先日1周年を迎えた柏崎市の「バンビー」。地元野菜を存分に楽しむことができるこのお店のオーナーは、普段、音響の仕事をされているという井貝さん。さすが音楽をお仕事にされているだけあって、レコードから流れる音楽は心地よく、とても居心地のいいお店です。今回は井貝さんに、このお店をつくったきっかけや柏崎への思いを聞いてきました。
バンビー
井貝 信太郎 Shintaro Igai
1976年柏崎市出身。新潟工科大学を卒業後、東京で音響効果の仕事に携わる。本業の傍ら「Four circle合同会社」を立ち上げ、2024年6月に「バンビー」をオープン。ワインが好きで、ワイナリーに自ら行き、ぶどうの栽培を手伝うほど。
――まず、井貝さんがこれまでどんなことをされてきたのか、教えてください。
井貝さん:大学時代は建築を学んでいたんですけど、卒業後は東京で音響効果の仕事をしていました。音響効果っていうのは、テレビ番組にBGMや効果音をつける専門の仕事のことです。
――建築の道には進まなかったんですね。
井貝さん:大学生のときから放送に興味があって、地元のラジオ局で番組を制作していたくらいなんです。その頃アルバイトをしていたCDショップでご縁があって、この仕事を勧められたんです。好きな音楽の仕事に就けるなんて、そんなチャンスはそうそうないと思ってふたつ返事で決めましたね。それ以来、東京でずっとこの仕事をしています。
――そんな井貝さんが、どうして柏崎にお店をつくることに?
井貝さん:奥さんも柏崎の出身なので、よく柏崎には帰ってくるんです。そのときに「飲みに行こうか」って出かけても、この辺りはシャッター街になってしまって飲む場所がないんですよ。コロナ前に比べたらお店がぐんと減ったんですよね。
――コロナ禍が残した爪痕が大きかったんですね。
井貝さん:お客さんで賑わっているお店もあることはあるんです。でも、そういうお店は常連さんでいっぱいで、一見さんは入りづらさを感じてしまうんです。お店側は悪くないんですけどね。駅前のお店も少なくなってきたし、なんとかしたいなと思っていたときに、偶然この物件を見つけたんです。
――ふむふむ。
井貝さん: ここはもともとブティックだったみたいなんです。駅前の商店街にあって、外から店内がよく見えて、僕が考えていたお店の条件にぴったりで。ここでなら、僕が欲しかった「誰でも入りやすいお店」ができる!と思って、勢いで借りちゃったんですよね。
――すごい行動力です。ここでお料理をつくっているのも、井貝さんなんでしょうか。
井貝さん:柏崎で「THERE IS NOEND」というお弁当屋さんをしている中村さんに、料理やドリンクをつくってもらっているんです。中村さんには「イートインのお店をやりたい!」という思いがあったみたいで。東京にいる間、お店を任せる人を探していた僕に、柏崎のまちづくりの会社の方が紹介してくれました。
――中村さんと井貝さんの思いが合致したんですね。
井貝さん:これは本当にラッキーでした。最初は軽食とお酒が楽しめるコミュニティスペースを作ろう、と思っていたんですけど、せっかく中村さんにお料理をつくってもらうなら、ということで軽食以外もメニューを考えてもらいました。
――「バンビー」のコンセプトを教えてください。
井貝さん:「いい音と、いい匂い」をコンセプトに掲げています。中村さんの料理をしているときの音や、匂いを楽しんでもらえるようなお店になるようにしました。中村さんが料理をつくっているところを見てもらいやすいように、カウンターの高さも調整しました。
――音といえば、店内にはたくさんのレコードが置かれていますね。
井貝さん:これは僕が今まで集めてきたレコードたちなんです。僕がお店にいるとき、流していますよ。来たくださった方にレコードを選んでもらうこともできます。ちなみに、僕がDJをすることもあるので、プレーヤーは2台置いてあるんです。不定期でDJイベントも開催していますよ。
――レコードバーはよく聞きますけど、こうして食事とレコードを一緒に楽しめるお店って、珍しいですね。
井貝さん:柏崎にはあまりないお店にしたかったんです。それが僕らに今求められているものかなって。他にはあまりない要素をいれて、かつ居心地のよい空間づくりを意識しました。
――ここでは、どんなお料理が楽しめるのでしょうか。
井貝さん:柏崎の野菜を使ったお料理を楽しんでもらえます。中村さんは、野菜ソムリエの資格を持っているんですよ。スパイスの使い方がとても上手で、今までに食べたことのない味わいが楽しめるものもあります。「オニオンリング」やパスタ、「生ハムで締めたタイのカルパッチョ」は人気メニューですね。
――生ハムの使い方が新しいですね。これと一緒に楽しめそうなお酒もたくさんあります。
井貝さん:ありがとうございます。ワインは主に僕が選んでいて、飲み飽きないように幅広くご用意しています。個人的にオレンジワインが好きなので、グラスから用意しています。ウイスキーやジンは中村さんにチョイスしてもらっています。実は中村さん、以前バーテンの修業もされていたんです。切り出してくれた氷で飲むウイスキーは格別ですよ。
――じゃあお料理もお酒も、十分楽しめるラインナップですね。
井貝さん:他にも、日本酒やクラフトビールは柏崎や長岡でつくられたものをご用意していますし、お酒が飲めない方にも楽しんでもらえるように、ノンアルコールのカクテルもあります。21時以降はバータイムになっているので、時間に合わせていろんな楽しみ方をしてもらえると嬉しいですね。
――今月で「バンビー」は1周年を迎えました。
井貝さん:あっという間でしたね。中村さんをはじめ、たくさんの方のおかげで1年間走ってこれたと思います。これまでのお返しができるように、2年目、3年目も頑張っていきたいですね。
――井貝さんがお店をはじめた当初、思い描いていたものは実現していると感じますか?
井貝さん: そうですね。最近では、出張で柏崎に来てくれた人がお店に入ってきてくれますし。僕自身、この大きな窓からカウンターに座って食事を楽しんでいる人を見れるのがとても嬉しいんです。だんだん、ここだけで終わりにしたくない、と思うようになってきました。
――と、言いますと?
井貝さん:このお店をきっかけにして、ここからこの商店街を盛り上げたいんですよね。あと2軒くらい新しいお店ができてくれれば、「このあたりが楽しいぞ」って思ってもらえるんじゃないかと思って。他のお店と一緒に何かをして、この商店街を面白くしていきたいですね。中村さんの言葉を借りるなら、「柏崎にあるもので、柏崎にない価値」をつくっていきたいですね。「商店街には何もない」って言わせないように、安定に甘んじることなく、攻めの姿勢でこれからも走っていきたいです。
バンビー
柏崎市駅前2-1-55
18:30〜24:00 (food L.o.21:00)
Cafe&Bar 21:00〜24:00 (L.o.23:00)