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地方の町からアニメ作品を発信する「柏崎アニメスタジオ」。

柏崎にアニメスタジオがオープンして注目を集めています。東京のアニメーション制作会社「スタジオガッツ有限会社」が運営する「柏崎アニメスタジオ」です。このスタジオではアニメ番組の制作業務はもちろん、地元の柏崎と密着したアニメ作品の制作や、アニメスクールの運営もしています。今回は代表の荒尾さんから、柏崎にアニメスタジオを立ち上げた意義について聞いてきました。

 

 

スタジオガッツ有限会社

荒尾 哲也 Tetsuya Arao

1969年千葉県生まれ。美術大学に通っていたが、休学して派遣の仕事に就き、その後「葦プロダクション」「スタジオピエロ」でアニメーション業界へ。2000年に独立して、アニメーション制作会社「スタジオガッツ有限会社」を立ち上げ、2019年に柏崎市で「柏崎アニメスタジオ」を開設する。

 

人脈とガッツだけが武器だった。

——荒尾さんは昔からアニメに興味を持っていたんですか?

荒尾さん:小学6年生のときに「機動戦士ガンダム」が大ヒットして、それから起こったアニメブームに巻き込まれるかたちでアニメにハマっていきました。当時は部屋中にエメラルダスのポスターを貼ったりしていましたね(笑)

 

——では自分でアニメを作ってみたいと思うようになったのは?

荒尾さん:高校時代に紙に描いた絵を8mmカメラで撮影したアニメ作品を作ったんです。セルを使うと高いんでね(笑)。それを文化祭や卒業式で上映したんですけど、僕が「ここで笑わせたい」と思ったところで、全校生徒がどっと笑ってくれたんです。自分の作った作品で、みんなが楽しんでくれていることが嬉しかったんですよね。

 

 

——その体験のおかげで、アニメの仕事をはじめたんですね。

荒尾さん:そうですね。最初は演出を目指してアニメーションスタジオに入ったんですけど、そこでは制作の仕事を任されました。

 

——「制作」ってどんな仕事なんですか?

荒尾さん:ひとことで言えば、アニメ制作の進行を調整する仕事です。予算とかスケジュールを管理して、制作現場が円滑に回るようにするんですよ。よく漫画家の後ろで、イライラしながら時計を見ている編集者が出てくるじゃないですか。あんなイメージです(笑)

 

——(笑)。自分で描きたいとは思わなかったんですか?

荒尾さん:描く側のアニメーターをやるより、制作の仕事の方が自分には向いていると思いました。自分で描くよりも、より多くの作品に関わることができますからね。それと、自分だけで描いていれば自分のカラーでしか作品が作れないけど、自分の代わりに描いてくれる人が10人いれば、10色のカラーで作品が作れるんですよ。

 

 

——いろいろな作品により多く関わりたいっていうことなんですね。それもあって「スタジオガッツ」として独立したんでしょうか?

荒尾さん:自分がサラリーマンに向かないタイプの人間だったというのもありますね。たったひとりきりで「スタジオガッツ」をはじめて、ツールといえばアドレス帳と携帯電話だけでした。でもこのアドレス帳って、自分がアニメ業界で8年間生きてきて培った「人脈」そのもので、僕にとっての大切な「武器」だったんです。創業当初にあったのは「人脈」と「ガッツ」だけでしたね。

 

——なるほど。じゃあ荒尾さんが請けた仕事を、お知り合いのアニメ制作スタッフに発注するスタイルなんですね。

荒尾さん:そうです。アニメ制作にはアニメーターはもちろん、いろいろなスタッフが関わっていますので、膨大なマンパワーが必要になってくるんですよ。だから、アニメーターを育てることの必要性も感じて、作画の子会社や育成スクールを設立したりしました。

 

銀座の真ん中で、コシヒカリは育たない。

——地方にアニメスタジオを作ろうと思ったのは、どうしてなんですか?

荒尾さん:わかりやすく例えるなら「銀座の真ん中でコシヒカリは育たない」っていうことなんです。人間もおんなじで、東京以外の地域で育ったアニメーターには、その土地でしか育たない資質があるんじゃないかって思ったんですよね。それで新潟県にアニメスタジオを作ろうと思ったんです。

 

——どうして新潟県を選んだんですか?

荒尾さん:アニメスタジオの候補地として、いろいろな土地を調べてみたんです。そうしたら、新潟市がアニメやコミックの街として、アニメを推していることがわかったんですよ。だから新潟市を訪れて街を歩いてみたんです。でも僕の印象としては「なんだか東京と変わらないな」っていうものでした。実際はそんなことなく、新潟ならではのものがあるはずなんですが、当時はそこが発見出来なくて……。東京とは違うものを求めてきているのに、同じような街では意味がないと思ったんですよ。

 

——東京とはまったく違ったベクトルの土地を求めていたわけですね。柏崎市はイメージにピッタリだったんでしょうか?

荒尾さん:そうですね。東京にはないものがあると思いました。柏崎の人は柏崎が好き。住民が好きな街なら、それは良い街だ。東京にはそれがない。だから結果が全てであって、そのうち疲弊する。ならば東京から仕事を持ってきて柏崎でやれば?と思いました。

 

——「柏崎アニメスタジオ」のスタッフは、現在何人いるんですか?

荒尾さん東京で育ったアニメーターが2人、移住してきています。「今度、新潟県の柏崎にアニメスタジオを作ろうと思っているんだけど、やってみる?」って話をしたら、やりたいと言ってくれました。

 

 

——「とびだせ!柏崎!!」っていうアニメ作品を作ってますよね?

荒尾さん:そうなんですよ。あれは地元の民間企業にご協力をいただいて作った作品なんです。あと地元新聞で「まちがい探し」を制作させていただいたり、高柳小学校の紹介動画、信越線の解説動画なんかも作らせていただきました。そうした、町ならではの仕事にも参加することで、何らかの化学反応が起こったら面白いと思っています。今後は柏崎を「とびだし」て、新潟県内のいろんな町をモチーフにアニメ作品を作っていきたいですね。

 

 

——それは面白そうですね。あと「アニメスクール」も運営しているようですが。

荒尾さん:はい。アマチュアの方向けに絵の描き方を教えるクラスと、プロのアニメーターを育成するクラスに分かれています。幅広く受講生を募集していますので、いろいろな方に来ていただきたいんですよ。仕事を定年退職された方や、子育てがひと段落した方、どなたでも趣味と実益を兼ねてアニメーターをやってもらいたいんです。

 

——例えば、高齢者でもアニメーターの内職ができるんでしょうか?

荒尾さん:もちろん実力があれば可能です。でも実力はスクールで身につけられますが、そう甘くもないです。

 

——最後に新潟の人たちに向けて、アニメの魅力を教えてください。

荒尾さん:アニメって、老若男女誰もが楽しめる分、非常に手間やお金がかかるものなんです。こんな面倒なことをやっているのって、世界中でも日本くらいなんですよ。だからこそ価値があるんじゃないかと思っています。そんなアニメを作れるスタジオが柏崎にある。そのことを県内はもちろん、全国の人に知ってもらえるように発信していきたいですね。

 

 

柏崎アニメスタジオ

柏崎市三和町8−44 吉澤商会ビル202

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