別できる色のお花を咲かせて、香りで誘って花粉を虫に運んでもらったり、バラのトゲが害虫から身を守っていたりすることに生命の神秘を感じます。植物って面白いなと思いますね。
——初心者はどんなふうにお花を楽しむのがおすすめですか?
吉田さん:そうですねぇ……。お花には人と人をつないでくれる力がありますから、大切な記念日や特別な日には1本でもいいからお花を食卓に飾ってみてほしいです。
——1本だけ飾るのもお洒落ですね。でも、お花を買うことに慣れていない男性も多いんじゃないですか?
吉田さん:最近はバレンタインデーやホワイトデーに、108本のバラを贈ってプロポーズする男性も増えているんですよ。花屋って敷居が高く感じられるかもしれませんけど、そんなことは全然ないのでもっと気軽に立ち寄っていただきたいですね。
——ホワイトデーといえば3月は卒業式もあって、お花屋さんは忙しくなりそうですね。
吉田さん:4月に入れば入学式や歓送迎会もあるし、5月には母の日もありますから、しばらく忙しい日々が続きますね。
——最後に吉田さんが個人的におすすめする「推し花」があったら教えていただけますか?
吉田さん:どのお花にも万遍なく愛情を注ぎたいと思っているので、あえて「推し花」は作らないようにしているんです。
——なるほど。箱推しなんですね(笑)
吉田さん:どのお花も好きなんですよね。最初は花屋になりたいとは思いませんでしたけど、今では花屋になってよかったと心から思っています。
吉田フローリスト
新潟市中央区学校町通2番町595-9
025-224-2181
9:00-18:00
不定休