昨年「Things」でご紹介した、長岡市にあるカフェ「tsugu(ツグ)」のオーナー・橋本さんは、もうひとつのカフェを経営しています。それが山本山の山頂にある「やまもとやまCAFE本」です。雪どけを待って通行止めが解除され、ようやく今シーズンの営業がはじまった「やまもとやまCAFE本」に、橋本さんを訪ねました。
やまもとやまCAFE本
橋本 実樹 Miki Hashimoto
1993年東京都生まれ。大学時代に住み込みの農業アルバイトを経験し、そのまま農業法人に就職。その後は地域おこし協力隊として小千谷に移住する。任期を終えた2021年に「やまもとやまCAFE本」「tsugu」をオープン。趣味はひとり旅で、ヒッチハイクをしながら大阪までたこ焼きを食べに行ったこともあるバイタリティーの持ち主。
——ごぶさたしています。想像していた以上に眺めのいい、素敵な場所ですね。橋本さんがカフェをはじめた気持ちがわかるような気がします。
橋本さん:ありがとうございます。地域おこし協力隊として小千谷に移住してきて、農作業のお手伝いをしていたんですけど、この隣にあるブルーベリー畑でお手伝いをしているとき、ずっと放置されたままだったこの建物が気になって仕方なかったんですよ。
——もともとは何の建物だったんですか?
橋本さん:ここにスキー場があったときの山頂休憩所で、レストランの営業もしていたそうですが、中越地震をきっかけに営業をやめて放置されていたと聞いています。せっかく眺めのいい素敵な場所にあるのに、使っていないのはもったいないと思っていたんです。
——それでカフェをはじめたんですね。
橋本さん:地域おこし協力隊としての私のミッションに「山本山の有効活用」っていうのもあったんです。そこで、この建物を使った「チャレンジショップ」というかたちで、9月〜11月の3ヵ月間だけ期間限定カフェをオープンしてみました。それが「やまもとやまCAFE本」だったんです。
——この場所でカフェをやってみて、反響はどうだったんですか?
橋本さん:こんな山の上までお客様が来るかどうか心配でしたけど、チラシを配ったりSNSで告知をした他、テレビや新聞、雑誌に取り上げられたこともあって、想像を遥かに超えるお客様が来てくれたんです。オープンするまでは、知り合いしか来ないような、こじんまりした喫茶店をイメージしていたんですけどね(笑)
——この場所に、そんなにたくさんの人を呼んだんですね。じゃあ、かなり忙しかったんじゃないですか?
橋本さん:おかげさまで、かなり忙しかったです(笑)。でもカフェの営業を経験したことが、すっごく楽しかったんですよ。いろいろな人とのつながりもできたし、毎日が充実していたんです。だから、これから先も小千谷でカフェを続けていきたいと思って、地域おこし協力隊の任期が終わった後も残る決心をしました。
——カフェをやった経験は、よっぽど充実していたんですね。
橋本さん:そうですね。この山本山の気持ちのいい自然や、小千谷で作られている美味しい農産物を多くの人に伝えたいという思いもありました。
——「やまもとやまCAFE本」をオープンする際に、内外装のリフォームはしたんですか?
橋本さん:気になるところはやりました。階段は錆びついていたので、自分でペンキ塗りをしたんですが、だんだん欲が出てきてしまって結局ドアも塗り直したんです。廃校になった小学校や幼稚園からいただいてきたインテリアも作っています。ソファーは小学校の校長室にあったものなんですよ(笑)。本棚も廃園の幼稚園からいただいてきました。
——「やまもとやまCAFE本」というだけあって、本が充実していますね。
橋本さん:「気持ちのいい眺めのなかで、本を読みながらゆったり過ごしてほしい」っていうコンセプトのカフェですからね。お客様や知り合いが持ってきてくれた本が、今は500〜600冊あると思います。それに合わせて本棚も増設しましたし、余っていた畳を使ってお子様用の読書スペースも作りました。
——よく見ると、窓側のカウンター席は台で底上げしてあるんですね。
橋本さん:多くの方に素敵な眺めを楽しんでほしいと思ったので、窓の外が見やすいように台を作ったんですよ。
——確かに座ったまま眺めを楽しめますね。山本山の風景を楽しむにあたって、おすすめのシーズンってあるんですか?
橋本さん:う〜ん……。オールシーズンですね(笑)。個人的にはパッチワークみたいに見える、秋の越後平野の田園風景が好きです。あと秋には「タカの渡り」といってタカが多く見られますし、目の前の畑には蕎麦の白い花が一面に咲いて綺麗です。雲海も秋の早朝に見られることがあるんですよ。
——へ〜。当たり前ですけど、町中では見られないものばかりですね。
橋本さん:そうですね。ウサギやタヌキは当たり前に見かけますし、以前は目の前にススキが生い茂っていて、そのなかにキツネが住んでいたんですよ。あとカモシカも2度ほど出会ったことがあります。
——カモシカって天然記念物になっているレアな動物じゃないですか。ちょっとうらやましいです(笑)。自然のなかで働くのって楽しそうですね。
橋本さん:楽しいことが多いんですけど、なかなか大変なこともありますよ。カフェは自然な風を生かしたくてエアコンをつけていないんです。だから夏の調理場は地獄ですね(笑)。あと夜遅くまで仕込作業をして帰宅するとき、街灯がひとつもなくて真っ暗なので怖いんです(笑)。霧が出て何も見えない山道を車で帰るときもあります。
——なるほど。自然のなかで働くのも善し悪しがあるんですね。そんな自然のなかでいただけるメニューには、どんなものがあるんですか?
橋本さん:看板メニューは「やまもとカレー」です。栄養価が高くてもちもちした食感が楽しめる「寝かせ玄米」を使ったスパイスカレーで、お子様からお年寄りまで誰もが食べられる辛過ぎない味です。あと今年から登場した「ピタパン」も、気軽に食べられるからおすすめですね。
——美味しそうですね〜。どんなことにこだわっているんですか?
橋本さん:できるだけ地元の小千谷、もしくは新潟県産の食材を使うっていうことですね。「レアチーズケーキ」や「ブルーベリーミルク」に使っているブルーベリーはお隣の畑で栽培したものですし、「そば茶」もそのお隣の畑で実った蕎麦の実を使わせてもらっています。
——栽培されている畑を見ながら味わうことができるんですね(笑)。
橋本さん:ここからの素敵な眺めが、料理のスパイスになってくれると思いますので、一緒に味わっていただきたいですね。そして、気持ちのいい時間を過ごしていただけたらうれしいです。
やまもとやまCAFE本
小千谷市山本1485-16
11:00-16:00
火-土曜休