祖母から受け継いだ大根からし巻。
ふるさとの味を守る「岩﨑食品」。
食べる
2025.12.30
細長く切った大根を天日干しした切り干し大根は「はりはり漬け」とも呼ばれ、新潟では長い冬を乗り切るための保存食として作られてきました。年末年始には昆布や数の子と合わせて、おせち料理としても親しまれています。そんな切り干し大根を使った漬物をつくっているのが、新潟市西蒲区にある「岩﨑食品(いわさきしょくひん)」です。角田山を望む工場にお邪魔して、岩﨑さんご夫妻からお話を聞いてきました。
岩﨑 修
Osamu Iwasaki(岩﨑食品)
1985年新潟市西蒲区生まれ。長岡造形大学卒業後、新潟の写真スタジオでカメラマンアシスタントを経験。上京して様々な仕事に従事し、2011年に新潟へ戻って祖父母の農業を手伝いはじめ、2019年に事業を継承する。映画鑑賞が趣味でお気に入りの作品は「プラダを着た悪魔」。
岩﨑 博子
Hiroko Iwasaki(岩﨑食品)
1987年三条市生まれ。東京の専門学校を卒業後、東京や新潟のスポーツクラブで働き、2018年に修さんと結婚。その後は夫婦で農業や食品加工業に携わる。安室奈美恵が好きでライブの追っかけをしていた。
地元農家の賄い料理だった
切り干し大根のからし巻。
――こちらの切り干し大根や漬物には、自家栽培した大根が使われているんですよね。
修さん:そうなんです。うちは西蒲区で代々続いてきた農家で、僕で六代目になります。とはいっても、父と母は公務員なので農業にはあまり携わっていないんですが……。
――長く続いている農家さんなんですね。これまではどんなものを作ってきたんですか?
修さん:じいちゃんの代までは、米や野菜なんでも作っていたんです。でも僕が受け継いでからは生産物を絞って、今は大根とスイカだけを作っています。
――その大根を使って作る漬物っていうのは、どういったものなんですか?
修さん:切り干し大根でからしを巻いた「ピリ辛からし巻」という漬物で、もともとは西蒲原地域の郷土食だったんです。昔は田植えにしても稲刈りしにしても手作業だったので、農家同士が協力し合って多勢で農作業をしていました。そのとき賄いとして振舞ったお膳に切り干し大根のからし巻きがついたんです。
――へぇ〜、今まで知りませんでした。
修さん:平成4年に農家の嫁で運営する「生活改善グループ」で旧巻町の「特産品をつくるプロジェクト」がはじまって、地域ならではの食品を考えているうちに、昔の農家でつくられていた切り干し大根のからし巻が掘り起こされたんです。
――それが事業に?
修さん:役場や農業普及指導センターから勧められて、ばあちゃんをはじめ何軒かの農家がそれぞれ起業して、切り干し大根のからし巻を作りはじめました。

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高齢の祖父母に代わって
農家を受け継いだ夫婦。
――修さんは最初から農家のお仕事を手伝っていたんですか?
修さん:僕は長岡造形大学で写真の勉強をして、しばらくは新潟のスタジオでカメラマンアシスタントとして働いていたんです。そこを退職してからは、東京で自分のやりたいことを探しながらいろいろな仕事を経験しました。
――それなのに、どうして農業を?
修さん:高齢のじいちゃんやばあちゃんに代わって、農業をやってみないかと父から勧められたんです。やりたいことも見つからなかったし、代々守られてきた農地を失うのも残念だったので、僕が農業を継いでみようと思いました。
――経験がないのに農業をはじめるのは、大変だったんじゃないですか?
修さん:じいちゃんは昔ながらの頑固者でとても気難しかったので、わからないことを聞いても「見ておぼえろ」といって教えてくれなかったんですよ(笑)。だから、本格的に農業をはじめたのは事業を継承してからなんです。
博子さん:私もじいちゃんとはよく喧嘩しました(笑)
――そんなに気難しい方だったんですね(笑)。博子さんは結婚するまで、どんな仕事をされていたんですか?
博子さん:私はスポーツトレーナーを目指していたんですけど、資格が取れなかったのでスポーツクラブのフロントで働いていました(笑)。そのときの先輩が新潟出身で夫と高校の同級生だったので、紹介されて夫と出会いました。ちなみにその先輩は「岩﨑食品」で一緒に働いてくれています(笑)

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こだわりと苦労の末に生まれる
歯ごたえや辛味、そして味わい。
――「ピリ辛からし巻」って、どんなふうに作っているんですか?
博子さん:輪切りの切り干し大根をお湯で戻した後、水で締めてから脱水して、からしを塗って巻いたらタレに漬け込みます。
――思っていたよりも、からしが効いていて驚きました。
修さん:そのピリ辛な味わいが売りになっていて、ご飯のお供やお酒のおつまみによく合うんですよ。お米やお酒の美味しい新潟にはぴったりの食品だと思います。ただ、時間が経つと辛さがだんだんと抜けてしまうので、辛味が抜けにくいからしを厳選して使っているんです。歯ごたえもしっかり感じてほしいので、大根は厚めに切っています。
――なるほど〜。他にもこだわっていることがあったら教えてください。
博子さん:素材をそのまま味わっていただきたいので、できるだけ化学添加物を使わないようにしているんです。保存料も使っていないので、自然のままの味の変化をお楽しみいただきたいですね。
修さん:自分たちで育てた青首大根でつくっていることもこだわりです。青首大根は食感がいい上に、新潟特有の寒さで甘味が増します。通常より遅めに収穫することで、身が詰まった大根ができるんです。そうはいっても天候に左右されるので、思うように作れないのが難しいところですね……。
――それって、農業の難しいところですよね。
修さん:今年の夏は雨が少なくて暑かったので、大根が美味しくなりにくかったんです。先日はいきなり雹(ひょう)が降って大根が穴だらけになり、ビニールハウスにも穴があいてしまいました。
――それは災難でしたね……。ちなみに大根は天日干しをしているんですか?
博子さん:新潟の気候では天日干しが難しいので乾燥機を使っているんですが、下からしか風が出ないので、均一に乾燥させるためには上下の網を入れ替えなければならないんです。ですから毎晩夜中に工場へ来ては、網の入れ替えをおこなっています。

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いつかは新潟を代表するような
名物グルメになってほしい。
――おふたりがどのような思いで、製品づくりをしているのか教えてください。
修さん:できるだけ多くの人に西蒲原地区に伝わるからし巻を食べていただき、次の世代に伝えていきたいと思っているんです。そのためにも、若い人の手に取ってもらえるようパッケージをリニューアルして、カラフルでポップなものに変更しました。
博子さん:地元の小学校でからし巻の体験授業をおこなって、郷土食について知っていただく活動をしています。地元の小学校でもからし巻を知らない子がほとんどなんです。
――じゃあどんどんアピールしていく必要がありそうですね。
修さん:ありがたいことに、全国ネットのテレビ番組で紹介していただく機会があって、大変な反響をいただいたこともあるんです。そのときは全国からの注文が殺到しましたが、手づくりをしているので生産が間に合わず、たくさんのお客様をお待たせすることになってしまいました。
博子さん:先月出展した「フードメッセinにいがた」での「第10回6次化大賞」では「ピリ辛からし巻」が審査員特別賞と協賛企業特別賞に選ばれました。ばあちゃんが喜んでくれて嬉しかったですね。
――自分がつくり続けてきた製品が評価されて、おばあちゃんも嬉しかったでしょうね。最後に、今後やってみたいことがあったら教えてください。
修さん:「ピリ辛からし巻」をより多くの人にお届けしていきたいですね。
博子さん:いつかは新潟を代表する、笹団子のような名産品になってほしい……という夢があります(笑)

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