僕らのソウルフード。五泉の老舗「栄軒ベーカリー」のコーヒーパン。

「栄軒ベーカリー」社長に聞く「コーヒーパン」のいろいろ。

五泉市のソウルフードとも呼べるパンがあります。その名は「コーヒーパン」。ほろ苦い風味の香ばしいコーヒークリームを、ほんのりした甘さのコッペパンで挟んだサンドパンです。朝食や昼食、おやつにこのパンを買い求めるお客さんが店頭から後を絶たない、それほどの人気商品なんです。今回は「コーヒーパン」を販売している五泉市の老舗パン屋「栄軒ベーカリー」の社長・坂井さんに、コーヒーパンや地元に対する思いを聞いてきました。

 

 

栄軒ベーカリー

坂井 康二 Kouji Sakai

1973年五泉市生まれ。株式会社栄軒代表。東京製菓学校卒業後、東京のパン屋で4年間修行する。父の病気をきっかけに新潟に戻り、3代目として「栄軒ベーカリー」を継ぐ。仕事が忙しく、趣味の時間は無くなってしまったものの、休みの日はもっぱら2人の子ども達の野球観戦を楽しんでいる。

 

1日200〜300個売れている人気の「コーヒーパン」。

——今日はよろしくお願いします。まず、「栄軒ベーカリー」の「コーヒーパン」について教えてください。

坂井さん:ほんのり苦味のある香ばしいコーヒークリームをコッペパンではさんだものです。他にもやっているところはありますし、そんなに特別なパンじゃないんですけどね。

 

——でも、すごい人気なんですよね?

坂井さん:1日200〜300個くらい売れますね。先日、地元テレビ局の情報番組で紹介されてからは1日500個くらい売れてます。

 

——やっぱり人気じゃないですか(笑)。人気の秘密って何でしょうね?

坂井さん:なんですかねぇ(笑)。歴史は古いので、五泉の人たちには馴染み深いパンになっているのかもしれませんね。先々代の頃から作っているから、50年くらい前にはもう売っていたと思います。作り始めたきっかけとしては、1960年代のコーヒーブームも影響しているのかもしれないですね。味は当時からまったく変えてないんです。

 

——50年以上、少しも変わってないんですか?

坂井さん:当時のレシピそのまんまです。材料の仕入先もずっと同じですし、ガスオーブンとかの器具も同じものを使ってますよ。私も若い頃は流行や新しいパンへの憧れもあったし、自分のオリジナリティを出してみたいという欲もあったんです。でも父の後を継いだ直後、少し味が変わっただけでも店にクレームが来たりしたんですよね(笑)。それ以来、店の味を守ることに誇りを持つようになりました。

 

世間の流行とは真逆のパンを作っている「栄軒ベーカリー」。

——「コーヒーパン」も含めて、毎日どれくらいのパンがお店に並ぶんですか?

坂井さん:100〜120種類くらいですかね。夏場は材料の状態の問題もあってお休みしているパンがあるんです。冬場は地元食材の里芋やレンコンを使ったパンも登場するので、パンの種類は増えますね。

 

——毎日100種類以上も作ってるんですか?それって、かなり大変じゃないんですか?

坂井さん:サンドパンなんかはコッペパンに具材を挟むだけですし、ベースがあってバリエーションをつけるだけなんで、そんなに大変じゃないですけどね。

 

——それでも具材は何種類も作るわけでしょう。ところで100種類以上のパンの中で人気があるのはどんなパンなんですか?

坂井さん:「あげあん」は1日100個売れますね。「あげあん」というのは「揚げあんパン」の略で、一般的に「あんドーナツ」と呼ばれているパンに近いものです。こちらもずっと作ってきたロングセラーですね。

 

——坂井さんが個人的にオススメするパンってありますか?

坂井さん:売れ残ったパンは、まかないとして自分たちの朝食や昼食にしてるんです。ですから売れ残っているとうれしいのは「ハムカツサンド」と「納豆サンド」ですね。「納豆サンド」は納豆のコロッケをからしマヨネーズといっしょにコッペパンに挟んだもの。新潟市東区の閉店してしまった老舗「南雲ベーカリー」から「納豆コロッケパン」のレシピを教わって始めたものなんです。「南雲ベーカリー」で「納豆コロッケパン」ファンだったお客さんもうちの店に買いに来てくれますね。

 

 

——「栄軒ベーカリー」はどんなふうにパンを作っているんですか?

坂井さん:いたってシンプルなパンです。材料も小麦粉に砂糖、塩、水を使っているだけで、添加物はもちろん卵も牛乳も入ってません。卵や牛乳を使わないっていうのは、食物アレルギーのお客さんに対しての配慮もあります。でもシンプルな分、小麦の味が生かせるんじゃないかと思ってます。あと、高温で短時間のうちにパンを焼いています。そうすることで水分が飛ばないので、小麦の風味が濃厚に感じられるんです。ふんわり、やわらかくという世間の主流とは逆のパンを作ってる気もしますけどね(笑)

 

毎日食べるものだから、できるだけ安く提供したい。

——「栄軒ベーカリー」はいつから続いているお店なんですか?

坂井さん:昭和2年に「栄軒パン店」として始まりました。当時はパンとお菓子を売っているお店で、パンも自家製は半分しかなかったようです。あとの半分は大手製パンメーカーから仕入れたものを売っていました。今の建物になった昭和56年頃にも、まだメーカーのパンを置いていたので、いつからすべて自家製パンになったのかは定かじゃないんですよね。設備もスタッフも整ったので、すべて自家製パンにして行ったんだと思います。

 

——歴史がある分、しっかりと地元に根付いているお店になってますよね。

坂井さん:そうだとありがたいですね。以前は地元の学校給食にパンを納めていたこともあったんですよ。でも少子化で学校も減り、パンに変わって白米の給食が増えてきたので、今ではやってないんです。そのかわり、近隣の小学校と高校のお昼休みや定時制高校の夜の授業前に、パンを販売しに行ってます。高校は放課後の部活動前にも売りに行くんです。まだコンビニもなかった時代から、ずっと続いていることなんですよ。

 

 

——学生たちの思い出にも残っていそうですね。坂井さんはどんな思いでパン屋さんをやってるんですか?

坂井さん:パンって人によっては毎日食べるものですよね。よく買いに来てくれる高校生なんかもお金がないわけじゃないですか。だから、できるだけ安く提供できるよう心がけているんです。まあ、最近は材料費や人件費も上がってきているので、だんだん大変になってきてはいるんですけどね(笑)。でも、お客さんのためにがんばっていきたいです。

 

——最近はその学生の数も昔に比べて少なくなりました。

坂井さん:五泉市も人が減ってさみしくなって、この商店街もどんどん店が少なくなって来てますよね。なんとか商店街に活気が戻ってほしいと思ってるんです。そのためにもお店の中にイートインスペースを作れれば、近所のおばあちゃんとかも集まる場所ができたりして、少しは人が集まるのかなって思ってます。こんな古い商店街ではなく、駐車場のたくさんある郊外に移っていく店も多いですよね。でも、うちはずっと地元でやっていきたいと思ってます。それも流行りの「ブーランジェリー」とかじゃなくて昭和時代から受け継いできた「ベーカリー」としてやって行きたいですね。

 

 

五泉市のソウルフードとして、子どもからお年寄りまで幅広い人たちに人気の「コーヒーパン」。人気の秘密は、流行に左右されず50年以上も変わらない味にあるのかもしれません。今まで通りの「ベーカリー」として、「栄軒ベーカリー」がいつまでも地元で愛され続けてほしいですね。

 

 

栄軒ベーカリー

〒959-1865 新潟県五泉市本町3-4-1

0250-43-3388

7:00-20:00

日曜休


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