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コーヒーの裏側に隠れた想いを伝える、長岡市「scene coffee roaster」。

  • カルチャー | 2023.04.24

昨年10月、国営越後丘陵公園のすぐそば、長岡市陽光台にコーヒーショップがオープンしました。その名も「scene coffee roaster」。世界各地の農園で作られたスペシャリティコーヒーをメインに、その産地ごとの特徴を感じ、楽しんでもらえるようこだわってコーヒーを提供しているんだとか。お店を営む平山拓弥さん、裕衣さんご夫婦にお話を聞いてきました。

 

 

scene coffee roaster

平山 拓弥 Takuya Hirayama

1988年村上市生まれ。美容専門学校を卒業後、美容師として約8年働く。3年前より長岡のコーヒー店で働きながらコーヒーについて学ぶ。2022年10月に長岡市で「scene coffee roaster」をオープン。

 

scene coffee roaster

平山 裕衣 Yui Hirayama

1988年長岡市生まれ。お店ではお菓子作りを担当している。

 

幼い頃から当たり前にあった「コーヒー」を、仕事にするまで。

——拓弥さんはやっぱり昔からコーヒーがお好きだったんですか?

拓弥さん:幼稚園の頃から毎日コーヒーを飲んでいましたね。まあ、そのときはコーヒー牛乳だったんですけど(笑)。おばあちゃんや親が作ってくれたものを毎朝絶対飲んでいて、大好きでしたね。

 

——小さい頃から生活の中に当たり前にあるものだったんですね。

拓弥さん:それは大人になっても変わらなくて、自分の生活の中で当たり前にあるものでした。だから逆にコーヒーを仕事にするなんて思いもしませんでしたね。実はこのお店をはじめる前は美容師として働いていたんですよ。昔から漠然と自分のお店が欲しいなとは思っていたんですけど……。

 

——美容師さんとして独立しようとは思わなかったんですか?

拓弥さん:将来美容院をやっている自分があまり想像できなかったんですよね。それに技術を褒められるよりも人柄とかを褒められる方が、自分は嬉しくって。そういう、美容師として経験した技術以外のことを生かして、他のことをやってみたいなと思うようになっていきました。

 

 

——それからコーヒーショップをはじめることにしたのは?

拓弥さん:ちょうど全国的にコーヒーショップが増えてきていた頃だったこともあって、僕もやってみたいなと。それで長岡のコーヒー屋さんの求人に応募してみたら採用していただけたので、美容室で働きながら休みの日はそこで働いて、本格的にコーヒーの勉強をはじめました。それが約3年前です。

 

——拓弥さんはコーヒー屋さんで働くようになる前から、自宅でコーヒーを淹れていたんですか?

拓弥さん:ぜんぜん、インスタントのコーヒーを飲んでいましたね(笑)。浅煎りとか深煎りとか、インスタントとレギュラーコーヒーの違いも分からないくらいでした。だけどコーヒー屋さんで勉強するうちに「こんなに奥が深いんだ」と知って、どんどんハマっていったんです。

 

——「コーヒーショップをやりたい」と拓弥さんから相談を受けたとき、裕衣さんは驚きませんでしたか?

裕衣さん:やりたいことがあるってすごいことですし、自分のやりたいことをやるのがいちばんいいかなと思っていました。一緒にお店をやることになるんだろうなとは漠然と思っていましたけど、「私が頑張ればいいや」って(笑)。特に不安もありませんでしたね。

 

豆の味をよく感じられる、生産者へのリスペクトを込めたコーヒー。

——お店のことについても教えてください。

拓弥さん:コーヒー屋さんでお客さんと接客するなかで、コーヒーって誰でも知っているけど、あんまり知られていないことが結構あるんだなって思ったんです。コーヒーを勉強していて生産地や生成方法、豆の加工方法とか、その違いによる個性が面白いなと感じたので、じゃあ自分がそういう面白さを広められるお店をやろうと思ってはじめました。

 

——「あんまり知られていないこと」って、例えば……?

拓弥さん:苦いコーヒーがお好きな方が多いので、お客さんによく「あんまり酸味がないコーヒーがいい」と言われるんですけど、それってコーヒー豆が酸化してしまったときの酸味と勘違いしてしまっていることも多いんですね。本来のコーヒーの酸味って、フルーツの酸味なので。生産者さんが作ってくれている素の味を知ってもらって、その美味しさを広めたいんです。

 

 

——お店に置いているコーヒーにもその思いが表れているんでしょうか。

拓弥さん:そうですね。今はケニアとかコロンビアとか、それぞれの産地ごとに8種類の豆を置いているんですけど、あえてブレンドは置いていないんです。というのも、ブレンドコーヒーってお店の顔になる商品だとは思うんですけど、コーヒーについて何も知らないとブレンドを頼みがちじゃないですか?(笑)

 

——私、まさにそうです(笑)

拓弥さん:ブレンドはそれぞれの産地の個性を組み合わせて作っているものですけど、僕はその前段階の味を知ってほしいと思っているので、産地別でストレートのみ置くようにしているんです。誰でも楽しめるように、苦いものから飲みやすいものまでまんべんなく置いてはいるんですけど、深煎りになりすぎないように、ちょっと特徴を残すようにしています。

 

——豆そのものの特徴をよく感じられるコーヒーが飲めるわけですね。店名に「scene」とつけたのは?

拓弥さん:コーヒーのあるシーンを楽しんでもらいたいっていうのがひとつ。あとはそのシーンの裏側にいる生産者さんとか流通させている人とか、コーヒーに関わっている人たちにリスペクトを持ってコーヒーのある時間を楽しんでもらいたいと思ってつけました。お店のロゴは、シーンを作っている裏側にいろんな人の思いが溶けだすというイメージでデザイナーさんに作ってもらいました。

 

 

——でもやっぱり8種類もあると、どの豆を選ぶか迷っちゃいますね……。拓弥さんのイチオシは?

拓弥さん:僕のイチオシはコロンビアの「エルパライソ農園」というところの豆です。名前に「ライチ」とついているんですけど、ライチの果実感だったり、キンモクセイっぽい甘さだったりを感じられるように複雑な工程を経て作られています。本当に苦くないコーヒーなんです。ぜひ飲んでみてください。

 

——いただきます……すごく香りが華やかで美味しいです! まったく苦くなくて驚きました。裕衣さんのオススメも教えてください。

裕衣さん:デカフェが好きでおすすめです。私、以前はコーヒーが飲めなかったんですよ。それでデカフェなら飲みやすいかなと思って他のお店で頼んでみたら、むしろ苦くって……。だけどここをはじめてからお客さんに「デカフェはありますか?」って聞かれることが多かったんです。それで夫に頼んで、飲みやすいものを作ってもらいました。強い特徴はないんですけど、飲みやすくてごくごく飲んじゃいます(笑)。言われなきゃデカフェって気づかないんじゃないかな。

 

お客さんに、誰かにとっていちばんのバリスタになってほしい。

——最後に、これからどんな思いでお店を続けていきたいですか?

拓弥さん:ここに来てコーヒーの楽しさを知ってもらって、誰かにコーヒーを淹れてあげてほしい、誰かのいちばんのバリスタになってほしいっていう思いがあって。やっぱり家で人が手間暇かけて淹れてくれたコーヒーって美味しいじゃないですか。僕たちでそのお手伝いができたらいいなと思っています。今後は各国の品評会で入賞しているようなグレードの高い豆とかも扱ってみたいなと思いますし、あとは……一生続けられるように頑張りたいですね(笑)

 

 

 

scene coffee roaster

長岡市陽光台4-1379-89

平日12:00-18:00

土日8:00-18:00

定休日 火曜、第2・第4月曜

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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