豊かな自然のなかで木工や森歩きを
体験できる「中ノ沢森林科学館」
遊ぶ
2026.07.25
小学校は夏休みに入る頃だと思いますが、自由工作や自由研究に頭を悩ませる子も多いのではないでしょうか。そんな自由課題にぴったりな施設が、阿賀町の中ノ沢森林公園にある「中ノ沢森林科学館」です。木工体験や森林散策を通して、森や木について学ぶことができるんです。そこで代表世話人を務めている明石さんから、自然の大切さについてお話を聞いてきました。
明石 浩見
Hiromi Akashi(お山の森の木の学校)
1961年秋田県生まれ。小学生から高校生までを新潟市で過ごし、岩手県の大学で林学を学ぶ。卒業後は秋田県や岩手県で木工修業をし、1997年より阿賀町へ移住して「中ノ沢森林科学館」に勤める。趣味は山歩きや花火鑑賞。
自然豊かな秋田の山のなかで、
虫捕りを日課に育った少年時代。
――明石さんは秋田県のお生まれなんですね。
明石さん:父が鉱山に関わる仕事をしていたので、小学校に上がるまでは秋田の山のなかで過ごしたんです。山遊びが好きで虫捕りは日課になっていましたね。
――新潟で暮らしはじめたのは、いつ頃からなんですか?
明石さん:小学校へ上がる前に、父の転勤で新潟市東区へ移住しました。公害が社会問題になっていた時代で、水俣病被害のあった地域に近かったので、小学校の社会科授業では水俣病について教わったんです。そのせいか、自然環境保護への意識が強くなった気がします。
――現在の取り組みのルーツは、その頃に培ったものなんですね。
明石さん:そうですね。あと、高校時代に出会った先生が自然保護運動に取り組んでいたので、その影響も受けました。山登りをするようになったのもこの頃からなんです。
――高校を卒業した後の進路は?
明石さん:岩手大学農学部の林学科へ進学しました。樹木の種類から材木の加工まで、それこそ樹が生まれてから死んだ後までを学んだんですよね。そうした学びを山村問題の解消に生かしたいと考えましたが、山で生活することへの不安もあったので、手に職をつけることにしたんです。
――どんな技術を身につけたんでしょうか?
明石さん:秋田の大曲にある職業訓練校で家具の製造を学びました。でも家具の製造には大規模な設備が必要になるので、自分で準備するのは難しい。それで岩手にある木工ロクロの工房でお椀やお盆をつくる修業をはじめました。
――木工ロクロって難しそうですね。
明石さん:ロクロを使った木工はもちろんなんですけど、木を削るための刃をつくる鍛治仕事から自分でやるんですよ。そっちの方が大変でしたね。
――そこからやらなければならないとは(笑)。修業を終えた後は新潟に戻られたんですよね。
明石さん:でも、戻ってはきたものの仕事がなかったので、アルバイトをして過ごしていたんです。そしたら、バイト仲間から「中ノ沢森林科学館」でスタッフを募集しているという情報を聞いて、それで応募しました。

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本当につくりたいものを引き出し、
満足できるものを一緒につくる。
――こちらの「中ノ沢森林科学館」は、どういった施設なんでしょうか?
明石さん:もともと「中ノ沢渓谷森林公園」のなかにあるキャンプ場に併設した木工体験施設だったんです。以前は地元の管理下にあった施設だったんですけど、私が入ってしばらくしてから「NPO法人お山の森の木の学校」を立ち上げて独立しました。
――以前と変わったところはあるんですか?
明石さん:設備の再整備をして、レーザー加工機を導入しました。そのおかげで、木材にイラストや名前を焼き付けることができるようになったんです。木材の表面は木目や凹凸があるのでレーザー加工が難しいんですけど、こちらでは木材の加工からおこなっているので綺麗に仕上げることができます。
――その技術は、どんなところで役立っているんでしょう?
明石さん:限られた予算を補うために、お椀やお盆などの木製品を受注加工しているんです。そのなかで、木製の名札や看板、感謝状をつくる際に役立っていますね。もちろん木工体験でも使っています。
――明石さんの木工修業が生かされているわけですね。夏休みに入ったことで、木工体験も子どもたちで賑わいそうです。
明石さん:キャンプのついでに立ち寄る子が多いですね。雨が降って外で遊べないからと駆け込んでくる子もいます。小学1年から6年まで、夏休みのたびに自由工作をつくりにきていた子もいました(笑)。子どもの頃に木工体験をした子が、自分の子どもを連れて来てくれたこともあったようです。
――木工体験の際に気をつけていることはありますか?
明石さん:つくるものを押し付けずに、子どもがつくりたいものをつくらせてあげることですね。子どもが本当につくりたいものを引き出してあげて、会話をしながらそれを進化させることで、子どもが心から満足できる作品が完成します。つくりたくないものをつくらされたって、満足できるものなんてできないですよ。出張体験のときも同じようにおこなっています。
――出張もしているんですね。
明石さん:新潟県立植物園や新潟ふるさと村で毎年おこなっているんです。こちらまで来ることが難しい方は、ぜひそちらにお越しいただきたいですね。

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山村問題や森林の大切さを、
体験を通して伝えていきたい。
――木工以外にも、体験できることはあるんでしょうか?
明石さん:森林を歩いて木々のことを知ってもらう「森林体験」をおこなっています。自分たちが暮らしている家や、何気なく使っている家具の材料になっている木材も、もとは森林に生えている木だということを知ってもらい、関心を持ってほしいんですよ。
――「木育」のような感じですね。
明石さん:そうなんです。森林の木々は大水や土砂崩れを防いでくれているだけでなく、地面から水を吸い上げて葉から蒸散させるときにまわりの温度を下げているんです。そうして人間の生活を支えてくれているんですよ。
――阿賀町にはそうした自然が多く残っていますよね。
明石さん:そうですね。新潟市から遠くないんですけど、自然豊かですし、空気が澄んで夜空の星も綺麗に見えるんです。
――最近はクマが問題になっていますが、明石さんは遭遇したことあるんですか?
明石さん:登山道の整備をしているときにときどき会うことがあります。このあたりの山にいるクマは、よっぽどじゃなければ襲ってこないんですよ。ただ、子グマを連れた親グマには注意が必要ですけど。問題は里に下りてしまったクマですね。縄張り意識が強いので、味をしめれば何度でも行くようになりますから。
――クマに限らず、里に出没する野生動物が増えていますよね。
明石さん:そこには山村問題も影響していると思うんです。人口の減少や住民の高齢化によって、耕作放棄地は増えるし人の姿も見かけなくなっていくでしょう。そうなると、山で暮らしていた野生動物も警戒心が薄れて、平気で里へ下りるようになってしまうんですよ。
――なるほど。
明石さん:今後もそうした山村問題や森林の大切さを「中ノ沢森林科学館」の取り組みを通して伝えていきたいですね。

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