僕らのソウルフード。甘辛い絶妙の醤油タレが絡むタレカツ丼。

新潟のソウルフードのひとつ、タレカツ丼。

カツ丼といえば全国的にはご飯の上に卵でとじたカツが乗った丼ですが、新潟市では薄めのカツを醤油ダレにくぐらせてご飯に乗せた「タレカツ丼」のこと。今回はその「タレカツ丼」を提供し続けている「とんかつ太郎分店」の二代目・馬場良一さんに、味の秘密、タレカツ丼の歴史、たくさんお話を聞いてきました。

 

 

とんかつ太郎分店

馬場 良一 Ryoichi Baba

1964年新潟市中央区生まれ。とんかつ太郎分店二代目。調理師専門学校卒業後、1年ほど飲食店でアルバイトをしたのち、とんかつ太郎分店の父の元で修行を始める。趣味は魚釣り。ラーメンを食べるのも大好きだが現在は体調を考慮して奥さんから止められている。

タレカツ丼発祥のお店からのれん分けした「とんかつ太郎分店」。

——今日はよろしくお願いします。タレカツ丼は「とんかつ太郎」が発祥のお店なんですよね?

馬場さん:そうですね。昭和初期の新潟市中心部は船を使った物資運搬が主流で、あちこちに堀があったそうです。その堀のほとりには様々な屋台が並んでいて、「とんかつ太郎」創業者・小松道太郎さんの屋台もその中にあったんですね。屋台という店舗形態に合わせて、かんたんに調理できて時間をかけず提供できるように、タレにくぐらせたカツをご飯に乗せて提供したそうです。当時はモダンな料理だったカツレツを、ご飯に乗せて提供するというスタイルがウケて人気が出たようですね。

 

——へ〜、屋台で提供されたのが始まりだったんですね。こちらの「とんかつ太郎分店」は「とんかつ太郎」とどういったご関係で…。

馬場さん:古町の「とんかつ太郎」で、私の父が一番弟子として20年間修行していたんです。私の母は本店でタレ作りの担当だったそうです。昭和40年代初期にのれん分けという形で父が独立させてもらったんですね。最初は昭和町の国道沿いで営業していて、昭和59年頃に今の場所へ移転したんです。

 

——歴史があるお店ですよね。老舗ならではのエピソードなどはありますか?

馬場さん:現在は関東で暮らしている新潟出身の人が、うちのタレカツ丼を食べに新潟に帰省して、帰るときもおみやげにタレカツを折箱いっぱい買っていきます。あと、アメリカに住んでるハーフの方が、新潟のおじいさんの家に来るたびに食べに来てくれたりしますね。最近はインターネットのお店情報で調べてくる新規のお客さんも多いですね。うちのメニューには料理写真が載ってないので、メニューを見ながらスマホで画像と見比べて検討したりしています(笑)

 

タレカツ丼の薄いカツと濃いタレの秘密。

——本店や他のお店と比べてカツが薄いのはどうしてなんでしょうか?

馬場さん:よくいわれますね(笑)。一般的にタレカツ丼のカツが薄めなのは、屋台で提供していたということもあって、少しでも早く揚がってお客さんを待たせないようにという理由ではないかと思います。「とんかつ太郎分店」のカツが薄いのは、醤油ダレをしっかり味わってもらえるように薄くしてるんです。豚肉が厚くなると肉の味が強くなり過ぎて醤油ダレの味が目立たなくなってしまうんですね。あと、このくらいの厚さだとサクサクと食べやすいんじゃないでしょうか。

 

——なるほど、そういう理由だったんですね。ではカツを揚げるときに気をつけていることってありますか?

馬場さん:一番気をつけているのは、低い温度で油に入れないってことですね。カラッときれいに揚げるためには、温度の高い油で揚げるようにします。衣を落としたときの音や、はじけ具合で油の温度を測っています。揚げたカツを油から引き上げるときは衣の色を見て判断します。

 

——温度が大事なんですね。甘辛い醤油ダレも特徴的ですよね?何か特別な作り方をしているんですか?

馬場さん:タレは特別な作り方をしていないんですよ。醤油と動物性ダシのスープ、砂糖を材料に作っています。とにかく材料の分量をしっかり守るようにしてます。あと、火にかけているときは煮立たせないように気をつけてますね。煮立たせてしまうと醤油がきつくなってしまい、変なえぐ味が出ちゃうんですよ。

 

——それでキリッとした醤油ダレになるんですね。ところで、タレカツ丼のオススメの食べ方ってあるんでしょうか?

馬場さん:タレカツ丼にはとくにオススメする食べ方はありません。お客さんが好きなように食べてくれればいいと思ってます。ただ、カツがご飯の上に重なっていて食べにくいかもしれないので、カツをご飯の上からふたの上に移動させて、1枚ずつ食べるようにすると食べやすいと思います。

 

——ふたが取り皿の代わりになるんですね(笑)

馬場さん:あと「とんかつ太郎分店」では、タレカツだけお持ち帰りができるんです。そのタレカツを使ったオススメの食べ方はいくつかあります。そのままご飯に乗せてタレカツ丼として食べるのはもちろん、冷めたら玉子とじカツ丼にして食べてもおいしいです。あとカツサンドに使うこともできますし、タレカツを乗せたおにぎりにするとおいしいので試してみてほしいですね。

 

タレカツが乗ったカツカレーともちもち食感のやきめし。

——確かにそれはおいしそう…。ちなみにタレカツ丼以外のトンカツメニューでは何がオススメですか?

馬場さん:カツカレーがオススメです。「とんかつ太郎分店」のカツカレーではただのトンカツじゃなく、醤油ダレにくぐらせたタレカツを使ってるんです。ですので、タレカツの甘辛さがカレーと混ざり合い、複雑な味わいを楽しんでもらえると思います。

 

——どんな味なのか気になりますね。カツ以外のメニューではどうですか?

馬場さん:やきめしでしょうか。玉ねぎ、肉、キクラゲ、グリーンピースといっしょにご飯を炒めて作ります。ラードで炒めているので、ご飯がもちもちした食感になってるんです。やきめしばかり食べていく常連さんもいるほど、ハマる人はハマるメニューですね。タレカツをトッピングして食べるのもオススメです。

 

これからも変わらぬタレカツ丼を提供していきたい。

——馬場さんはトンカツ歴何年になるんですか?

馬場さん:「とんかつ太郎分店」が今の場所に移転してからですので、35年くらい経ちます。調理師専門学校を卒業してから飲食店で1年ほどバイトしていて、「とんかつ太郎分店」が移転オープンするというタイミングでお店に入りました。調理は教わるというより、父の仕事を見ながら覚えるという感じでしたね。

 

——やはり職人の仕事は見ながら覚えるんですね。ちなみに、馬場さんはとんかつ屋さんとして職業病のようなものはありますか?

馬場さん:うーん。外食に行くとついトンカツを注文してしまいますね(笑)。私がトンカツ好きというだけではなく、やっぱり他のお店で提供しているとんかつに興味があるんでしょうね。チェックするというほどではないけど、どんな風に作っているのかは観察しちゃいますよね。

 

——やっぱり気になっちゃうんですね(笑)。新潟名物ということでいろんなお客さんが来店されると思いますけど、お客さんに伝えたいことはありますか?

馬場さん:とにかくお客さんには感謝の言葉しかないです。これからも店の味を守り続けて、変わらぬタレカツ丼を提供していきたいですね。あと、たまに私の顔が怖いといわれてしまうんですが、けっして怒ってるわけではないんです(笑)。料理に打ち込んでいると真剣な表情になってしまうだけで、機嫌が悪いわけではないので安心してご来店ください(笑)

 

 

のれん分けをしたお店で「とんかつ太郎」のタレカツ丼を提供している「とんかつ太郎分店」。まじめなご主人と気さくな奥さんのバランスが、タレカツ丼のタレとカツのバランスのようにも思えました。これからも新潟のソウルフード・タレカツ丼の味を守り抜いていただきたいと思います。

 

 

とんかつ太郎分店

〒951-8153 新潟県新潟市中央区文京町9-18アドラブール文京町1F

025-267-6066

11:00-14:00/17:00-21:00

木曜休


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