長岡市殿町にあるコーヒー屋さん「3Rs(スリーアールズ)」。「コーヒー豆の産地による個性や特性を引き出したい」と話す店主の髙見さんが自家焙煎した、浅煎りのコーヒーを楽しめます。髙見さんが思うコーヒーの魅力や、焙煎のこだわりについて聞いてきました。
3Rs
髙見 忠 Tadashi Takami
1978年長岡市生まれ。実家の食堂を継ぐため、新潟市や東京で中華料理の修業を積む。その料理人の修業時代にコーヒーの奥深さに触れ、東京の「GLITCH COFFEE & ROASTERS」で2年間バリスタの修業を積む。2023年9月、長岡市殿町で「3Rs」をオープン。
――髙見さんは「3Rs」をはじめる以前、どんなお仕事をされていたんですか?
髙見さん:もともとは料理人でした。実家が長岡の新町で「三楽食堂」という食堂をやっているんですが、それが「3Rs」の店名の元にもなっているんです。
――じゃあもともとは、料理人としてご実家のお店を継ぐつもりで?
髙見さん:継ぐつもりでしたが、料理人としての修業時代にコーヒーの奥深さに触れて、自身で毎朝ドリップしたコーヒーを飲むようになりました。そのうちコーヒーの楽しさにより傾倒して「自分のお店をやりたいな」と強く思いまして。今と同じ「3Rs」という名前で、長岡の川崎あたりで一度店をやったんです。
――へ〜! そのときの「3Rs」はどういうお店だったんですか?
髙見さん:今よりもカフェ寄りで、少しフードもあって、テイクアウトもできるようなコーヒー屋さんでした。そのときはまだ自分で焙煎をしていなかったので、新潟市の「ローストカフェ」さんと「GLITCH COFFEE & ROASTERS」の、ふたつのロースターの豆を使いながら1年ぐらい営業していました。
――お店を閉めることにしたのはどうしてなんでしょう?
髙見さん:もう少しコーヒーの勉強をしたいなと思って、一旦お店を畳みました。それで東京に行って「GLITCH COFFEE & ROASTERS」で2年間、バリスタの修業をしていました。それから長岡に帰ってきて、勉強したものを生かしたいなということで、このコーヒー屋さんをはじめました。それが去年の9月ですね。
――そもそも、髙見さんはコーヒーのどんなところに面白さや魅力を感じたんでしょうか。
髙見さん: 毎日自分でコーヒーを淹れる時間ってとても価値があると思うんですよ。それにコーヒーって、すごく簡単に美味しさを共有できますし、自分の好きなものを大切な人たちと共有できることってすごく素晴らしいことだと思って。そのことに、普段見ている風景がキラキラ光るように感動したので、「もっとみんなと共有したい」と強く思うようになりました。
――髙見さんにとって「共有のしやすさ」が感動したポイントのひとつだったんですね。
髙見さん:以前は料理人をしていた経験から、自分の料理を誰かに教えることはすごく大変だと感じていたんですけど、コーヒーはすごく簡単に共有できるなと感じました。レシピを数字で表すこともできますし、ひとつのコーヒーをいろんな人に分けていくこともできる。そうやってどんどん共有していけたらいいなと思って、コーヒーの世界にどっぷりとハマっております。
――お店のInstagramでは、ハンドドリップのレシピを公開されていますよね。
髙見さん:大変好評をいただいています。実際にお店に来てくれたお客様にも「分かりやすくてすごくいいレシピだ」「自分で再現しやすいレシピを公開してくれてありがとう」と言っていただけます。
――こちらで豆を買って、髙見さんのレシピ通りに淹れれば自宅でも「3Rs」のコーヒーが再現できちゃうわけですね。
髙見さん:「インスタでレシピを見て来ました」というような方がけっこう多いですね。「すごく助かりました」と。
――「助かる」というのは?
髙見さん:当店がInstagramに載せているレシピは、通常スペシャリティーコーヒー業界が提唱しているレシピよりも、コスパがいいんですよ。通常は1杯に15gぐらいの豆を使うんですけど、当店のレシピだと12.5gなのでちょっと少ないんです。それにここで販売している豆が約100gなので、15gだと半端が出たりするんですが、一杯12.5gだとちょうど8杯分。私自身が毎日コーヒーを飲む中でクリーンさとか、口に違和感が残らないような味わいを目指しているので、こういうレシピになりました。
――自家焙煎をされていると、こだわりも多いと思います。「3Rs」のコーヒーの特徴についても教えてください。
髙見さん:当店はブレンドコーヒーがないんです。すべてシングルオリジンのいわゆる「ストレート」、さらに言うと「スペシャリティコーヒー」と呼ばれるもので、浅煎りにこだわって提供しています。「コーヒー豆の素材の味を最大限に引き出したい」というコンセプトに基づいて、産地の個性や特性を引き出せるように焙煎をしているんです。
――それぞれの産地による味わいの違いを、お客さんに感じて欲しいと。
髙見さん:本当に多様な産地が存在しているんですよ。エチオピアの中でもいろいろな産地や精製方法、素材がたくさんある中で、その素材の味を知らずにコーヒーを楽しむっていうのはもったいないなと感じます。
――産地や精製方法のことが分かると、コーヒーがもっと楽しくなりそうですね。
髙見さん:当店でベーシックにお勧めしているのは、コーヒーの起源になったエチオピアのコーヒーです。その中でも「ナチュラル」と「ウォッシュド」と呼ばれるふたつの精製方法があります。どの産地にも必ず存在している精製方法なんですけど、コーヒーは産地と精製方法のかけ合わせで味わいが決まってきます。
――ちなみにナチュラルとウォッシュドでは、味わいにどんな違いが現れるんですか?
髙見さん:ナチュラルは果肉を付けたまま精製されるもので、ベリー系の味わいの中に赤ワインのようなアロマがあるコーヒーです。ウォッシュドは果肉を取った後で洗いにかけて仕上げたものなので、柑橘系で非常にクリーンな、すっきりとした味わいが特徴です。このふたつの精製方法を基本として、そこに紐付くいろんな産地と精製方法にこだわったコーヒー……その中でも少し驚きのある、素材が素晴らしいものを選ぶようにしていますね。
――「コーヒーを飲んだ方に発見があってほしい」という思いがあるんでしょうか。
髙見さん:そうですね。普段の生活に密着するコーヒーだと、飲み物というか「生活に寄り添うもの」だと思っているので、そういうものと、生活に発見をもたらすような驚きのあるものをラインナップしています。
――髙見さんの今後の目標はありますか?
髙見さん:10年後ぐらいにロースタリーでも作りたいですね。あとは生活に寄り添って、普段からコーヒーを飲んでくれる人が少なからず増えていけばいいなと。それを毎日思いながらコーヒーを淹れています。今のまま、コーヒーのことを伝え続けていきたいですね。
3Rs
長岡市殿町3丁目4-25