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新潟県内全蔵元を知る、日本酒ジャーナリスト「小島岳大」。

先日、デパートに行ったところ、お酒売場がとても賑わっていました。もうお歳暮の時季ですね。新潟には美味しい日本酒がたくさんあるので、友人知人、親戚やお世話になった人たちに地元のお酒を贈ることができます。さて、というわけで今回は「お酒」がテーマ。新潟の日本酒を知りつくした日本酒ジャーナリスト・小島岳大(こじま たけひろ)さんに、日本酒を好きになったきっかけやおすすめの飲み方など、いろいろとお話を聞いてきました。実は私、あまり日本酒に詳しくないので、やや日本酒との距離を感じていたのですが、小島さんのお話を聞いて、すっかり新潟の日本酒文化に魅了されてしまいました。年末年始は、どんな銘柄を飲もうかと今からワクワクしています!

 

小島 岳大 Takehiro Kojima

1976年東京都生まれ。中学生の頃に旧荒川町へ転居。京都の大学を卒業後、2000年に「株式会社ニューズ・ライン」に入社。情報誌「新潟WEEK!」編集長に就任後は、新潟県内の日本酒蔵をすべて取材。4冊の日本酒本を刊行。2019年に独立し、現在は日本酒と食を中心に取材・執筆を行っている。新潟の日本酒を世界に発信するため、日本酒の資格「SAKE EXPERT®」を取得。

 

県内ではじめて、全蔵元が勢ぞろいした日本酒のムック本を手がける。

——小島さんの名刺やホームページには「酒と文の人」というフレーズがありますね。いろいろなお仕事をされていると思いますが、中でも日本酒のことを発信することに力を入れているのでしょうか?

小島さん:そうですね。僕は、「月刊新潟 Komachi」などを発行している「株式会社ニューズ・ライン」に新卒で入社して、「新潟WEEK!」や新潟の全酒蔵を紹介した「にいがた日本酒手帖」の編集をしてきました。2019年に独立してからも、ずっと「新潟の日本酒を伝えたい」という思いを強く持っています。

 

——ところで、どんなきっかけで日本酒好きに?

小島さん:高校生の頃からずっと「海外に行きたい」と思っていたんですね。誰かから聞いたんですけど、フランスの人って自分の国に誇りを持っているから、自らの国のことをいろいろと語れるらしいんです。それで、僕も「日本のことをちゃんと説明できるようになりたい」と思って、日本らしい古き良き街並みが残る京都の大学へ進学したんです。でも、新潟から京都に進学する人ってそんなに多くないから、せっかく憧れの京都に住んだのにホームシックになっちゃったんですよ。ある日、看板に「新潟」と書いてある居酒屋に吸い込まれるように入って、そこで新潟の美味しい日本酒に出会ったんです。その居酒屋さんに通うようになって、すっかり新潟の日本酒が好きになりました。

 

 

——じゃあ、新潟が恋しくなったときに、新潟のお酒に救われたんですね。

小島さん:そうなんですよ。で、外国の人に日本を説明できるようにと京都に住んだのに、「あれ? そもそも僕、新潟のことすらよく知らないじゃん」って気がついたんです。新潟には日本酒という素晴らしい文化があるのに、知らずにいるなんてもったいないなって。

 

——それで、新潟の日本酒に夢中になった、と。じゃあ、日本酒のことを発信するために編集のお仕事を?

小島さん:結果的に日本酒と編集の仕事が結びついたって感じですかね。大学生の頃は、インド料理屋さんでアルバイトをしていたんですよ。「ムガール」という海外のVIPも訪れるようなお店で、オーナーさんは、面倒見が良くて、顔が広い人でした。僕が海外に行く夢を持っていることを知って、「それなら、どこへ行っても潰しがきく仕事に就くのがいい」と、雑誌の編集者とラジオ局の知り合いに声をかけてくれたんです。たまたま、雑誌の編集者の方に1日早く会うことになって、そのまま学生ライターとしてデビューしました。

 

——意外な流れでライターの仕事をはじめたんですね。

小島さん:新潟で就職しようとはあまり考えていなかったんですけど、大学3年生のときに帰省していた新潟で急性盲腸になって入院したんですよ。たまたま手に取った「Komachi」で、「新しく『新潟WEEK!』という雑誌を創刊する」と書かれた告知紙面を見たんですね。それが、「ニューズ・ライン」に応募したきっかけです。

 

——すでに編集社で働いていた学生さんだから、受け入れる側も歓迎だったのではないですか?

小島さん:そうだと嬉しいですね(笑)。日本酒が好きだし、「新潟WEEK!」では媒体を管理する傍ら日本酒の連載を担当していました。記事の本数もそれなりにあったし、1冊丸ごと新潟の日本酒尽くしの本を出したいと考えたんですね。当時、新潟の全蔵元が登場したムック本はなかったし、どうせ作るなら92蔵、全部載せたいと思ったんです(※現在、県内の蔵元総数は88蔵)。それで2012年に、新潟のすべての酒蔵を紹介する「にいがた日本酒手帖」を作りました。

 

——はじめて県内の蔵元さんが勢ぞろいした本なんですね。制作する上で、思い出に残っていることはありますか?

小島さん:「全蔵元を紹介する」というコンセプトで進めていたのに、取材をなかなか受けてくださらないところがあったんです。「お酒は適量を飲むもので、飲み過ぎてしまっては健康によくない」というお考えの蔵元さんで、当時は日本酒のイベントなどにも出店していませんでした。僕、そこへ毎週通って、何時間もどうでもいい話ばかりしたんです。いよいよ本の締め切りが近くなったときに、「本を出したいから、原稿を書かせて欲しい」とお願いしたら「好きに書いてくれていいよ」と、手書きの成分表を手渡されたんです。それがもう、本当に嬉しくて。最後のピースがハマった瞬間でした。

 

「好き」と「やりたい」がつながる。新潟のお酒を世界に発信するため、様々な活動に取り組む。

——そういえば、「海外に行きたい」という夢は叶ったのでしょうか?

小島さん:取材で香港に行ったり、ニューヨークに行ったり、この仕事をする上で何度も外国に行く機会に恵まれました。

 

——それはよかった! 今はどんな日本酒関連のお仕事をされているんですか?

小島さん:新潟薬科大学さんを中心とした現在進行中のプロジェクト「圧力生酒コンソーシアム」に関わらせてもらっています。新潟で飲食業や酒造組合に顔が利く人間としてお誘いいただいて、製品が出来上がるまでのディレクションとテストマーケティングの仕切りなどをしています。このプロジェクトは、高圧技術を活用して飲料を殺菌する技術を海外で広めようというものです。高圧力でも耐えられるように、容れ物は瓶ではなくて、伸縮性のあるペットボトルなんですよ。そこにフレッシュで発泡性のある生酒を入れて、高圧処理で殺菌し、生酒の風味を生かしたまま流通させようという実験的な取り組みです。通常は加熱処理をするんですが、それだと生酒のフレッシュさがなくなってしまうんですね。

 

 

——へぇ〜。そんなこともされているんですね。

小島さん:それから、上越にある「竹田酒造店」さんのお酒に名前をつける仕事もさせてもらいました。コロナ禍になってから限定発売されたお酒なので、「このお酒を飲みながら、大切な人と語ってもらいたい」という思いを込めて「かたRE:ば(かたりば)」と名づけたんです。「竹田酒造店」の代表銘柄「かたふね」からヒントをもらって。

 

 

——ところで、もうひとつお聞きしたいことがあって。「SAKE EXPERT®」についてなのですが……。

小島さん:「SAKE EXPERT®」は、日本酒の正しい知識や料理とのペアリングを学ぶことができる資格です。南魚沼市にある「青木酒造」さんの295周年パーティーで、酒ジャーナリストの葉石かおりさんという方とご一緒する機会があったんです。葉石さんは、Eテレの「日本酒のいろは」に出演されたこともある方で、「ジャパン・サケ・アソシエーション」という一般社団法人の設立者です。葉石さんから、「日本酒を国際酒にするため、『SAKE EXPERT®』という資格を作った」と聞いて、講座を受講することにしたんですよ。

 

——「日本酒を国際酒へ」とは、小島さんにぴったりの資格ですね。

小島さん:この秋からは、「SAKE EXPERT®」の講師取得にむけて、今、改めて勉強をし直しているところです。それから、新潟大学に「日本酒学」という学問があるんですが、その旗振りをされている岸保行先生ともご縁があって、岸先生の活動の協力もさせていただいています。

 

日本酒マスターに聞く、お酒の飲み方、楽しみ方。

——たくさんの蔵元さんとつながりのある小島さんにお気に入りの日本酒を聞くのは、ちょっと意地悪な質問かしらと思ったので遠慮するとして、日本酒にぴったりの、おすすめのおつまみを教えてください。

小島さん:妙高の伝統的な調味料「かんずり」に鰹の肝が漬け込んである「かんずり酒盗」は最高ですよ。あまりに美味いから近所の酒屋さんにも教えたくらい。今ではその酒屋さんにも「かんずり酒盗」が置いてあります(笑)

 

——これからの寒い時期は、どんなふうに日本酒を楽しむのがいいですか?

小島さん:やっぱりある程度、燗をつけたいですね。日本酒のイベントなんかだと、蔵元さんは大体40度くらいで燗をつけてくれるんですよね。だから、自分で燗をつけるときも40度を目安にしています。レンジでチンはダメですよ(笑)、湯煎で温めてくださいね。

 

——レンチンはダメ、と。分かりました。ちなみに、燗で楽しむのに適した日本酒ってあるんでしょうか?

小島さん:どのお酒でも、燗をつけたり冷やしたり好きにしていいんですよ。自分の好みで、合う、合わないがあると思うので、お好みで。甘口だから燗に向いているわけでもないですしね。

 

——日本酒って、大吟醸、吟醸、純米酒などなどいろいろあるので、ちょっと難しいと思ってしまうんです。頭で考えず、もっと気軽に楽しんでいいんでしょうか?

小島さん:ええ、そう思いますよ。そういえば、「WEEK!」の仕事をしていたとき、「もっと気軽に日本酒を楽しんでいい」と書いたら、酒蔵の社長さんに「その通りだ」って喜んでもらったことがありました。

 

 

——さて、最後に小島さんがこれからやりたいと思っていることについても教えてください。

小島さん:まだ構想段階ではありますけど、紙媒体以外で日本酒の情報発信ができるようにしたいですね。WEBのように必要に応じて更新ができるかたちのものを。日本酒文化は、決して止まってはいないんです。同じ銘柄の日本酒でも、どんどん進化しているし、新しいお酒もたくさんできているので、最新の情報を伝える方法を考えたいですね。

 

——日本酒のポータルサイトみたいな!

小島さん:そうです、そうです。それから新型ウイルスが落ち着いたら、日本酒を楽しむ会を各地で開催したいですね。新潟にはたくさんの日本酒があるんだから、どんな料理にも合う日本酒があるんじゃないかと思うんです。カレーにだって合う日本酒があるんですよ。

 

 

小島 岳大

cojicoji385@rainbow.plala.or.jp

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