自分らしいパン作りを発見。
無添加素材の「calaunt」
食べる
2026.07.27
「はて、こんなところにベーカリー?」と一瞬考えてしまいました。西蒲区の民家の一角、保育園のお隣に建つシンプルなパン屋さんが「calaunt(カルアント)」です。オープンしたばかりで何かと慌ただしい時期にも関わらず、快く取材を受けてくださったのは店主の髙橋さん。お店のInstagramを覗くと、オープンを祝うコメントがたくさん寄せられていました。無添加素材で丁寧に焼き上げるパンはもちろんのこと、髙橋さんのお人柄にも惹かれるお店です。
髙橋 佳代
Kayo Takahashi(calaunt)
1985年新潟市生まれ。調理師専門学校を卒業後、「石窯パン工房 サフラン」などを運営する「株式会社山重」で18年間パン作りに携わる。2024年に独立し、直売所やイベント会場などでパンを販売。2026年7月に西蒲区に店舗をオープン。料理家の中川たまさんや山田奈美さんの著書を参考に、味噌や梅干し作りなどの手仕事に挑戦中。
人気ベーカリーで18年。
ベテラン職人がはじめた個人店。
――髙橋さんは独立されるまで、18年もベーカリーにお勤めだったんですね。やっぱり小さい頃からパン職人に憧れていたんでしょうか?
髙橋さん:私ははっきり覚えていないんですけど、小学校時代の友人いわく「佳代ちゃんは、ずっと『パン屋さんになりたい』と言っていた」そうなんです(笑)。専門学校を卒業してからは、「サフラン」などを展開する「山重」という会社に長らくお世話になりました。
――ちなみにどちらの店舗にいらしたんですか?
髙橋さん:いちばん長くいたのは「サフラン女池店」です。オープニングスタッフとして働きはじめて、その後は店長も経験させてもらいました。
――女池の「サフラン」さんは、いつも賑わっていますよね。パン職人さんはフル稼働だったのでは?
髙橋さん:ひとりのパン好きとしても、「サフラン」は衝撃でしたね。あれだけたくさんパンの種類が並び、行列ができるベーカリーはそれまで見たことがありませんでした。オープン当初は特に忙しかったですけど、「わぁ、すごいお店に来ちゃった」と、どこか他人事のような興奮もありました。独立してから、あの反響がどれだけ特別なものだったのかあらためて感じています。修業は大変なものだと覚悟していたので、あの慌ただしい日々はとてもありがたかったです。職場では仲間や上司に恵まれ、手厚く支えてもらいました。それだから18年も働くことができたんです。


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自然が生み出す力で
パンが膨らむ驚きと感動。
――いずれ独立する考えは以前からお持ちだったんですか?
髙橋さん:ずっと「山重」にお世話になろう、と思っていた時期もありました。でも友人が背中を押してくれたんです。心の奥にしまっていた「もし自分のお店を持つなら……」という気持ちを彼女が引き出してくれて。ずっとこのままでいたら後悔しちゃうだろうな、と独立を決めました。
――お友達の存在が大きかったんですね。
髙橋さん:はい、私の人生のキーパーソンです(笑)。独立後は西蒲区の「&CO」さんというレンタルキッチンを借りてパン作りをしました。
――ひとりでのパン作りは、どうでした?
髙橋さん:大所帯だからできることもありますし、個人には個人なりのよさがあって。独立当初は、業者さんを頼らなければ営業なんてできるわけがない、と思っていました。でもお気に入りのお店で自分で食材を選んで、それを使ったパンを販売することだって「十分できるじゃない」という手応えを感じたんです。
――Instagramには「国産小麦、無添加食材、圧搾一番搾りのなたね油、ミネラルが残るきび砂糖、県産バターや地もの等を使用」と書かれています。材料を厳選しているんですね。
髙橋さん:体調を崩し、身体への不安材料を減らしたいと思ったことがきっかけなんです。作ったら試食をしますから、私のパンをいちばんたくさん食べるのは私なので(笑)。無添加食材で作るパンは、素材の味がよりクリアにわかる気がして、とても美味しいと感じました。作る工程にも面白さがあって、どんどん夢中になったんですね。
――髙橋さんの普段の食事にも興味があります。
髙橋さん:無添加食材を意識するようになってから、身体の不調は減ったように感じています。でもいつもそうではなくて、カップラーメンも食べますよ(笑)。自分の中で「食べて大丈夫だ」という安心感を持てることがいいのかな、と思うんです。あとは食べ過ぎないこと。「calaunt」のパンも、少量でも満足できるものにしようと心がけています。
――無添加素材だから余計に手間がかかるところもあるのでは?
髙橋さん:天然酵母を使ってパンを作っているので、いつも同じように発酵しない難点はあります。季節によっても変動がありますしね。今時期はオレンジ、それから次は桃の酵母菌から天然酵母を作ろうと思っています。その作業がまたとっても面白くって。そもそも私は自然が好きなんですね。休日は公園、森、海で過ごしたいし、作業の合間に畑に雑草を見に行きたくなる(笑)。好奇心から独学で勉強して、試行錯誤を経て今に至っています。もうね、感動するんですよ。「自然の素材だけで、ほんとうにパンが膨らむなんて」って(笑)。旨みがより強く、味わい深いパンに仕上がるところも天然酵母の好きなところです。

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「これが私」
胸を張り、自分の足で立つ。
――パン職人さんとして十分なキャリアをお持ちなのに、これまでとは違うパンづくりを選んだのはどうしてですか?
髙橋さん:人と違うことがしてみたい、と思う性格なんです。こういうパン作りをされているところは他にもありますが、少数派です(笑)。独立して、やっと自分の足で立って歩けている感じがするんです。これまでちょっと周りの目を気にしているところがあったんですけど、今は、胸を張って「これが私です」と言えます。
――とっても素敵な言葉を聞けました。あらためてご自分のお店がオープンして、どんな気持ちか教えてください。
髙橋さん:オープン日は、今まで経験したことがないくらい緊張してしまって。でもわざわざお店まで来てくださって「calaunt」のパンを食べていただけることの喜びは、緊張の何倍も大きかったです。
――お客さんの反響はいかがですか?
髙橋さん:この地域は私の地元でもあるので、親戚や仲良しの同級生、ずっとご無沙汰していたお友達もたくさん来てくれます。お隣の保育園の理事長先生もそうですし、みなさんが協力して口コミを広げてくださるんです。オープン前は、この場所で受け入れてもらえなかったらどうしよう、という多少の不安があったんですが、実際はその逆でした。疎遠だった人にも会えたり、思いもよらないことがたくさんあって、とても感動しています。
――どんな方に「calaunt」のパンを食べてほしいと思いますか?
髙橋さん:誰ということはなく、ぜひみなさんに召し上がってほしいです。ご家族で公園に行くときや普段の食卓のお供にしていただきたいです。素材にこだわっているので一般的なパンのお値段ではないんですが、「よい素材で作ったパンはこういうものですよ」と知っていただくためにも、一度味わってもらいたいと思っています。そのうえで、「好きだな」と感じていただけるようなら、また足を運んでもらえたら嬉しいです。
――最後に、「calaunt」らしさって何だと思いますか?
髙橋さん:「おいしい」はもちろん大前提にあって、そのうえで素材へのこだわりや身体への思いやり、生産者さんとの出会いなどから考えるようになった未来のこと。そうした思いを込めて「calaunt」のパンを作っています。


calaunt
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