部屋とは、そこで暮らす人の暮らしぶりや趣味嗜好、人柄までもが現れる唯一無二の場所。似ている部屋はあっても、おそらくこの世に全く同じ部屋はひとつも存在しません。「この人ってどんな人なんだろう、どんなものが好きなんだろう」。その答えがきっと部屋にはあります。シリーズ『部屋と人。』では、私たちと同じ新潟に暮らす人たちの、こだわりの詰まった「自分の部屋」をご紹介します。
第11回は、アパレルブランド「equal」のデザイナー平井大誠さんのお部屋です。実は大学時代にも一度取材をさせてもらったことがあり、今回、数年ぶりの再会となりました。平井さんが暮らしているのは長岡駅から車で15分のところにある2階建てのアパート。6月に入居したばかりということで、さっそくお邪魔してきました。いったいどんなこだわりが詰まっているのでしょうか。
企画/プロデュース・北澤凌|Ryo Kitazawa
イラスト・桐生桃子|Momoko Kiryu
――平井さん、お久しぶりです!お会いするのは5年ぶりくらいですかね?今日はよろしくお願いします。
「部屋の取材で再会することになるとは思わなかった(笑)。今日はよろしくお願いします!」
――平井さんのご実家は椅子屋さんだったと思うんですけど、平井さんご自身も昔からインテリアには興味があったんですか?
「小さい頃から身近なものだったし興味はありましたね。でも本格的に好きになっていったのは、4,5年前にequalというブランドを立ち上げてからです。椅子を作ってみたり、Tシャツをデザインしてみたり、自分が気になったものを作っていくうちに、インテリアへの興味も増していきましたね」
――今回紹介してもらう部屋には、どんなテーマがあるんでしょうか?
「とくにテーマとかはなくて、シルクスクリーンをするために借りた作業部屋なんです。ここへ入居するまでは実家の自室でやっていたんですけど、物が増えたから狭くなっちゃって。そろそろ広い場所に引っ越したいなと思って物件を探していたときに、この部屋を見つけたんですよね」
――部屋探しをするうえで、とくに重視した条件ってありましたか?
「作業する場所とリビングは絶対に分けたくて、最低でもふた部屋以上ある場所を探していました。前にワンルームで暮らしたことがあったんですけど、そのときはうまく切り替えができなくて作業が捗らなかったんですよ。この部屋は水回りの設備も近いから、シルクスクリーンの版もすぐに洗えてすごく便利なんですよね」
――部屋作りをしていくうえで意識したことは?
「作業部屋は好きなものを置いてゴチャゴチャとした場所にしました。逆にリビングや寝室は休憩メインの部屋になるので、極力ものは増やさないようにしていますね」
――ブランドについても教えて欲しいんですが、equalではどんなデザインを刷っているんですか?
「抽象的なんですけど、自分が好きだと思えるデザインだけを刷るようにしています。いまはシルクスクリーンの工場に勤めているので、仕事とは別に自分なりの表現を突き詰めたいんですよね」
――いま制作中のものとかってありますか?
「近々東京のギャラリーでPOP UPを行う予定があるので、イベントに向けてキャップやバンダナ、バッジのような小物類も準備しています。今後はもっとインテリアラインを充実させて、いろんな家具を作っていきたいですね」
――では部屋にあるこだわりのものについても教えてください。
「まずは作業部屋の中央にある作業台です。Tシャツと版を置いても余るくらいの大きさにしてあって、高さも自分の身長に合わせて作りました。色味やデザインは無機質な方が好きなので、コンクリートのようなものを選んであります」
「棚のあるこの一角は、自分の好きなものや友達の作品が集まっている区画ですね。なかでもスヌーピーのキャラクターが描かれている『UP TO YOU』のイラストはお気に入りで、僕が所属しているRAWQY(ローキー)というチームのメンバーが描いてくれたものなんです」
「このジュエリーケースと小物入れは友達と作ったものです。円形のものは『ピースマーク』、長方形のものは『equal』という文字になっているんですよ。デザインだけじゃなくて、使い勝手も良いからすごく気に入っています。県内にはモノづくりをしている友達がたくさんいて、いつもいろんな刺激を与えてくれます」
――作業部屋ができてから、なにか心境の変化はありましたか?
「実家にいたときよりも、メリハリができるようになった気がしますね。前もって部屋の条件とか、置くものとかを考えていたし、自分にとって作業しやすい環境が整っているのはかなり大きいです」
――今後行ってみたい場所とか、部屋をこんなふうにしていきたいとか。なにか展望があれば教えてください。
「一度ロンドンに行ってみたいですね。建物というよりも、向こうの音楽とかファッションとか、いろんなカルチャーに触れてブランドの参考にしたいです。部屋については、背の高い間接照明と観葉植物を置いて、いつか壁に大きな絵も飾ろうと思っています」
初めて出会った頃から、平井さんはシルクスクリーンを使ったアパレル製品を作っていましたが、今回の取材を通じて、その表現の幅がさらに広がっているように感じました。きっとその理由は、取材のなかにもあった周りの友人との共同作品や、出会った人からなにかを得ようとする平井さんの表現に対する謙虚な姿勢にあるんじゃないかと思います。類は友を呼ぶというように、今後も平井さんの周りには様々な人たちが集まり、新しい表現が生まれていくでしょう。次にどんな表現が生まれるのか楽しみです。(byキタザワリョウ)