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「部屋と人。#103 Kajiwara Naoki」

人間ひとりひとりの個性や性格、人柄をあらわす唯一無二の場所、それが「自分の部屋」。世の中に「似ている部屋」や「同じ間取りの部屋」は数あれど、まったく同じ部屋というものはひとつも存在しません。『部屋と人。』では、私たちと同じ新潟に暮らす人たちの、こだわりの詰まった「自分の部屋」をご紹介します。なかなか見ることのできない「他人の部屋」、ちょっと覗き見してみましょう!(毎月第1金曜日更新予定)

 

第3回は、大学で建築を学ぶ傍ら、長岡の古着屋「Leave Me Alone」の運営やアーティストのプロモーション動画を手掛けるなど、幅広い活躍を見せているKajiwara Naokiさんのお部屋です。Kajiwaraさんが住んでいるのは、大学から離れた場所にある集合住宅。どうしてわざわざ離れたところを選んだのか、そしてさまざまなクリエイションが生み出される部屋にはいったいどんなこだわりがあるのか。インテリアに興味を持ったきっかけから順に聞いてきました。

 

 

企画/プロデュース・北澤凌|Ryo Kitazawa
イラスト・桐生桃子|Momoko Kiryu

 

――ではまず、インテリアに興味を持ったきっかけから教えてください。

「両親が昔からインテリアへのこだわりが深い人たちだったので、『インテリアはこだわるべきものだ』っていう認識が小さい頃からありました。家族でどこかへ出かけるときも、その先々にあるインテリアショップとか、古い建築物とかを見るような習慣があったんですよね。」

 

――Kajiwaraさんは建築を専攻しているということですが、その学科に進もうと思ったのはやっぱりご両親の影響ですか?

「それもあるかもしれません。もともと親は転勤族で、小さい頃から一箇所に留まる経験をしたことがなかったんですよ。でも僕が受験生になる年に大阪で家を建てることになったんです。そのとき親が間取りとか、各部屋の構成とか、家を建てるうえで重要な部分を僕に任せてくれて。そのときの経験がかなり大きいですね。親が家を建てようとしなかったら、もしかすると建築には進んでいなかったかもしれませんね。」

 

――ひとつ気になっていたんですけど、この部屋って大学から結構離れていますよね。通学大変じゃないですか?

「そうですね(笑)。でも最初に部屋探しをしたときから、なるべく離れた場所がいいなと思っていたんですよ。その方が移動中に考えごとを整理できたり、オンオフの切り替えもできたりしてゆとりができそうだなと思って。」

 

――ここに住もうと思ったなにか決め手があったんですか?

「部屋の広さとか壁紙の色とか、あとは巾木がないところとか。気に入ったところはいろいろあったんですけど、一番の決め手は集合住宅というところでした。大学では建築を専攻しているんですけど、これまで住んだことのなかった様式の部屋に興味があって、実際に生活をしてみることで知識を深めることができたり、なにか新しい発見をすることにもつなげられたりするんじゃないかと思ってここを選びました。」

 

――今回はふた部屋紹介してもらえるということですが、Kajiwaraさんが部屋作りをするうえで意識していることってありますか?

「『積層した部屋作り』というのはすごく意識しています。僕にとって部屋はいままで自分が積み重ねてきたものを見て確かめる場所です。だから、手に入れたものは絶対に手放さず手元に置くようにしています。なにかひとつでもなくなってしまうと、自分の一部が失われちゃう気がして嫌なんですよ。配置にまで大きなこだわりはないんですけど、ここで作業することも多いので、頭を切り替えるためにも部屋の使い分け方は大切にしています。」

 

――ちなみにどんな使い分け方をしているんですか?ひと部屋ずつ教えてください。

「まずリビングからいきますね。ここはご飯を食べたり、来た人を案内したりする場所なのであまり主張の強いものは置かないようにしています。本来はものがゴチャゴチャしている雑多な部屋が好きなんですけど、周りにいろんなものがあると食事をするにも人と会話をするにしても、そっちに意識が向いちゃうんですよ。ここではなるべくリラックスした時間を過ごせるように整頓を心がけています。」

 

 

「こっちは仕事部屋です。普段は店(古着屋 Leave Me Alone)の運営をしながら、グラフィックデザイナーとして企業やアーティストのプロモーションにも携わらせてもらったりしています。仕事に関する打ち合わせや制作作業をここで行っているんですけど、同時に進めることが多くてときどき内容が混在してしまうんですよ。そんなときは仕事によってリビングで行うものと仕事部屋で行うもので分けるようにしています。」

 

 

――では次に各部屋にあるお気に入りのもの、思い入れのあるものについて教えてください。

「ひとつ目は壁にかけてあるこのポスターです。これは17歳くらいのとき、ひとりでパリへ行って見つけた『merci』というセレクトショップで買いました。とあるグラフィックデザイナーとコラボして描かれたものでデザインに一目惚れしたんですよね。このポスターを見るたびに街中の風景とか、あの時期感じていたこととか、これを持ち帰って来るのが大変だったなとか(笑)。当時のことをすごく思い出します。」

 

 

「ふたつ目は大竹伸朗というアーティストが出している作品集『全景』です。画塾に通っているとき直島というアートの島へ行ったことがあって、そこで人生で初めて『この人の感性好きだな』と思える作品に出会ったんですよ。その作者が大竹伸朗でした。この作品集はすごい情報量で実はまだ読み切っていないんですけど、制作でどん詰まりになったときに開いています。その度に自分の初期衝動を思い出させてくれたり、同時に自分が進むべき先を教えてくれたりする1冊です。」

 

 

「つぎはLEGOです。LEGOって眺めるのも良いですけど、特に作っているときの時間が好きなんですよ。それは僕がもの作りをするうえで大切にしている『作っている最中が楽しいかどうか』という感覚に似ているからだと思います。これは僕の大好きな『スパイダーマン』で登場するデイリー・ビューグルという建物がモデルなんですけど、定期的に出る『MARVEL』シリーズのなかでも一際サイズが大きくて、幼少期に抱いていた憧れを叶えてくれたものでもあります。」

 

 

「最後はチェアですね。手前にあるダルトンの椅子は、主に自分のデザインワークをするときに使っています。座面が回るようになっていて、アイディアを模索しているときはくるくる回りながら考えています。奥にある木製の方はファッションデザイナーの『ヴァージル・アブロー』と『IKEA』がコラボしたときに出たもので、僕が建築のことや、もの作りを深めていくうえでひとつの指標を与えてくれた1脚です。ヴァージルが建築分野出身ということはもちろん知っていたんですけど、いままで数多くの洋服をデザインしてきた人がどんなふうに椅子へアイディアを昇華したのか。発想の転換の仕方はすごく勉強になります」

 

 

――部屋作りをしていくなかで、建築を勉強しているからこそ気づいた発見とかってありましたか?

「発見ではないんですけど、『その部屋にある魅力を最大限生かした部屋作りをしたい』と思うようになりましたね。例えばここは市営住宅なわけですけど、建てられた当初から何度かリノベーションされているんですよ。そこには作り手たちの考え抜かれた工夫が施されていて、いってしまえばここは建築物のなかの一種の解答例だと思うんです。だから僕は壁や床に手を加えて作り手の意図を歪めるんじゃなくて、ありのままを生かした部屋作りをしたいなと思っています。」

 

――今年で大学4年生ということですが、ここまで住んでみていかがでしたか。

「自分の暮らしている環境やコミュニティについて前以上にいろんな角度から考えるようになった気がします。それにいまはどちらかというと、落ち着いたところで過ごしたいと思うようにもなりました。もちろん地元の大阪とか、東京での暮らしとかも好きです。でも自然を感じられる場所がすぐ近くにあったり、同じ集合住宅で住んでいる人たちの何気ない温かさを感じる瞬間があったり。ここに住むようになって、いままで感じたことのなかった感覚を知ることができました。」

 

――最後に今後こんな部屋にしていきたい、住みたいという展望があれば教えてください。

「内装に関してはまだないんですが、この先自分が集めていくものをちゃんと収められるくらいのスペースを確保し続けたいですね。実家にあるものを含めると置ききれていない家具がまだ沢山あるんですよ。積層した部屋作りをしていくためにはある程度の広さが必須になるので、どうにかして用意したいと思います。ただゴミ屋敷みたいになるのだけは避けたいですね(笑)。」

 

カジ(kajiwaraさん)とはじめて話したのは、彼が運営している古着屋へ取材に行ったときでした。その日のうちに仲良くなって、以来、何度か一緒に飲みへ行ったり、今年出版されたThings magazineで企画に協力してもらったり。出会ってまだ1年と少ししか経っていませんが、彼との交流は決して浅いものではありません。でも今回部屋へお邪魔してみると、新たな側面を知れるようなものが沢山置いてありました。もの一つひとつに思い出が詰まっているというのはとても素敵なことで、話を聞いていると、まるでアルバム写真を眺めているような感覚になりました。カジの「積層した部屋作り」というのは、大量消費に慣れた僕ら現代人が参考にすべきひとつの考え方なんじゃないか、そんなことも思いました。(byキタザワリョウ)

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