楽しいときは、跳ねたっていいよね。
心が動く道草場「絵本テントすだち」
カルチャー
2026.06.14
保育士としての経験や海外で学んだ教育観をもとに、すだちさんが個人ではじめた「絵本テントすだち」。取材でお邪魔したのは、三条市の複合施設「まちやま」で開催された「梅雨を楽しむ大人のおはなし会」。参加者の皆さんがお気に入りの本を持ち寄り、思い思いに語り合っていました。読み聞かせ会と聞いて想像していた光景とは違うぞ、と思いながら会場を見渡してみると「絵本テントすだち」らしい仕掛けがあちらこちらに散りばめられていることに気がつきました。
絵本テントすだち
三条市出身。幼児教育科卒業後、保育士として勤務。幼児教育への関心からワーキングホリデーでオーストラリアへ渡り、現地の教育やコミュニティを学ぶ。帰国後も保育士として働きながら、2022年より「絵本テントすだち」をスタート。旅好き、アウトドア好き。
子ども一人ひとりと向き合う。
すだちさんの原点。
――すだちさんが保育士さんデビューした当時のことを教えてください。
すだちさん:学校を卒業して、三条市内の保育園で働いていました。その頃から「子ども一人ひとりを丁寧に見たい」という気持ちを持っていて。もっと子どもたちから出てくる興味や好奇心を大切にしたい、とは思っていたんですけど、現実はそうもいかなくて。当時は園の行事がたくさんあって、その準備に追われることが多かったんですよ。
――それでオーストラリアの教育現場を見てみようと思われたんですね。
すだちさん:その頃、海外で夢を叶えようと奮闘する女性の姿を追ったテレビ番組にどハマりしていました(笑)。その影響もあって「海外の幼児教育がどのようなものか見てみたい」と思ったんです。
――どんなところが日本と違うと思いましたか?
すだちさん:子どもたちは年齢関係なく、自由に学校へ来て学んだり遊んだりします。「必ず学校に来なくてはいけない」というわけではなく、普段は親御さんが教育をして、ときどき学校に通うという選択もできます。
――日本とはけっこう違うんじゃないかと思うんですが、帰国後にギャップを感じることはありませんでした?
すだちさん:当然感じましたけど、子育ても経験して、だんだんと「自分が主として関わらなくてもいいかな」と思うようになっていきました。結婚後に働いた県外の幼稚園では「心の教育」について学ばせてもらって。オーストラリアでの経験も、その幼稚園で学んだことも、どちらも今の私にとって大切な財産です。

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心のままに跳ねたり、笑ったり。
自分の力でその場を作る。
――保育の現場にいるすだちさんが、「絵本テントすだち」をはじめたのは?
すだちさん:普通「読み聞かせ」というと、決まった日時に集まって、主催者が選んだ本を集団に読み聞かせるスタイルが多いですよね。でも、楽しい場面で思わずジャンプしたり、声を出したりしてしまう子どももいるんですよね。そうすると親御さんの中には、「連れていくのは難しいかもな」と感じる方がいるんじゃないか、と思ったんです。でも私は、いつ笑ってもいい、その場でぴょんぴょん跳ねたっていい、楽しいときに心のままに動ける場所があってもいいと思ったんですよ。
――その気持ちが、出発点でしたか。
すだちさん:困りごとを持っている子どもたちが喜ぶことを何かしたいとずっと考えていました。それで「来れる場所を作ってみよう」「挑戦してみよう」と、「絵本テントすだち」をはじめたんです。
――ずっと考えていたことを実行することになった決め手は他にもあったんですか?
すだちさん:実はオーストラリアでの体験も関係しています。オーストラリアでは、自作のチラシをスーパーだとかに掲示して仕事を探していました。「保育士です。ベビーシッターができます。連絡先は……」という情報を自分で掲示するんです。そうして収支がトントンくらいでもなんとか仕事に就くことができていたのに、日本でそれができない自分にモヤモヤしていました。
――つまり個人単位で行動ができずにいた、ということですね。
すだちさん:そうです、そうです。子育て期間がひと段落して、息子が大学に進学するというとき、ふと思ったんですよ。「私だって昔は知らない場所で自ら仕事を見つけていたというのに、あの頃の自分はどこに行ったんだろう」と。なので「絵本テントすだち」として個人で活動していることにも意味があるんです。


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「明日も頑張ろうね」と、
ボロ小屋から送り出す。
――今日は三条市の複合施設「まちやま」にて、「梅雨を楽しむ 大人のおはなし会」という企画にお邪魔しています。きっと、この会にはいろいろな仕掛けがされているのでは。
すだちさん:私はとにかく「心が動く場」を用意したいと思っているので、ワクワクできるものをいくつも用意しています。そのひとつが、会場である「まちやま」の担当者さんが用意してくださるお菓子です。私の気持ちを汲んでくださって、「今日のお菓子は美味しいね」「初めて食べるわ」と心が躍ったり、会話につながったりするものを用意してくださるんです。他にも折り紙の小細工を置いたりしています。
――今日は大人向けだったようですが、他にはどんな会を開くんですか?
すだちさん:年齢を問わず、いろいろな会を開いています。絵本と遊びを楽しむ会、紙芝居と遊びを楽しむ会など。
――この取り組みをはじめてから、すだちさんご自身の気持ちに変化はありました?
すだちさん:野心的なところでは、「もっとやりたい」と思うんだけど、それが「絵本テントすだち」のことなのかまだわからないでいます。ただ「道草場」になりたいんですね。道草ってウキウキしますもんね。こっちの道は何があるのかな、普段のルートじゃない道から帰ろうよ、ってね(笑)。そういう場所になりたい、という意味で、「店舗を構えたい気持ち」が芽生えています。
――今はどんな心構えで「絵本テントすだち」を続けているんでしょう?
すだちさん:最初からずっと心がけているのは、毎回毎回、真摯に取り組むこと。持ち物チェックは入念に、かなり前から。会の本番であたふたしては、参加してくださる方がその場に身を委ねられないと思うので。物の準備に限らず、気持ちの準備や所作、段取りなどのひとつひとつを大切にしています。
――会の様子を見させてもらうと、その心配りがよくわかります。
すだちさん:それと下のお名前をお聞きすることも、マイルールです。誰々のお母さん、⚪︎⚪︎ママではなく、下のお名前で呼ばせてくださいね、とお願いしています。
――先ほどチラリと「店舗を持ちたい」という話が出ました。もう少し詳しく聞きたいです。
すだちさん:夢としては、ボロ小屋が欲しいと思っているんです(笑)。道草を食いに来た人が、コーヒーを飲んだり、本や絵本を読んだりできるボロ小屋です。そこから「明日もまた頑張ろうね」と送り出せたらいいな、って。


絵本テントすだち
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