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新津焼の伝統を受け継ぎ世の中に伝える「もえぎ陶房」。

かつてより新津には油田やガラス工場などがありましたが、時代の流れとともに産業は変化するもの。昔から続く仕事が減ったり、なくなったりしています。けれど、中には昔からある伝統的な仕事を守るために頑張っている人たちもたくさんいます。今回紹介する「もえぎ陶房」の押味さんもその一人。江戸時代から続く「新津焼」を守るため、作品制作をしながら陶芸教室も開催しています。今回は押味さんから「新津焼」への思いについて聞いてきました。

 

 

もえぎ陶房

押味 くみこ Kumiko Oshimi

1976年新潟市秋葉区生まれ。東北芸術工科大学の芸術学部で陶芸を学び、そのまま大学院に進んで2001年に修士課程を修了。その後、新潟市に戻って西潟製陶所内にもえぎ陶房を開設する。2016年に西潟本家6代目を襲名し、作品を制作する傍ら陶芸教室にも力を入れている。YouTube鑑賞が趣味で占いの動画を見ることが多い。

 

「新津焼」っていったいどんな焼き物なの?

——「新津焼」って今まであまり聞いたことがなかったんです。どのような焼物なんですか?

押味さん:この新津地域で古くから作られてきた陶芸品が「新津焼」と呼ばれるものなんですよ。使い終わった炭の火を消すための炭消し壺や、とっくり、植木鉢、擂鉢、湯たんぽ、ランプ台といった実用的な陶器が作られてきました。「新津焼」には製品的な特徴ってあまりないんですよ。ただ新津の土を使って、薪の代わりに石油を使った焼き窯で作る陶芸品っていうことですかね。

 

 

——薪の代わりに石油っていうのが新津らしいですね。「新津焼」の工房って以前はたくさんあったんですか?

押味さん:4軒あったようです。西潟家ともう1軒で、それぞれ本家と分家がありましたが、今では西潟本家だけになってしまいました。

 

——西潟本家はいつ頃から「新津焼」に関わってきたんですか?

押味さん:江戸時代の安政5年に初代・西潟藤市(にしがたとういち)が、秋葉山の山先にあった窯元を継いだのが始まりだそうです。以来6代にわたって160年以上も続いてました。戦前には従業員が数十人を超えた時期もあったんですよ。でも大量消費の時代になって、プラスチックをはじめとした陶器に変わる製品が量産されるようになると、製陶所も次第に規模を縮小していって。今は陶芸教室というかたちで「新津焼」を守り続けています。

 

工房をリニューアルしたことで、6代目の本気度が伝わった。

——押味さんは6代目を襲名されたわけですが、苗字が「西潟」じゃないんですね。

押味さん:私は5代目の姉の娘で姪にあたるんです。大学院を卒業してからは叔父と一緒に「西潟製陶所」の中で「もえぎ工房」を立ち上げて、陶芸家として作品を作ったり、陶芸教室で教えてきました。2016年に叔父が年齢的な理由で退くことになったんですが、跡を継ぐ人間がいなかったので、私が6代目として西潟本家を継いだんです。

 

——6代目を襲名してみていかがでしたか?

押味さん:以前は5代目の下であれこれ言われながらやっていたから「これからはやっと自由にやりたいことができる」って開放感があったんです。でも後から次第に「西潟本家を潰しちゃいけない」っていう大きなプレッシャーに変わっていきましたね(笑)。あとお金の管理をすることも大変ですね。工房を建て直すときも資金調達にとっても苦労しました。

 

 

——こちらの工房はとても綺麗ですけど、いつ頃建て直したんですか?

押味さん:今年の4月にリニューアルオープンしました。元の建物は築100年以上経っていて、いつ崩れてもおかしくないような状態だったんです。屋根は傾いてゆがんでいたし、柱もシロアリにやられていました。その上、母屋にくっつけて建てられていたので、工房の建物が崩れたら母屋も共倒れになる危険があったんですよ。

 

——でも古い柱をそのまま使ってますよね。

押味さん:西潟本家の長い歴史がしみ込んだ工房ですから、使える建材はそのまま使って、できるだけ忠実に「再現」したんです。建てるときに順番がわからなくなると悪いから、柱には番号を振っておいて、その番号通りに建て直してあります。

 

——リニューアルしてみて反響はいかがですか?

押味さん:金曜と土曜に工房で開催している体験教室の参加者が増えましたね。とくに若い人が増えてきました。建物をリニューアルしたことで、私が「新津焼 西潟本家」の6代目として「もえぎ陶房」をやっていこうとしている「本気度」が伝わってくれたんじゃないかって思ってます。

 

幅広い作風の秘密と粘土の魅力について。

——工房では押味さんの作品も販売しているんですね。とてもバリエーション豊かで、同じ人が作ったとは思えないですね(笑)

押味さん:本来、私の陶芸はかわいい作風なんですよ。でもいろんな好みのお客様がいらっしゃるので、かわいいものからシブいものまで幅広く対応できるように作ってます。わざわざ遠くからお越しいただいたのに、求めていた作品がなくってがっかりされちゃうのがイヤなんですよね(笑)

 

 

——いろんな作品に対応できるだけの技術を持っているってことでなんでしょうね。押味さんにとって陶芸の魅力ってどんなことですか?

押味さん:粘土が何にでも形を変えてくれるので、いろんな製品を作ることができるし、様々な表現をすることができますよね。あと個人的なことかもしれないんですけど、土に触ることって癒しになると思うんです。

 

——たとえばどういうことですか?

押味さん:育児のためにしばらく陶芸をお休みしていた時期があったんです。そのとき体の調子が悪くなってしまったんですよ。それでまた土に触るようにしてみたら、体の調子が元に戻ってよくなったんです。アース線が電気を土に流すみたいに、粘土を触ることで有害なものが粘土に吸収されるのかもって思いましたね(笑)

 

「新津焼」を全国や全世界の知るブランドにしたい。

——今後はどんな活動をしていきたいとお考えですか?

押味さん:とにかく江戸時代から続いてきた「新津焼」をブランド化したいんです。そのためにも、いろんなところとコラボした製品を作ったりして、世の中の人たちに知ってほしいと思っています。日本全国はもちろん、海外にも広めていけたらと思ってます。

 

 

「西潟製陶所」で作ってきた陶器製品から昔の巻物まで、歴史の長さを物語る貴重なものがたくさん残っていて、改めて伝統のある工房ということがわかりました。その伝統に縛られることなく、新しい焼物にもチャレンジして行こうとしている押味さん。「新津焼」が全国や海外でも人気のある、新潟の名産品になる日を楽しみにしてます!

 

もえぎ陶房

〒956-0855 新潟県秋葉区滝谷本町2-5

090-8252-1856

10:00-18:00(金曜土曜のみ営業)

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