
「エゴマ」についてご存知の方はどれほどいるでしょうか。その名前からゴマの一種と思う方も多いと思いますが、じつはシソ科の植物なんです。韓国料理に使われることが多いのですが、近年では日本でも栄養価が評価されて市場に出回りはじめました。今回はエゴマを使った料理が楽しめる「農家カフェ 木の香(きのか)」を経営する「川上農園(かわかみのうえん)」の川上道枝さんにお話を聞いてきました。


川上農園
川上 道枝 Michie Kawakami
1954年五泉市(旧村松町)生まれ。東京の歯科医院で働いているときに夫の政行さんと出会い結婚。五泉市に戻り会社勤めをした後、政行さんのエゴマ栽培や「農家カフェ 木の香」を手伝う。若い頃はテニスに打ち込んでいた。
——自然豊かで静かなところですね。ここにいるだけでとっても落ち着きます。
川上さん:ありがとうございます。ここは私が生まれ育った場所なんです。結婚して子どもが生まれるまでは東京で暮らしていたんですけど、子どもの成長に合わせて五泉に移住しました。
——それはどうして?
川上さん:東京では団地暮らしをしていたんですけど、自然のなかで子どもをのびのびと育てたかったんです。田舎暮らしの不便さを知っていた私は迷っていましたが、東京で生まれ育った主人は田舎暮らしへの憧れがあったようで大乗り気でした(笑)。実家の母の誘いもあったので、五泉へ移り住むことになったんです。

——確かにのびのびと子育てできそうな環境ですもんね。エゴマの栽培は移住してすぐにはじめたんですか?
川上さん:父の農業を手伝っていましたが、エゴマはつくっていなかったんですよね。主人がベビーリーフの栽培をしている会社に勤めていて、そこでエゴマと出会ったんです。会社がエゴマ栽培を中止することになったので、自分でエゴマの栽培をはじめました。
——ちなみにエゴマって、ゴマの仲間なんですか?
川上さん:名前は似ていますけど、ゴマ科ではなくシソ科の植物で、まったく違うものなんですよ。爽やかな風味と独特の味が特徴で、韓国料理によく使われているんです。食べると寿命が10年延びるといわれるほど栄養価が高いことから、地域によっては「ジュウネン」と呼ばれています。

——そんなに栄養がある植物なんですね。
川上さん:「畑の青魚」とも呼ばれています。種から搾った油にはイワシやサバに含まれる「DHA」や「EPA」と同じ成分の「α-リノレン酸」が豊富で、悪玉コレステロールが抑えられるので、生活習慣病やアレルギーの抑制、美肌保持が期待できます。「川上農園」でもエゴマから搾った「生エゴマ油」や「焙煎エゴマ油」を販売していますが、毎日小さじ1〜2杯飲んでいただくだけで、1日に必要な量を摂取できるんです。
——それはすごい。ところで「生エゴマ油」と「焙煎エゴマ油」では、どんな違いがあるんですか?
川上さん:種をそのまま搾ったものが「生エゴマ油」で、「焙煎エゴマ油」は焙煎することで香りがより強くなっています。エゴマ油の他にも、ふりかけやそうめん、クッキーといったエゴマ商品を販売しているんですよ。地元のスーパーに卸したり、商店街のイベントで販売したりしています。

——「農家カフェ 木の香」をはじめたのは、どうしてなんですか?
川上さん:エゴマを使ったメニューをたくさんの人に食べてもらって、その魅力を知ってもらいたかったので、2013年にオープンしました。実家の敷地半分を店舗にしたんです。
——店舗を建てるときに、こだわったところを教えてください。
川上さん:まわりの自然と調和する雰囲気にしたかったですね。そのため薪ストーブを取り付けて、ワンちゃんも同伴できるテラス席やドッグランをご用意しました。あと入口にスローブをつくったり段差を無くしたりして、バリアフリーにもこだわったんです。

——内装にもレンガや木が使われていて、自然を感じるつくりになっていますね。
川上さん:店名もまわりの自然をイメージして「木の香」と名付けました。裏山の手入れをする余裕が無くて恥ずかしいんですけど、「手つかずの自然のままでいい」と言って、この環境を気に入ってくれるお客様も多いんです。
——どんなお客さんが多いんでしょう?
川上さん:幅広い年代の方々からご来店いただけますが、年配のご夫婦が多いですね。あと最近はおひとりで来られて、のんびり過ごしていかれるお客様も増えたので、壁向きのひとり用席をつくりました。
——自分の世界に浸れそうですね。接客面で心がけていることはあるんですか?
川上さん:高級料理を提供するようなお店ではないので、せめて気持ちよく過ごしてもらえるよう努力しています。そのため、目配り気配りを大事にするよう心がけているんです。お料理を褒めていただけるのも嬉しいけど、店の居心地を褒めていただけるのはもっと嬉しいですね。
——そのお料理のほとんどに、エゴマが使われているんですよね。
川上さん:そうなんです。パスタには、エゴマの葉を粉末にして練り込んであります。以前は製麺所にお願いしていたんですけど、今では自家製麺を使っているんです。パスタの太さや食感が思っているようにならないし、粉の配合が難しくて苦労しましたが、試行錯誤を重ねて納得できるパスタになりました。

——エゴマを使っている以外に、メニューでこだわっていることはあるんですか?
川上さん:地元の自然や季節を感じられるメニューを提供するよう心がけています。夏はトマトの冷製パスタをやっていましたし、今はきのこを使ったスープパスタや五泉産のレンコンを使ったクリームパスタを提供しています。
——多くの方にエゴマの魅力を知ってもらえるといいですね。
川上さん:そのためにエゴマの栽培も頑張っていきたいですね。ただ、今年は猛暑の影響で収穫量が減ってしまったんです。
——夏の炎天下で農作業するのは大変でしょう。
川上さん:できるだけ日中を避けて作業するようにしていますが、どうしても炎天下で作業する場合はペットボトルに氷を詰めて持ち歩き、ときどき首を冷やすようにしています。そんな苦労の上に収穫したエゴマですから、たくさんの方々に味わっていただきたいですね。

農家カフェ 木の香
五泉市刈羽丙804
0250-58-2022
11:00-16:00(11月〜2月は11:00-15:00)
月火水木金曜休