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極端にとがった、社交場としてのバーバー「gentlemanBarber」。

ファッション、アメ車、タトゥー、そしてヒゲ。重要なのは個性。

ビシッとした刈り上げや、ポマードでしっかりとスタイリングされたヘアスタイル。最近、そんな「バーバースタイル」と呼ばれるジャンルが確立されてきましたが、そのブームの何年も前から、独自のバーバースタイルを貫き、多くの男性のスタイリングに磨きをかけてきた理容室があります。その名も「gentlemanBarber(ジェントルマンバーバー)」。今回はボスである東城さんに、バーバースタイルの魅力を聞きつつ過去を振り返っていただきました。

 

gentlemanBarber

東城 友秋 Tomoaki Tojyo

1982年新潟市生まれ。新潟理容美容専門学校通信教育を卒業後、さまざまな形態の理容店で腕を磨き、2016年「gentlemanBarber」をオープン。アメ車、タトゥー、釣り、キャンプなど、趣味のレパートリーが豊富。

 

憧れのあの人みたいに。サラリーマンなんかになりたくない。

――よろしくお願いします。まず、理容師になろうと思ったキッカケから教えてください。

東城さん:こちらこそ、よろしくお願いします。理容師になろうと思った理由はいくつかあって。母親がなりたかった美容師の夢を自分が代わりにかなえてやろう、そう思ったのがひとつ。あとは、中学生の時に髪を切ってくれていた人に憧れたこと。煙草を吸って、バイクにまたがって、単純にカッコイイなって憧れたんだよね。

 

――中学生からすると、ちょっと悪い感じの大人がやたらと素敵に見えますよね。

東城さん:あとは、サラリーマンになりたくなくて。それなら手に職を持つ、職人になりたいとも思っていたかな。

 

 

――高校を卒業してからは、専門学校に行かれたんですか?

東城さん:当時は美容バブルでさ、カリスマ美容師の時代だったんだよ。

 

――東京のカリスマ美容師がホストみたいな存在だった時代ですね。

東城さん:そうそう(笑)。とがっていたから、個性を出している美容師に憧れて美容専門学校を受験したわけ。まぁ、面接の態度が悪くて落ちたけど(笑)。でも諦めたくなくて、今度は理容専門学校の通信教育を受けることにしたんだよ。それで理容師の資格を取った後、中学生の時に憧れていた人がいたバーバーに就職したんだよね。ただ、その人はすでに辞めていて…。憧れた人はいないし、何ひとつ仕事ができなくて不甲斐ないし、しかもめちゃくちゃ安月給だし。それですぐに辞めて、3年ぐらい荒れ果てた生活をしてたな。

 

アメリカのバーバースタイルに衝撃&チャレンジ。

――荒れ果てていた時代から、どのようにして復活されたんですか?

東城さん:たくさん迷惑をかけてきて、家族の泣いている姿に、ハッとさせられたね。このままじゃダメだと目を覚まされたんだ。そしたら、お世話になっていた人がバーバーを紹介してくれて。5年くらい働かせてもらったね。

 

――そのバーバーでの時間を振り返ってみて、どうですか?

東城さん:修行させてもらっている立場だから、もちろん給料は安いけど、とにかく濃くて充実した時間だったね。アメリカンクルーっていう、アメリカのバーバースタイルにも出会えたし。あとは、睡眠時間を削って遊びに行ってた(笑)

 

――東城さんの技術や考えの土台を構築してくれた、重要な時間でもあるんですね。

東城さん:かもしれないね。刈り上げやスポーツ刈りが定番だった理容の世界に、新しい風が吹いた感じかな。それからは、たくさん講習会にも参加したね。それこそ、美容師の講習会にも。キラキラした美容師たちに混ざって、男臭いのがひとり。髪の長い女性のカットを学びながら、短い男性のカットにどう変換していくかを考えたりしていたよね。

 

個性を持つことの大切さ。あの時、覚悟を決めた。

――「gentlemanBarber」をオープンしたのは、いつですか?

東城さん:2016年だね。いろいろな人たちに助けてもらってオープンしたものの、オープン景気が終わると運転資金が少なくなってきて。ついには有名な媒体に広告を出したりいろいろな場所で宣伝したり、本当はしたくないこともしなきゃいけなくなってきて。それでも「gentlemanBarber」のスタイルを多くの人に知ってもらいたくて。イベントも開いたね。

 

――オープン後は順調でなかったんですね。

東城さん:そうそう。でも、イベントに「Pas magazine(パスマガジン)」が取材に来てくれてさ。人目に付くようになることで、自分の視線がヘアスタイル以外にも向くようになったんだ。

 

――ヘアスタイル以外というと?

東城さん:見られるなら男らしくなきゃダメじゃん?だから、洋服もちゃんとしないとって。「STUD(スタッド)」っていうショップに行って、服を学ばせてくださいってお願いしたんだよ。そしたら、洋服の知識から着方、自分らしいスタイルを快く教えてくれてバシッと決まったわけ。でも、洋服以外も男らしく個性を出さないといけないから、「KILLER Line Tattoo(キラーラインタトゥー)」でタトゥーを彫って、アメ車を転がしてさ。

 

バーカウンターがあって、外でコーヒーを飲んで。人と人が繋がる場所。

――お店は、赤・青・白の縞々看板が掲げられた床屋さんとはひと味もふた味も違う空間ですよね。「gentlemanBarber」をまだ何も知らない人たちに向けて、どんなバーバーなのかを教えてもらえますか?

東城さん:バーバーというか、ここは社交場だと思っているね。正直、極端にとがったスタイルでやっているから、紹介で来る人ばかりだし。ただ、来てくれたらみんな仲間。お客同士もスタッフとも繋がりあえて、楽しんで、たくさんのコトを共有できる場所。その場所の入り口が、髪を切るってことなだけ。

 

――なるほど、社交場ですか。だから店内にはバーカウンターがあるんですね。

東城さん:昔はコーヒーを飲みながら会話するなんて無駄といわれてきたけど、今はそうじゃないんだよ。むしろ重要。バーカウンターや外のベンチでコーヒーを一緒に飲んで、コミュニケーションを交わす。人と人が交わるからこそ、アットホームな空間が生まれると思うよ。だからビールも、コーヒーも、タトゥーやアメ車だって、たくさんのカルチャーがこの店には必要不可欠なんだ。

 

 

――「gentlemanBarber」では、どんなスタイルの提案を心掛けていますか?

東城さん:内面を出せる個性だね。例えば父親になったなら、親として、男として自信を持てるようなスタイルを提案したいね。だから「こんなスタイルにして欲しい」って言われても、その要望を蹴ることだってあるよ。

 

――それは凄いですね…。最後に、今のジェントルマンスタイルが確立できたのは、どうしてだと思いますか?

東城さん:バーバースタイルが流行っているから、「この髪型は何てスタイルですか?」って聞かれるんだよ。だけど、〇〇スタイルなんてないわけ。そもそも昔のスタイルが現代のスタイルの基になっているし、「gentlemanBarber」は自分たちのフィルターを通して、常にその人の個性と向き合ってチャレンジしている。個性を持った人間がスタンダードになるって、信じてきたからかな。あとは、ヒトも、ハサミも、バリカンも好きだから。好きに勝るものなんてないよね。

 

アジアNo.1を決める大会に向けて。思いの丈をぶつけてもらった。

2019年11月11日に開催される、アジアNo.1のバーバーを決める大会「ワールドバーバークラシック」に出場するという東城さん。大会に向けた心境をうかがいました(取材時は出場前)。「1位を取るつもりはない。挑戦してみたいだけ。情熱を持ってやっている仲間たちと、バーバーをもっと知ってもらうことが目的。ゼロからスタートした今。恥をかいても、何も怖くない。ただ、昨日の自分をメタメタにやっつけるために、昨日の自分がめちゃくちゃ嫉妬するくらいにチャレンジしてやりたい。」対戦相手ではなく、自分への闘志をメラメラと燃やしていました。さて、結果はいかに。

 

 

 

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