みなさま、お盆はいかがお過ごしでしょうか。こんな暑いときにはカキ氷が食べたくなります。最近は、氷にこだわったもの、ふわふわな食感が楽しめるものなど、様々なカキ氷があります。今回お話をきいた「inorganic(イノーガニック)」では「液体をデザインするカキ氷」を楽しむことができるんです。液体をデザインする、とはどういうことなのか。お店のこと、カキ氷のことなど、お話を聞いてきました。
inorganic
中山 修平 Syuhei Nakayama
1986年新潟市出身。新潟市内の飲食店で働いた後、「Atelier CHIANTI」を立ち上げる。その後「canelé de CHIANTI」を展開し、新潟や東京に店舗を構える。昨年、「canelé de CHIANTI 新潟本店」を「inorganic」としてリニューアルオープン。「canelé de CHIANTI」では製造を担当しており、「CoCoLo新潟」で買える限定フレーバー「笹団子」を考案した人でもある。
──複合施設「NEST」内にあった、「canelé de CHIANTI」がカフェになったお店なんですね。
中山さん:昨年カフェ業態としてリニューアルオープンしました。もともとカヌレの販売をしていたスペースはそのまま残していて、店内でも楽しめるようなカフェになっています。カヌレの他にもパスタやオープンサンド、夏はカキ氷を楽しんでもらえますよ。メニューは「Atelier CHIANTI」を一緒に立ち上げた、代表の川又がプロデュースしています。
──今日はそのカキ氷のお話を聞きたかったんです。早速ですが、どんなカキ氷なのか教えてください。
中山さん:うちでご用意しているのは、氷を削らないカキ氷なんです。マイナス30℃で瞬間冷凍させた液体を、細かく削って氷にしています。他にはない独特な食感を楽しんでいただけますよ。
──カキ氷をつくることになったきっかけは?
中山さん:「Atelier CHIANTI」を僕と代表の川又とやっていたとき、新型コロナが流行ったんです。飲食店は満足に営業ができなかったので、「せっかくだし、やりたいことをやろう」ってふたりで話していたんです。そのときにあがったのが、カヌレとカキ氷でした。
──じゃあ、結構前からカヌレとカキ氷に目をつけていたんですね。それにしても、なぜカキ氷を?
中山さん:液体から氷をつくれる機械を川又が見つけて、料理に使おうって提案してくれたんです。彼は新しいものをすくい上げるのが上手で、当時あまり知られていなかったこの機械も、早い段階で見つけていましたね。
──新潟のカヌレブームを起こしたのも「canelé de CHIANTI」さんですし、新しいものを広める力があるんでしょうね。
中山さん:だいたいアイデアは川又が出してくれて、僕はそれに色付けすることが多いかもしれないです。「canelé de CHIANTI」が安定してきたので、カキ氷を出すために、「inorganic」をつくりました。カキ氷と一緒に、カヌレも多くの人に知ってもらえるような間口の広いお店にしたかったので、ランチも提供するカフェという業態にしましたね。
──「inorganic」という名前には、どんな経緯が?
中山さん:最初、「真っ白なお店をつくろう」って言っていたんです。それに合う名前をいろいろ探して「無機質」という意味の「inorganic」にしました。といっても、やりたいことを実現させる場なので、コンセプトはしっかり固めてないんです。現にこのお店は真っ白ではないですし(笑)。お店に入りやすい雰囲気にしたくて、グレーを基調とした店内にしました。
──「inorganic」で楽しめるカキ氷について、もっと教えてください。液体からつくるカキ氷と、氷を削るカキ氷はどんなどころが違うのでしょう?
中山さん:液体を使うことで、カキ氷として出したときの味や香りが一定になるんです。僕らが子どもの頃に食べていたカキ氷って、味が濃かったり薄かったり、ムラがありませんでした? 液体でつくる氷はそれ自体に味や香りがあるから、ずっと同じ味を楽しむことができるんですよ。
──最初から最後まで美味しく食べられるって、ありがたいです。
中山さん:あとは、液体であれば何でもカキ氷をつくれるので、表現できる味の幅が広いんです。ここでは、川又の料理人のエッセンスが入ったカキ氷も楽しんでもらえますよ。全部で6種類用意していて、そのうちの3種類がミルクを使ったカキ氷で、残りの3種類が野菜やハーブを抽出した液体を使ったカキ氷になっています。
──その中でも、中山さんのオススメを教えてください。
中山さん:王道でいうと、ミルクの氷にストロベリーとミント、バルサミコを使ったもので、特に1回試してほしいのは、トマトを抽出した氷に、ピーチとバジルを使ったものですね。ミルクの方はバルサミコの甘酸っぱさがいいアクセントになってますし、トマトを使ったカキ氷は、バジルとトマトでカプレーゼに近い風味が楽しめますよ。
──トマトの氷、見た目は白いのに食べるとトマトの香りや味をしっかり感じることができます。
中山さん:トマトから抽出液をつくるときは、ひとつひとつの作業を丁寧にすることを大事にしています。強い力を加えてしまうと色素が入ってしまうんですが、丁寧に抽出すると、透明の液体にすることができるんですよ。
──この透明な氷の裏には、レストラン顔負けの仕込みがあるんですね。食材の組み合わせも料理人ならではですよね。
中山さん:この組み合わせの中には、「Atelier CHIANTI」でコースの料理にあわせてつくるカクテルから着想を得ているものもあります。セロリの抽出液でつくった氷と、りんごとパイナップルの組み合わせは、セロリを使ったジントニックをオマージュしています。
──「液体をデザインする」という言葉がぴったりです。中山さんの今後の目標を教えてください。
中山さん:「inorganic」のロゴには「produced by canelé de CHIANTI」をつけているんです。これは、カヌレがもっと身近なものになってほしいっていう思いが込められています。存在を知ってくれている方は多いですが、まだ贈り物としての用途が強い気がしていて。ここを通してカヌレがもっと身近な存在になっていけたらいいなと思っています。
Inorganic
中央区女池神明3-14-4
10:00-18:00(L.O 17:00)
不定休