山の中の菓子店で、感動のひと口を。
新発田市「壱福堂」

食べる

2026.02.13

text by Etsuko Saito

新発田市下中山、山あいの静かな場所にある「壱福堂(いっぷくどう)」。プリンやシュークリーム、焼き菓子が評判で、取材の日はシュークリームが完売していました。「壱福堂」さんにお邪魔するのは、今回がはじめて。でも胎内スキー場からの帰り道に見かけて、ずっと気になっていたんです。お店を営んでいるのは、佐藤さん姉妹。ほのぼのした空気感がそのままお菓子に映し出されているような、温かさを感じました。

Interview

佐藤 沙織

Saori Sato(壱福堂)

1985年新発田市生まれ。製菓学校を卒業後、神奈川県の洋菓子店に就職。2009年に地元に戻り、焼き菓子の委託販売をはじめる。2016年に下中山地区に「壱福堂」をオープン。読書好きだが、まとまった時間が取れずにオーディブルを愛用。

納屋を改装した店舗で、
2種類のプリンからスタート。

――佐藤さんは以前、神奈川のお店で働かれていたということですが、まずは当時のことを教えてください。

佐藤さん:ご夫婦が営んでいる小さいケーキ屋さんで、シュークリームとか素朴なお菓子とかが人気のお店でした。ご近所とも親密で、スタッフ同士家族みたいに仲が良い職場だったんです。そこで3年ちょっと働いて。

 

――「壱福堂」さんみたいに、ほのぼのしたケーキ屋さんだったんですね。

佐藤さん:新卒で入る前に、在学中に研修でお世話になったんです。ちょうど先輩が退職することが決まっていて、「卒業したら、ぜひうちに来てほしい」と誘ってもらって。成績優秀者だったわけじゃなかったので、きっと「相性がいい」と思ってもらえたんですね(笑)

 

――そういう出会いって、素敵ですよね。でもやっぱり、いずれは新潟に戻ろうと考えていたんですか?

佐藤さん:山育ちなので、私には神奈川が都会過ぎたんですね。地元に帰る度に癒されていて、「ここでお菓子を作りたいな」と思うようになりました。それに実家の農業を少しでも盛り上げたい、って気持ちもあったんです。おばあちゃんが現役のとき育てていた「平飼い卵」や実家が生産しているニンニクなどをお菓子に生かそうと思っていました。

 

――「壱福堂」さんって新発田市内からは離れた場所にありますよね。その点、不安はありませんでした?

佐藤さん:不安は、めっちゃありました。雪もすごいところだから、大丈夫かなって。それでも、実家の納屋を店舗に改装することがいちばん手っ取り早いと判断したんです。開店当初は商品が2種類のプリンだけでしたし、看板もなくて。それでも、もう10年近く営業を続けさせてもらっています。

 

特に人気のある「みそクッキー」(右)は、しょっぱい系。他にない味と食感がたまらない。

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プリン、焼き菓子、シュークリーム、
それぞれに熱狂的なファンが。

――地元に戻られてからしばらく、お菓子の委託販売をされていたそうですね。

佐藤さん:委託販売していた頃は、大変だったんですよ。パン屋さんの営業の合間に、そこのスペースを借りてお菓子を作っていたので、夜間に作業するしかなくて。夕方の6時から深夜まで作業をしていました。

 

――その分、ご自分のお店をオープンしたときの喜びは格別だったのでは。

佐藤さん:「ここに来れば作業できる」というだけで、十分なくらいでした。お客さまの「生の声」を聞けることも嬉しかったですね。委託販売の場合は、お客さまにお会いする機会がほとんどないので。

 

――今日はもうシュークリームが完売してしまっていました。お店の人気商品なんでしょうか?

佐藤さん:ありがたいことに、シュークリーム、プリン、クッキー、ロールケーキ、それぞれにファンの方がついてくださっています。特に人気があるのは、シュークリームと濃厚プリン。プリンは2種類あって、「濃厚プリン」は黄身を使用した柔らかめ、「プレーンプリン」は全卵を使用して固めに仕上げています。なるべく素材から自分で加工して、「ごまプリン」のソースは、すり鉢で練ったごまにハチミツなどを合わせた自家製です。1月、2月の限定商品「ほうじ茶プリン」のソースも、煮出した茶葉にひと手間を加えてから生クリームと合わせています。

 

――大福や焼き菓子もあるんですね。

佐藤さん:最近復活した「生チョコの大福」ですね。材料費高騰につきお休みしていたんですが、「また食べたい」という声が多くて、ショーケースに戻ってきました。焼き菓子は「みそクッキー」に根強い人気があるんです。クッキー好きの方が、「みそクッキー」だけを目的に来てくださいます。

 

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常連を惹きつける
シンプルの中にある「感動」。

――お姉さんと役割分担をして、お店を営んでいらっしゃるそうですね。

佐藤さん:私はただお菓子を作っているだけで、接客などは姉にお任せしきりです。すごく頼りにしています。

 

――10年営業を続けていらっしゃるから、いろいろなことがあったと思います。コロナ禍だとか。

佐藤さん:コロナ禍も大変でしたが、それより、お菓子作りのための材料費がどんどん高くなって困っています(苦笑)

 

――私もスーパーでいつも参っていますよ。でも何より、根強いファンがいらっしゃるのは、心強いですよね。

佐藤さん:春、山菜取りの帰りに寄ってくださる方や、スキーの帰りに毎回来てくださる方もいらっしゃいます。

 

――季節ごとの常連さんがいるなんて! この地域の自然とともにあるみたい。

佐藤さん:ほんと、そうですね。冬はもう、雪が降らないと心配になっちゃって、スキー場に拝んでいます(笑)。場所とお店の外観のせいなのか、「気になっていたんだけど、なかなか入れずにいて」という方もいらっしゃって。お客さまにアドバイスされて、普段はのぼりを4本立てています。

 

――佐藤さんは、いつもどんな気持ちでお菓子を作っているんですか?

佐藤さん:「ひと口食べて、感動する味」を大切にしているので、「まだ感動が足りない。まだまだ」って何度も試作をして、ひとつずつ丁寧に、心を込めてお菓子を作っています。こんな山の中にあるお店なので、存在感を残さないとお客さまが来てくださらないんじゃないか、と心配で。だからこそ「納得してもらえる味」に仕上げていますし、少しでも感動を届けたい、と思っています。私たちが作るお菓子はとてもシンプルで、映えとは程遠いです。それもまた「壱福堂」らしいところだと思っています。

 

卵白を活用したいと考案された「さくさく」は、素朴でクセになる味。ついつい手が伸びる。

壱福堂

新潟県新発田市下中山63

TEL/0254-29-3733

営業時間/10:00~17:00

定休日/月曜日(日曜不定休)

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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