30~40代の男性なら誰もが一度は熱中した漫画「SLAM DUNK(スラムダンク)」。暑苦しいくらいにバスケットに燃えるキャラクターたちに心を打たれ、バスケットボールをはじめた人も多いはずです。今回、インタビューをした新潟市中央区「nBb-1on1-(エヌビービーワンオンワン)」のインストラクターである岸本さんもそのひとり。千葉県出身の彼がどうして新潟でバスケットを教えているのか、一度は離れたバスケットを仕事にした理由とは。スポーツマンシップに則って、正々堂々インタビューをしてきました。
Basketball Court nBb
岸本博之 Hiroyuki Kishimoto
1985年千葉県船橋市生まれ。中学1年よりバスケットボールをはじめ、大学生までプレイ。一時は離れたものの、現在はインストラクターとして、小中学生にバスケットの楽しさを伝えている。
――岸本さんは、いつからバスケットを?
岸本さん:小学生時代はサッカーをしていましたが、友達と「スラムダンク」を読んでいたらバスケットがかっこよく思えてきて、中学生になってからはじめました。
――「スラムダンク」世代ですね。一緒です。ちなみに誰が好きですか?
岸本さん:やっぱり湘北高校の三井寿(みついひさし)ですね。自分と同じようなポジション(ガード)ってのもありますし、不良時代を経て、真面目にバスケットマンをリスタートしたとこがいいですよね。
――三井派ですか。いいところでスリーポイントシュートを決めてくれるんですよね。
岸本さん:僕は、そう上手くはいきませんでしたけどね。ド素人からスタートの僕は万年ベンチでしたから(笑)
――え?そうなんですか?意外です。
岸本さん:学校自体もバスケットが弱くて、初戦敗退が基本でしたね。ただ、最後の試合で驚くほどの軌跡を起こしたんですよ!僕は出場していませんが(笑)
――出場していないんですね(笑)。どんな奇跡ですか?
岸本さん:どこの地域にも最強といわれる学校ってあるじゃないですか。そんな学校と最後の試合で当たって、100%負けると誰しもが思っていたら、スリーポイントが連続して逆転勝ちしちゃったんです。
――凄いじゃないですか!スリーポイントが連続って、三井のようですね。最弱チームが最強チームに勝ったってことですよね?
岸本さん:そうなんです。しかも、僕のいた学校名が「大穴中学校」で。本当の意味で大穴になったんですよ(笑)
――高校に進学してからもバスケットを?
岸本さん:そうですね。また弱小チームだったので、記憶が薄いですね。ちなみに、大学は全国選抜ばかりが集まっていたんでよ。
――急に強くなりましたね(笑)
岸本さん:高校の監督の繋がりで運良く入学させてもらえたので。ただ、辛かったです。身長が177㎝あるんですが、チームでは前から3番目だし。パスのスピードは尋常じゃないし、フィジカルはやたらと強いし。
――全国選抜の集まりですもんね。モンスター集団みたいな。
岸本さん:結局、2年生で辞めてしまったんですよ。バスケット。ここで一回、僕のバスケット人生は幕を閉じたんです。
――その後は、どうしたんですか?
岸本さん:ちょっと早かったんですけど、就職活動をスタートしましたね。それで卒業後はコンサルタント系の会社に就職しました。が、めちゃくちゃブラック企業で…6ヵ月でリタイアして。バスケットを辞めて、仕事も辞めて、自分には何があるんだって考えていたら引きこもっちゃったんです。
――そうなんですね。こんな元気いっぱいな岸本さんからは、想像ができません。
岸本さん:でも、親友がキッカケをくれてバスケットで何かしたいと思えたんですよ。アルバイトでの経験や、今まで自分がしてきて楽しかったことから、バスケットを通じて人が集まれる場所が作りたいなって。
――人が集まる場所というのは?
岸本さん:はじめは漠然とした考えだったので、とにかくコートを作ろうと思ったんです。それで市民プールの跡地に目を付けて、市役所に「市民プールの跡地を買いたいんですけど、いくらですか?」って買いに行ったんです。バカですよね(笑)
――いろいろなインタビューをしてきましたが、飛びぬけて行動が先走ってますね(笑)。それで、いくらだったんですか?
岸本さん:3億円です(笑)。無理ですよね。それで考え直して…なんとなく倉庫ならできるんじゃないかって思い、インターネットで「バスケット、倉庫」で検索したんです。そうしたら運送会社の倉庫を改装してバスケットコートを運営している「nBb-1on1-」が出てきたんです。
――インターネットの検索で出会ったんですね。
岸本さん:それですぐに連絡をして、1日でいいから見学させてもらえないかとお願いしたんです。
――ここにいるということは、OKだったんですね。
岸本さん:そうなんです。千葉から新潟へ、急いで向かう準備をしましたね。着いた時のオーナーの顔は今でも忘れられません。満面の笑みで「よく来てくれたね!」って、めちゃくちゃ歓迎してくれたんです。
――たまたま「nBb-1on1-」を見つけて、新潟に移住することにしたんですね。
岸本さん:いえ、当初は学ばせてもらって千葉でやろうと思っていたんですよ。
――そうなんですね。どうして、今、新潟に?
岸本さん:見学に来た日に、ちょうど100人規模のイベントが開催されていたんです。その手伝いをしていたら、新潟の人たちが温かくて。千葉から見学に来た経緯をオーナーが話すと「新潟においでよ」「一緒にバスケしようよ」と言葉をかけてくれたんです。それが嬉しくて、そのまま働かせてもらえるようお願いしました。ってことで、今年で新潟に来て10年が経ちました。
――10年ですか。もう、立派な新潟人じゃないですか。では、「nBb-1on1-」についてお聞きしていきたいと思います。どんな施設ですか?
岸本さん:「nBb-1on1-」は「新潟 バスケ バカ すべては1対1(人との繋がり)からはじまる」の略称です。バカになれるぐらい、バスケットが好きなバスケ馬鹿が集まる場所です。子どもから大人を対象としたレッスンが基本ですが、フリーでコートを貸したり、3on3の大会「SOMECITY(サムシティー)などのイベントも開催しています。
――岸本さんもレッスンを?
岸本さん:中学生をメインにレッスンをしています。プロを目指している子たちが多いので、本当にバスケ馬鹿ばかりです(笑)
――一度は辞めてしまったバスケット。その経験は指導に生かされていますか?
岸本さん:バスケットとしっかり向き合うキッカケになったと思っています。真剣に上手になりたくて、プロになりたい子どもたちがたくさん通っています。教えているけどちゃんとした知識のない実情を感じ、バスケットをしっかり学ぼうと思わせてくれましたね。バスケットは工夫して考えるとこんなに楽しいんだって、子どもたちに伝えられるように。
――不良の道へ進んでしまったけど、やっぱりバスケットが好きで戻って来た三井みたいじゃないですか!
岸本さん:だといいですね(笑)。昔は、なんとなくバスケットをしていたけど、今は胸を張って「バスケットが大好きです」って言えますからね。
「昔はバスケットが好きじゃなかったんですよね(笑)」と、冗談交じりで進んでいったインタビュー。挫折があってこそ、現在がある。千葉から新潟へ生活を移し、一度は辞めてしまったバスケットを仕事にしている岸本さん。明るい人柄がとても印象的でした。これからの夢についてうかがうと。「あの場所があったから人生が変わった。と、いわれる場所が作りたい」とキラキラした眼差しで語ってくれました。
nBb-1on1-
新潟県新潟市中央区紫竹山1-10-17
025-248-9101