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作りたてにこだわる道端のピザ屋さん「Dear Home PSANDS」。

美味しく料理をいただく上で大切なことのひとつに「温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに」という言葉をよく耳にします。ほとんどの料理は作りたてがいちばん美味しいのは言うまでもありません。今回紹介する「Dear Home PSANDS」というキッチンカーを営む小池さんも、作りたての料理を提供することにこだわるひとりです。お店が忙しくなる前のひととき、キッチンカーやピザへのこだわりについてお話を聞いてきました。

 

 

Dear Home PSANDS

小池 亮司 Ryoji Koike

1974年新潟市秋葉区生まれ。調理師専門学校を卒業後、寿司店や海鮮居酒屋などで料理人としての経験を積む。2022年に石焼きピザのキッチンカー「Dear Home PSANDS」をはじめる。

 

飲食業を卒業するつもりが、キッチンカーと出会う。

——いきなり申し訳ありません。店名はなんと読むのが正しいんでしょうか?

小池さん:「ディアホーム パサンズ」と呼んでいただければと思います。造語なので、最初から正しく読める人はあんまりいないんですよ(笑)

 

——どういう意味の造語なんでしょう?

小池さん:私はそれまでやってきた料理人の仕事に見切りをつけて、転職しようと思っていた期間があったんです。そのときに励まされたゲーム音楽のタイトルが由来なんですよ。そのまま店名にするのは恥ずかしかったので、並べ替えてアナグラムにしました。

 

——店名が暗号になっているとは……。

小池さん:スペルは違うんだけど「パサンド」はヒンドゥー語で「お気に入り」という意味なので、由来を聞かれたときはそちらで説明することが多いんです(笑)

 

 

——小池さんは料理人をやってこられたんですね。

小池さん:高校時代に料理に目覚めて、卒業してすぐ調理師専門学校に入ったんです。それからは寿司店や海鮮居酒屋で料理を作ってきました。お酒と一緒に料理を楽しめるお店が好きだったんですよね。

 

——料理人から転職しようと思ったのはどうしてなんですか?

小池さん:コロナ禍がはじまってから、居酒屋でもお持ち帰り弁当を作るようになりましたよね。私はできたての温かい料理を食べてもらいたいので、自分のやりたいこととのズレを感じるようになっていったんです。そこで料理人の仕事に見切りをつけて、飲食業を卒業しようと思いました。

 

 

——それなのに、キッチンカーをはじめたのは?

小池さん:ペレット石窯ピザのキッチンカーを普及させようとしている人と知り合って、キッチンカーを見せてもらったり、ピザを焼くところを見せてもらったりするうちに興味が湧いてきたんです。それで「やってみる?」と聞かれたので「やってみる」と答えて、その日のうちにキッチンカーに乗って家へ帰りました(笑)

 

——めちゃめちゃ急展開じゃないですか(笑)。やってみようと思った決め手は何だったんでしょうか。

小池さん:福祉事業所で作ってもらっているピザ生地が、衝撃的に美味しかったんですよ。その生地を使うことが社会福祉にもつながるので、家族とも相談して挑戦してみることにしたんです。忙しいときは妻や子どももキッチンカーを手伝ってくれています。

 

生地の美味しさを生かし、バランスにこだわったピザ。

——キッチンカーのデビューはどちらだったんですか?

小池さん:秋葉区にある自宅の前なんです(笑)。地域の回覧板でオープンの告知をしていたおかげで、近所の人たちが買いに来てくれました。その後も地元の人たちに知ってもらえるように秋葉区内のスーパーや市場などで出店していたんですが、平日のランチにピザを食べる人は少ないんですよ。需要と供給のマッチングが難しいことを思い知りました。

 

——イベントへも出店しているんですよね?

小池さん:最初はイベント出店募集情報の探し方がわからなかったんですが、インスタグラムで発信をはじめるようになって出店のお誘いを受けることが増えましたね。

 

 

——ピザのメニューはどんなふうに考えているんですか?

小池さん:家族で試食を繰り返しながら考えています(笑)。作ってみたけど何か物足りなくて、もうひと味加えてみたら「やっぱり、これはやめよう」となってボツにしたメニューも多いんです。

 

——では、ピザを作るときに心掛けていることがあったら教えてください。

小池さん:福祉作業所で作られた美味しい生地を味わってほしいので、私のこだわりが前に出すぎないよう気をつけています。生地を生かすために余計なスパイスを使わないようにしたら、癖のない味になって子どもたちから支持されるようになりました。

 

——子どもの舌って敏感ですからね。他にもこだわりがあれば教えてください。

小池さん:これといって難しいことをしているわけではないけど、味のバランスを大切にしていますね。例えばうちのピザにA5ランクの村上牛を使えば美味しくなるのかといえば、そうではないと思うんです。価格もこれ以上高くするわけにはいかないので、この価格で提供できる最高のピザを作るよう心掛けています。

 

 

——ところで、キッチンカーならではの苦労ってあるんでしょうか?

小池さん:やっぱり屋外での商売ですから、天候には左右されますね。暑いときに温かいものは売れないし、寒いときなら売れるかと思いきや今度は人がいないんです(笑)。それから店舗営業と違って、キッチンカーや設備の消耗が激しいんですよ。

 

——なるほど。ではキッチンカーの魅力はどんなところだと思いますか?

小池さん:お客様との距離が近いことですね。お客様の目の前で作ったできたてのピザを食べてもらえるし、反応を直接見られたり感想を聞けたりできますからね。

 

——小池さんがやりたかったスタイルの飲食店に近いように感じますね。今後、どんな場所でキッチンカーを出店してみたいですか?

小池さん:どこで出店してみても、結局は自分の腕を磨かなければ売り上げは変わらないと思うんです。だから私は「道端のピザ屋」でいいかなと思っています(笑)

 

 

 

Dear Home PSANDS

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