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生産者の視点を持ってコーヒーを届ける「BERON COFFEE ROASTER」。

  • カルチャー | 2023.10.23

オンラインストアとイベント出展を中心に活動し、自家焙煎したコーヒーを提供している「BERON COFFEE ROASTER(ベロン コーヒーロースター)」。お米農家を営む伊藤さんが自宅の納屋を改装した焙煎所で、日々コーヒーの研究を重ねながら活動しています。今回は新潟市秋葉区にある焙煎所にお邪魔して、伊藤さんのコーヒーへのこだわりや、お米とコーヒーの仕事を続ける中で目指すことについて聞いてきました。

 

 

BERON COFFEE ROASTER

伊藤 久幸 Hisayuki Ito

1980年新潟市秋葉区生まれ。米農家の息子として生まれる。クラブの音響エンジニアを経験した後、グラフィックデザイナーに転職。40歳のときに退職して家業に入り、農業をはじめる。その後、納屋を焙煎所として改装し「BERON COFFEE ROASTER」を立ち上げる。オンラインストアでのコーヒー豆の販売、イベント出店を中心に活動をはじめる。農業チーム「KIKI FARM」の一員としても活動。

 

お米農家と焙煎士。脱サラしてはじめたふたつの仕事。

――伊藤さんは農家さんでもあるんですよね。

伊藤さん:お米農家をやっています。だけど近頃は大規模化しないと農業って厳しくなってきていて、今は、これから全量自分たちで小売ができるように動いているところです。そうすればちゃんと値段がとれるし、農業で生活できるようになるので。

 

――コーヒーの活動をはじめる以前から、お米づくりを?

伊藤さん:いえ、お米とコーヒーと、ダブルスタートです。以前は制作会社にいて、グラフィックデザインの仕事をしていました。脱サラして農業をはじめたんです。

 

 

――脱サラしてお米づくりとコーヒー焙煎を仕事にしようと思ったのは、何かきっかけがあったんでしょうか。

伊藤さん:前からやってみたかったことのふたつだったんです。でも親父も兼業農家ですし、お米の値段も下がっているし、無理があるよなと思って。それなら、今後も食問題はついてまわるだろうし、周りに農業をやっている友人もいるので、まとめて会社にしちゃえば大規模に農業ができるんじゃないかと考えました。

 

――そこではじめたチームが「KIKI FARM」なんですね。

伊藤さん:会社にすればビジネスチャンスも広がるし、やりたいこともやれるんじゃないかなって。そんななんとなくの夢物語ではじめて。それで、「他にも仕事をしなきゃいけないけど、今までやってきたことを生かしてフリーで何かできないかな」と思った矛先が「コーヒー」だったんです。

 

――お米とコーヒーのふたつでやっていくことを決めたわけですね。

伊藤さん:もともとコーヒーが好きで、けっこう深いところまでのめり込んでいたんです。今後の夢があって、農業をやりつつ、直売所を作って、その直売所にはカフェがあって、お米とコーヒーを置いていて、精米もできて……。そんな場所ができたらいいよね、ってチームの共通認識があるんです。今はメンバー各自が同じ製法でお米を作っていて、そのお米を使ったおにぎりを、僕がポップアップをするときにコーヒーと一緒に出しています。だけどまだ会社にはなっていないので、進めていって夢を実現したいですね。

 

大切なのは、現地の生産者と持続可能な関係を築いていくこと。

――伊藤さんが焙煎しているコーヒーについても教えてください。

伊藤さん:最近は浅煎りのコーヒーを焼くことが多いです。というのもコーヒーの特徴的なフレーバーや香りを感じられるのが浅煎りだと思っていて。中煎りとか深煎りで感じるフレーバーもあるんですけど、僕はコーヒーの実の味を感じられるコーヒーを提供したいんです。そのためには浅煎りがいいかなと。そんなことを言いつつ、深煎りもやっているんですけどね。

 

――やっぱり焙煎には伊藤さんの好みが出るものなんですか?

伊藤さん:出ると思いますね。他の方は浅煎りだと華やかできれいなものを出す感じがするんだけど、僕のはもう少し熟したような、浅煎りなんだけど中煎りに近い味になりやすいですね。単純にいえば、優しくて甘くてきれいな酸味を感じるコーヒーがベースではあるんですけど……言葉にしようとすると難しいな(笑)。あとは僕の体感季節で焙煎度合いが変わってきちゃうんですよね。だからうちの定番商品も、夏は浅めな焙煎度合いで、今の季節はちょっと深めの焙煎度合いにしています。

 

 

――コーヒー豆の仕入れにもこだわりはありますか?

伊藤さん:仕入れはトレーサビリティな、農園や生産者の名前が分かる商品を買うようにしています。農園がある現地にはエクスポーターがいて、エクスポーターと農園の間に日本人のインポーターがいるんですよ。その人が「日本人向けにこういう味にしたらどうか」って農園にアドバイスをしているんです。インポーターとは僕もつながっていて、ちょっと面白いことをやってみたことがあって……。

 

――面白いこと?

伊藤さん:コーヒー豆には醗酵させる段階があって、コーヒー豆と一緒にイースト菌やフルーツを入れて、コーヒー豆のぬめりを分解させるんですよ。その段階で違う菌を入れることで、いつもと違う発酵が行われて、変わったフレーバーになるんです。そこで僕は「米麹で発酵を促進させたらどうなるんだろう」と思って、自分が作った米でやってもらったんですけど、腐って終わっちゃいました(笑)。また挑戦するつもりです。

 

 

――次こそはうまくいくといいですね(笑)

伊藤さん:そうやってコミュニケーションをとりながら輸出してもらっているんです。思いを持って面白いフレーバーに挑戦しているような生産者の方と取引をして、そういう方たちの生活を支えて、さらにいいコーヒーを作っていってもらいたい。そういう持続可能な関係を築いていかなければいけないですよね。

 

デイリーに飲める、低価格で品質のよいコーヒーを届けたい。

――ここ数年でコーヒーの味わいがどんどん豊かになってきているような気がするんですけど……実際どうなんでしょう?

伊藤さん:コーヒーの味ってこの10年で大きく変わって、さらにこの5年でだいぶ変わってきた印象があります。またこれからの5年で、コーヒーは違う飲み物になるんだろうなって思います。僕らでも驚くほどフルーティーになってきているし、昔は「ピーチフレーバー」といわれてもほのかに感じる程度だったけど、今のものは「マジでピーチじゃん」ってなる(笑)

 

――そこまでフルーティーになったのはどうしてなんでしょうか。

伊藤さん:農園化が進んでいるところが多くて、全体的に生産技術が高まってきているんです。だから今は面白いフレーバーのコーヒーがたくさんあるんですよね。オレンジフレーバーとか、朝に飲んだら最高だよなって。そういう日常に溶け込むコーヒーを、品質のよいものを低価格で届けたいんです。高級なものも体験としては面白いし、たまにはいいかもしれないですけど、僕は低価格でデイリーに飲めるコーヒーをお届けしたいですね。

 

 

――コーヒーをお仕事にされてみて、いかがですか? やっぱり楽しい?

伊藤さん:そりゃ楽しいですよ。でも難しさも痛感しています。そもそもコーヒーを豆で買って飲む人って、めちゃくちゃ少ないんだなって。家でコーヒー豆を挽いて飲むよさを伝えていきたいですね。お米もコーヒーも、どちらも生活の中に普通にあるものじゃないですか。僕が作っているようなコーヒーが、普段飲むコーヒーの位置付けに入ることを願っているというか。今後を見据えた上で、「こうなったらいいのにな」っていう未来に向かうために準備しているところです。

 

――その「こうなったらいいのになっていう未来」というのは?

伊藤さん:顔の見える生産者から食べ物を買って消費するのって、基本だと思うんですよ。どこの誰が作ったか分からないものを食べるって、やっぱり怖いじゃないですか。だから顔の見える間柄で、出どころがはっきりしている食品が買われるようになったらいいですよね。「KIKI FARM」は「BRING HAPPINESS」っていうスローガンを掲げていて、「喜」がふたつ並んだように見えるのは「双喜紋」という、中国の縁起のいいマークなんです。英語だと「ダブルハピネス」。そんな感じでみなさんとお付き合いしていける未来を作りたいですね。

 

 

 

BERON COFFEE ROASTER

新潟市秋葉区荻島1丁目10-56

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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