今年10月、燕市にオープンした「Cafe Batake」。長年飲食のお仕事をされてきた旦那さんと編み物が得意な奥さんが、自宅のガレージを改装してはじめたお店なんだそうです。ラテアートが描かれたかわいらしいカフェラテと、ふわふわのシフォンケーキをいただきながら、高畑さんご夫婦にお話を聞いてきました。
Cafe Batake
高畑 勝博 Katsuhiro Takabatake
1962年燕市生まれ。30歳のときに飲食業界に憧れ、新潟調理師専門学校に入学。卒業後は県内の飲食店グループ会社に就職。2022年10月、奥さんの三恵子さんと一緒に自宅ガレージで「Cafe Batake」をオープン。
Cafe Batake
高畑 三恵子 Mieko Takabatake
1963年燕市生まれ。運動神経がよく、お店をはじめる以前は勝博さんと一緒にテニス、ゴルフ、スキーなどを楽しんでいた。
――おふたりとも燕市のご出身なんですね。
勝博さん:もともと同じ中学校の同窓生だったんです。中学のときはお互いの存在を知らなかったんですけどね。
三恵子さん:共通の知り合いはたくさんいたんですけどね。
――そうだったんですね。おふたりともお店をはじめる前はどんなことをされていたんですか?
勝博さん:私は今年の1月まで会社に勤めていたし、妻は専業主婦でした。
――昔から「いつかは自分のお店をやりたい」という思いがあったんでしょうか。
勝博さん:7年前、私と妻のお互いの父が同じ年に亡くなったんです。そのとき、「自分の人生もそんなに長くないな」「定年になったらどうなるんだろう」「違う道があるんじゃないか」って考えたんですよ。
――ご自分の人生を振り返る機会になったわけですね。
勝博さん:今までサービス業をやっていたので、家族との時間はほとんど取れなかったし、気づけば子どもも大人になっていて……。それで3年くらい前に「残りの人生をもっと楽しくできたらいいな」「違う道に行ってみようかな」と思って、「定年後は自分で何かやろう」と決めたんです。
――ガレージを使ってカフェをはじめることにされたのは?
勝博さん:ずっと飲食業をしていたので、料理も接客も好きなんです。それに自宅のガレージなら、建築費用も抑えられるし家賃もかからないから使えるなって。だけど料理を作るには狭すぎるし、コーヒー屋さんならいいんじゃないかと思ったんですよ。
――なるほど。
勝博さん:妻は編み物が得意なので、コーヒーと編み物のお店をやろうと思いました。でも、知り合いのコーヒーメーカーの方に相談したんですけど、「そんなに甘くないよ」って言われてしまいました。
――あらら……。
勝博さん:ただそのときに、「どうしてもやるなら毎日自分でコーヒー豆を挽いて、淹れて、飲んでみてください」っていうアドバイスもいただいて。コーヒーのことをぜんぜん知らなかったので、あちこちから豆を買って勉強をはじめました。それが3年くらい前です。
――三恵子さんは「こういうお店をやりたい」と勝博さんから相談されたとき、どう思われましたか?
三恵子さん:うちは二世帯住宅だったんですけど、親が亡くなってから1階のキッチンが空いていたんです。使わないと傷んでしまうし、それなら今あるものを生かして何かできればいいんじゃないかなと思いました。庭も見られることがなければ草取りしませんしね(笑)
――新しい挑戦に対しておふたりとも前向きだったんですね。不安な気持ちはなかったんでしょうか。
勝博さん:もちろんありましたよ(笑)。だからこそ他にはない、自分たちにしかできないことを探しましたね。
――こちらではラテアートを描いたカフェラテを提供されているそうですね。
勝博さん:コーヒーのことを調べているときにラテアートの存在を知ったんですよ。そこで家庭用の小さい機械を買ってやってみたんですけど、全然できなくて。そんなときに「長岡のカフェにラテアートがめちゃくちゃ上手いバリスタがいる」って聞いたんです。実際に行ってカフェラテを頼んだら目の前で淹れてくれたんですけど、それがすごく綺麗で、美味しくて……。今思い出しても胸が熱くなるくらい(笑)
――それほど衝撃的な体験だったんですね。
勝博さん:その場で「教えてほしい!」とお願いしたら快く引き受けてくださって、それから月に2回、1年3カ月通って教えていただきました。そこでエスプレッソがどんなものか、カフェラテがどういうものかを学びましたね。本当に感謝していますよ。それからは紹介していただいたカフェをまわって、セミナーに参加したり、個人レッスンを受けたりしました。
三恵子さん:その頃は家でも毎日練習していて、牛乳パックが山のように溜まってね(笑)
――努力の証が山積みに(笑)
勝博さん:のめり込むとそのことしか見えなくなっちゃうんです(笑)。ラテアートを教えてくれた彼ら、彼女たちにはすごく感謝しています。私のことが噂になっていたみたいで、行って話をするとだいたい「聞いています!」って言うんですよ。自分の親ぐらい年の離れている私にも親切に教えてくれてありがたかったですね。
――いい先生たちに出会えてよかったですね。
勝博さん:それからしばらくして、ずっとお世話になっていた方が亡くなって。亡くなる2か月前に電話が来て、「あんたの思うように生きなさい、やりたいようにやればいい」と言われたんです。思い出すと泣けてくるんだけど……。それで心が決まって、定年を待たずにお店をはじめることにしました。
――改めて教えてください。「Cafe Batake」はどんなお店なんでしょうか。
勝博さん:私たちにしかできないお店で、来てくださるみなさんを笑顔にしたい、というのがコンセプトです。妻の作った編みぐるみを飾った店内で、カフェラテとシフォンケーキを味わっていただきたいですね。
――シフォンケーキはどんなきっかけで提供することに?
勝博さん:コーヒーだけだとなかなか厳しいところがあるので、前に焼いたことがあったシフォンケーキを出してみようと思ったんです。あちこちで買って食べたり、焼いている人から話を聞いたりして、ひたすら家で焼きました。少しだけ自信が持てるようになりましたけど、まだまだ難しいですよ(笑)
三恵子さん:調理師免許は持っていても、専門学校は中華の専攻だったもんね(笑)
勝博さん:中華大好きだったからね。昔のことね(笑)
――シフォンケーキはいくつか種類があるそうですね。
勝博さん:1日に2~3種類くらい置いているんです。種類はいくつもあるんですけど、昨日はバニラとチョコとオレンジを出していました。ひとつ食べてみてください。
――ではいただきます!すごくしっとりでふわふわ……甘さ控えめで美味しいです。
勝博さん:カフェラテとの相性を考えて甘さは控えめに作っているんですよ。
三恵子さん:酒飲みのおじさんたちも「うまいうまい」って食べてくれますね(笑)
――お店のあちこちに飾られている三恵子さんの編み物作品、とってもかわいいです。
勝博さん:編みぐるみは「待ってもらえれば作ります」と言ってオーダーを受けているんですよ。
三恵子さん:また来店していただくきっかけにもなるしね(笑)。お店に飾っているとラテと一緒に写真を撮ったり、ちっちゃい子を連れて来られた方が一緒に見てくれたりするので嬉しいですね。お店が軌道に乗ったら、集まって編み物をするような時間も作れたらいいなって思います。
――確かに、ここで編み物教室とか開かれたら楽しそうですね。
勝博さん:本人は「教室じゃなくてクラブだ」って言うんですけどね(笑)。自分としてはラテアートの技術とシフォンケーキの完成度を上げていきたいです。「美味しい」ってリピーターになってくださる方が増えたら嬉しいですね。
Cafe Batake
新潟県燕市秋葉町4-6-34
営業時間:10:30-16:00
定休日:月・火・木