新潟市秋葉区、かつてラーメン店「ふじの新津店」があった場所に、今年の4月、新しいラーメン店「AKIHA麺屋 粋翔(いっしょう)」がオープンしました。店名に秋葉区の「AKIHA」の文字を入れているところに、地域に対する熱い思いを感じるこのお店。オーナーの小泉さんにラーメンや秋葉区に対する思いやこだわりを聞いてきました。
AKIHA麺屋 粋翔
小泉 翔太 Shota Koizumi
1990年十日町市生まれ。高校卒業と同時に新潟市に移り、だるまやグループの「大舎厘(だいしゃりん)」「孔明 女池店」で経験を積む。「ふじの」がオープンする際に誘われ、のちに新津店を店長として任されることになる。2020年「ふじの新津店」跡に「AKIHA麺屋 粋翔」を独立オープン。休日はタンニングを兼ねて砂浜をランニングしているため肌がよく焼けている。
——小泉さんは昔からラーメン屋さんになりたかったんですか?
小泉さん:保育園の発表会を撮影したビデオの中で「ラーメン屋さんになりたい」って言ってるんすよ。そのときに「自分のやりたいこと」としていくつか発表している中で、サッカーやバスケはやってたんですけど、ラーメン屋だけがまだやらずに残ってたんすよねぇ。
——じゃあ、まっすぐにラーメン業界に進んだわけですね。
小泉さん:もう高校を卒業してからすぐ、ラーメン屋をやりたくて新潟市に来たんすよ。ちょうど亀田にだるまやグループの、つけ麺をメインにした「大舎厘」ができる頃で。オープニングスタッフとしてアルバイトを始めたんです。
——ラーメン屋さんで働いてみていかがでしたか?
小泉さん:自分は鶏ガラの下処理とか仕込みを担当してたんですけど、暇だったからとにかく元気よく大きな声を出してたら、店長やマネージャーから「凄い奴がいる」って目を掛けてもらえるようになって。それで「正社員にならないか」って声が掛かったんです。でも正社員になっちゃうと早く帰れないからって断ってたんですよね。ラーメン屋になりたくて入社してるのに、とんでもない奴ですよね(笑)。しかも、その後、店を辞めて十日町市に帰ったんですよ。
——え?どうしてですか?
小泉さん:1年くらいやってみて、現実の壁にぶつかったんですよね…。それで十日町市に戻ったんだけど、マネージャーと店長がわざわざ車で迎えに来てくれたんです。そのときは戻らなかったんすけど、でも、それからも毎日のように電話をくれて。自分のこと心配してくれたんですよ。二人は恩人としかいいようがないっすね。
——じゃあ、結局は店に戻ることにしたんですか?
小泉さん:マネージャーからの電話で、だるまやグループの「孔明 女池店」がオープンするんだけど、スタッフが足りないからやってくれって誘われたんです。「もうこれで誘うのは最後にするから」って言葉で、心が動いたっすねぇ。それで「孔明 女池店」のスタッフとしてだるまやグループに戻りました。
——そこから独立開業への道が開けていくわけですか。
小泉さん:自分が「孔明 女池店」で働いていた時に、ずっとお世話になっていた藤野さんっていう方がだるまやグループから独立することになったんです。それで手伝ってほしいって声をかけてもらって、「ふじの」という店を一緒にやることになりました。その後、藤野さんは中野山に「ふじの」の2号店を出したので、自分は新津店を店長として任されたんです。ただ、その頃には自分も独立を考えてたから、「5年経ったら独立したい」っていうのは話していました。
——それで実際に5年後、満を持して独立したんですね。
小泉さん:藤野さんに独立の話をしたら、この店舗をそのまま売ってもらえることになって。2020年の4月24日に「AKIHA麺屋 粋翔」としてオープンすることになりました。本当は4月30日にオープンする予定だったんすけど、ある朝目が覚めたら、何を思ったのか急に「明日オープンしよう!」って思って、急遽その日、24日にオープンしたんです。大好きだったばあちゃんの命日だったことを、後から思い出したんすよねぇ。
——おばあちゃんの導きがあったんでしょうかね。オープンしてみていかがでしたか?
小泉さん:ちょうど新型ウイルス感染症が猛威を奮い始めていて、秋葉区でも感染者が出た頃だったんです。それで最初は自粛して弁当のテイクアウトだけやってました。
——ラーメン屋さんではなく、お弁当屋さんとしてオープンすることになっちゃったんですね。
小泉さん:そうなんっすよ。でも様子を見ながらゴールデンウィークあたりにラーメンの提供を始めたんです。そしたら近所の人たちがたくさん食べに来てくれて、しかも先輩のラーメン屋さんや地元の人たちからいただいた花輪が店にいっぱい並んだんですよ。本当に嬉しかったし、責任も強く感じましたね。それで今は、これまでずっとお世話になってきたお客さま、取引先、先輩方、地域の人たちへの感謝を感じながらラーメンを作ってます。Tシャツのバックプリントにもお世話になっている方々の名前を入れて、プレッシャーを背負いながら日々精進してるんっすよ。
——かなり義理堅い性格なんですね。
小泉さん:それで、お世話になっている秋葉区への恩返しがしたくって、できるだけ秋葉区の特産品や食材を使ってラーメンを作るようにしています。いずれうちの店がアンテナショップみたいになって、秋葉区の特産品発信のお手伝いができればいいなって思ってます。
——では秋葉区の食材を使って作っている、オススメのラーメンを教えてください。
小泉さん:まず「AKIHA味噌 白」。秋葉区特産品で甘みの強い「さつき味噌」をスープに使って、まろやかな口当たりとコクを出しています。麺には新津産小麦の「白雪もち麦」を全粒粉にして使ってて、コシの強い食感が楽しめるんです。もちろん新鮮な野菜も秋葉区産です。
——新津、大好きですね(笑)。他にもオススメはありますか?
小泉さん:「マルタ醤油ラーメン」は秋葉区小須戸にあるマルタスギヨ株式会社のマルタ醤油を使ったラーメンっす。醤油工場まで見学に行って、工場の人にラーメン屋で見学に来た人は初めてだって言われました(笑)。マルタ醤油に鯖節、鰹節、煮干しを入れて返しを作ってるので、ダシ感のある醤油味になってます。とにかく醤油の香りが強く、醤油ラーメンらしい醤油ラーメンだと思います。
——子どもの頃からの憧れのラーメン屋さんになって、よかったと思いますか?
小泉さん:ラーメン屋が自分の人生を変えてくれましたね。実は人と話すのが苦手で、最初は接客が大嫌いだったんです。でも、いろんな人との出会いでどんどん変わっていきました。今ではラーメン作るよりも、お客さまと話したり、取引先や取材に来る人と話すのが楽しくなっちゃいましたね(笑)
——私も取材してて楽しいです(笑)。ラーメン屋さんになってよかったですね!じゃあ、今後はどんなことに力を入れていきたいですか?
小泉さん:これからも引き続き「MADE IN 秋葉」の発信を続けていきたいっすね。秋葉区の人たちって、いいものを作ったり売ったりしてるわりに発信が苦手なんですよね。少しでも自分が発信のお手伝いをできればいいなって思ってます。秋葉区で養豚をしているところがあれば、チャーシューも秋葉区産にできてオール秋葉区のラーメンが作れるんっすけどねぇ…。どっかないですか?
「ノリと勢いだけでやってきた」と明るく笑うノリのいい小泉さん。写真撮影の際も、頼んでないのにいろんなポーズを取ってくれました(笑)。そんなサービス精神旺盛な面だけではなく、お世話になった人たちに対する感謝を忘れない義理堅い面もあり、その思いがラーメンを通して秋葉区を発信したいという気持ちにつながっています。みなさんもぜひ「AKIHA麺屋 粋翔」でMADE IN 秋葉を味わってみてください!
AKIHA麺屋 粋翔
〒956-0027 新潟県新潟市秋葉区美善1-13-12
0250-23-5506
平日10:00-14:45/16:45-20:30、土日祝日 10:00-20:30
木曜休