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気持ち新たに新天地へ。伝統を伝える鰻店「瓢亭」。

明治27年創業、老舗鰻店の5代目にインタビュー。

この春、113年の歴史に幕を下ろした「新潟三越」。その上層階にお店を構えていた老舗鰻店「瓢亭」が、新潟市中央区、鍋茶屋通りに場所を移したこと、皆さんご存じですか? 今回は5代目の川崎晴久さんに、お店の歴史や新しい取り組みについてお話をうかがってきました。

 

瓢亭

川崎晴久

1985年新潟市生まれ。明治学院大学を卒業後、東京の有名料亭で修業。2011年新潟に戻り、家業である「瓢亭」の5代目に就任。料理人歴11年余。現在は4代目である父と共に料理場を守っている。

 

料理経験0からのスタート。苦しかった修業時代。

――今日はよろしくお願いします。川崎さんは、いつ頃から家業である「瓢亭」を継ごうと考えていましたか?

川崎さん:高校を卒業してから、東京の明治学院大学へ進みました。そのときは正直、店を継ぐことなんて考えていなくて、商社へ就職するつもりだったんです。でも、いろいろな出来事があって、「瓢亭」を継がなくてはいけなくなりました。それで、大学4年の9月26日、僕の誕生日に、内定をもらっていた商社に断りの連絡を入れて、料理の道へ進むことに決めたんです。

 

――複雑な誕生日だったんですね…。それで修業というのは「瓢亭」で?

川崎さん:明治27年創業の「瓢亭」は、今でこそ鰻屋ですが、昔は「鍋茶屋」「行形亭」と並ぶ新潟3大料亭のひとつでした。それもあって、まずは親戚が営む東京の有名料亭で修業することになりました。

 

 

――へえ、昔は料亭だったんですね。初めて知りました。ちなみに、料理の経験はあったんですか?

川崎さん:それが…キャベツと白菜の区別もつかないぐらい、料理のことは何も知らない、ただの素人でした。それこそ、柳刃包丁や出刃包丁といった道具の名前すら知らなくて。ある意味、無謀な挑戦でしたね。

 

――料亭の修行と聞くとハードなイメージですけど、想像以上に大変だったんでしょうね。

川崎さん:そうですね。仕事が終わって寮に帰ると深夜。それからちょっとだけ寝て、早朝からまた仕事がはじまる毎日でした。僕は学生時代から遅刻魔だったから、寝たら起きれないと思って、ほとんど寝ない生活をしばらく続けていました。素人同然だから、やっている仕事は大したことないけれど、体力的にはきつかったですね。でも、意地があったからとにかく必死に頑張ってきて、それが自分の今の基盤を作ってくれたと思っています。

 

料亭だった「瓢亭」。その歴史を紐解く。

――それでは、お店の歴史について教えてください。今年の3月、「新潟三越」の閉店を機に店舗を移しましたが、料亭だった頃はどこでお店を構えていたんですか?

川崎さん:創業当時は、鍋茶屋通りにある今の店舗の向かい側にお店を構えていました。だから、懐かしい場所に戻ってきたような気持ちです。今の2階の窓から「瓢亭」があった当時の光景を思い浮かべるひとときは、「もっと頑張らないと」と身が引き締まります。

 

――先ほど「昔は料亭だった」と仰っていましたが、どんなキッカケで鰻を扱うようになったんですか?

川崎さん:料亭時代も季節の一品として、鰻は提供していました。戦争のあおりで料亭として続けていくことが難しくなってきたときに、僕の祖父である3代目が、鰻屋の存在が少ないことに目を付けたのがキッカケなんです。鰻を食べられる店は少なくて、思いのほか当たったらしいです。

 

 

――そうなると、秘伝のタレは3代目から代々引き継いできたものですか?

川崎さん:引き継いではきましたが、タレのレシピは細かくは記されていなくて、材料など、ある程度の内容になっています。だから最後の判断は、タレを仕込む本人の裁量次第。自分が仕込むようになってからは、味が変わったと言われないか心配でしたが、子どもの頃から食べてきた味覚があったので、きちんと引き継げていると思います。ちなみに3代目は、「秘伝のタレ」というのを嫌っていましたね(笑)

 

―――おっと…失礼しました。ちなみに、今の「瓢亭」も歴史のある建物ですよね。何の建物だったんですか?

川崎さん:「旧花岡邸」といって、唄や三味線の師匠として活躍していた元古町芸妓の住居兼稽古場でした。専門家の方曰く、すぐにでも登録有形文化財に登録できるほど、歴史的価値のある2階建ての数寄屋造りだそうです。各所に歴史の趣を感じられて、創業地の向かいという縁も感じて、家族揃って気に入りました。

 

新たな場所で、新たな取り組み。そして守るもの。

――新しい場所へと移ってから、はじめた取り組みはありますか?

川崎さん:新しい店舗の2階には、とても素敵な座敷があります。だから、料亭だったということもあって、お造りなどを含めたコース料理の提供もはじめました。もちろん、最後には鰻の「蒲焼きごはん」も。日本料理と鰻を存分に楽しんでもらえる構成になっています。

 

――コース料理をはじめたんですね。他にはありますか?

川崎さん:お客さんに食べてもらって、「美味しい」は当たり前だと考えています。だからそれだけじゃなく、食に関わる器なども、煎茶、ほうじ茶で変えたり、季節にあわせて変えたり、空間や設え、器などに趣向を凝らして、上質なひとときを過ごせてもらえるようにと、見えない部分の粋にもこだわっています。

 

――なるほど。それでは最後に、新たなスタートを切った「瓢亭」。これからの抱負を教えてください。

川崎さん:縁があって、創業地の向かいに店を構えることができました。でもあくまで向かいです。きっと「まだまだ頑張りなさい」ということなんだろうと感じています。1年1年を大切に、「瓢亭」のある古町に何かの恩返しができるよう、日々精進して参りたいと思います。

 

126年の歴史がある「瓢亭」。お品書きをちょっとだけ。

 

蒲焼きごはん ¥4,950

 

付出し(内容はおまかせ) ¥1,265

 

 

瓢亭

新潟県新潟市中央区古町通8番町1448-2

025-223-0861

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