Things

使う道具にこだわり本物の床屋の魅力を伝える、三条市の「夕やけ理髪店」。

三条市にオープンした「夕やけ理髪店」は男性用のカットサロンとは異なり、あくまでも「床屋」であることにこだわったお店です。夕暮れどきのお店にお邪魔して、店主の長谷川さんから「床屋」への思いをいろいろと聞いてきました。

 

 

夕やけ理髪店

長谷川 涼 Ryo Hasegawa

1977年阿賀町(旧上川村)生まれ。保育士を経験した後、新潟理美容専門学校で理容を学び、三条市の理髪店で修業を積む。2024年に独立して「夕やけ理髪店」をオープン。ウイスキーが好きで「ウイスキー検定1級」の資格を持っている。

 

父の死で背中を押され、反対を押し切って理髪店をオープン。

——待合スペースの本棚にはいろんな本が並んでいますね。阿賀町の観光パンフレットまで置いてありますけど……。

長谷川さん:僕の実家は阿賀町の上川というところにあって、母はそこで床屋を営んでいたんです。阿賀町はどんどん過疎化が進んでいるので、少しでも盛り上げるお手伝いをしたくて店にパンフレットを置いています。

 

——そうだったんですか。床屋をやっていたお母さんの影響で、長谷川さんも理容師になったんですよね。

長谷川さん:母がひとりで床屋を切り盛りしていたこともあって、あまり構ってもらえなくて寂しい思いをしてきたんですよ。そのこともあって、むしろ床屋にはなりたくなかったんです。それで保育士になるために東京の専門学校に入りました。

 

 

——じゃあ、最初は保育士をされていたんですね。

長谷川さん:地元に帰ってきて公立保育園で働きましたけど、東京暮らしが恋しくなって再び上京したんです。それからはフリーターをやっていたんですけど、母から「東京でブラブラしているんだったら、新潟に帰ってきて理容師でもやれ」と呼び戻されたんです。もしかしたら自分のやっていた床屋を継がせたかったのかもしれません。

 

——そういういきさつだったんですね。理容師になってみてどうでしたか?

長谷川さん:理美容専門学校を卒業して勤めはじめた三条の理髪店では、技術よりも人間性を磨くことや、人づきあいの大切さを教わりましたね。よく飲みに連れて行ってもらったり、ゴルフに連れて行ってもらったりしました。

 

 

——その頃から独立は考えていたんでしょうか?

長谷川さん:考えてはいたものの蓄えができる余裕もなかったので、奥さんや母からは反対されていましたね(笑)

 

——それなのに独立に踏み切ったのは、何かきっかけがあったんでしょうか?

長谷川さん:父が事故に遭って亡くなったことが大きかったです。父は釣りが好きで山歩きのベテランだったんですけど、山から滑落して亡くなってしまったんです。長年会社勤めをしてきた父は、これからやりたかった夢もあったと思うんです。それを叶えらなかったことを考えると、自分の背中を押されたような気がしました。

 

カッコよくなってもらうため、道具にもこだわる。

——「夕やけ理髪店」という店名が素敵ですね。

長谷川さん:ありがとうございます。僕のなかで「夕やけ」っていうのは、家族愛を象徴する言葉なんですよ。母と手をつないで買い物へ行ったときに見た夕やけや、父が会社から帰宅したときの夕やけが、今でもあたたかい思い出として残っているんです。そんなあたたかくてアットホームな場所にしたくて「夕やけ理髪店」と名付けました。

 

——店内も夕やけがよく似合う雰囲気ですね。どんなところにこだわったんですか?

長谷川さん:あたたかさを感じられて落ち着ける、なつかしい床屋のイメージにしました。だからあえてイスの前にシャンプー台を設置して、まわりをタイル張りにしたんです。テーブルや棚は加茂の建具店にオーダーして、木目を生かしながら作ってもらいました。

 

 

——使っている道具もお洒落で、こだわりを感じます。

長谷川さん:ありがとうございます。お客様の髪や肌に触れるものなので、できるだけ良い製品を使うよう心掛けていますね。

 

——例えばどんな製品を使っているんでしょう?

長谷川さん:石鹸や整髪料、シェービングローションは必ず自分で試してから、肌が荒れないか、香りが残らないかをチェックして、オーガニックなものを使うようにしています。石鹸の泡立ちの良さやキメ細かさから、アナグマのお腹の毛を使ったシェービングブラシを使ったりもしているんです。

 

 

——バリカンやハサミにも当然こだわりがあるんでしょうね。

長谷川さん:バリカンはアメリカと日本のブランド製品を使い分けています。アメリカ製のバリカンはレバー式で刈高が無段階調整できるし、デザインもクラシカルで使っていてテンションが上がりますね。

 

——機能だけじゃなくてデザインも大切なんですね。

長谷川さん:お客様が汚れないようにかけるケープにしても、ただの布じゃなくブランド品を使っています。カッコいいデザインのケープを使うことで、お客様にもモチベーションを高めてほしいんです。

 

 

——ただ髪を切ったり顔を剃ったりするだけじゃなくて、お客さんに気分も変えてほしいんですね。

長谷川さん:そうなんですよ。お客様から「カッコよくなれた」とか「顔を剃ってもらって気持ちよかった」とか言ってもらえると嬉しいですね。最近は本物の床屋が少なくなってきているんです。ぜひグルーミングを体験して床屋の魅力を知っていただきたいですね。

 

 

 

夕やけ理髪店

三条市南四日町4-9-31

080-8702-6138

9:00-20:00(日曜は18:00まで)

月曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP