皆さんにはお気に入りのお店や、思い出に残っているお店ってありますか? 今回ご紹介する「Café gran(カフェ グラン)」の髙津さんは、20年前に訪れたある和風カフェのお店に憧れて、「私もこんな居心地のいいお店をやってみたい!」と、定年後自らカフェをオープンしました。素晴らしいロケーションのお店の窓から目の前に広がる海を眺め、いろいろなお話を聞いてきました。
Café gran
髙津 良子 Ryoko Takatsu
1958年新潟市中央区生まれ。小学2年生のときに西蒲区間瀬に移り住む。高校卒業後に県職員となり、病院から学校まで様々な職場で事務職を経験。定年退職後は「新潟県友会」を経て2021年に「Café gran」をオープンする。娘の結婚式で弾くためにはじめたピアノが趣味。
——目の前に日本海が見える、とっても素晴らしいロケーションですね。
髙津さん:佐渡島はもちろん、晴れて空気が澄んだ日は能登半島まで見えるんですよ。海に沈む夕日が綺麗に見えるのが自慢です。
——今日はあいにくのお天気で、自慢の夕日を見られないのが残念です。こちらのカフェは昨年オープンしたんですよね。その前まではどんなことをされてきたんですか?
髙津さん:私は高校を出てから定年を迎えるまで、ずっと県職員として事務職をやってきたんです。県立の病院から学校までいろいろな職場のお世話になって、最後は新潟中央高校の事務長をやっていました。
——ずいぶんいろんな所で働かれたんでしょうね。カフェをやろうと思ったのは、定年を迎えてから?
髙津さん:20年くらい前に新潟県庁の財政課で働いていた頃からですね。よくランチでお邪魔していた和風カフェがあったんです。居心地のいい雰囲気やご主人の人柄が大好きで、いつかは自分でもそんな居心地のいいカフェをやってみたいと憧れるようになったんです。
——その和風カフェが「Café gran」のルーツになっているわけですね。
髙津さん:そうかもしれませんね。それからはいつかオープンするカフェのために、カップやアートをコツコツ集めてきました。カフェをはじめることが決まってからは、吉田にあるコーヒーショップで修業して、コーヒーの淹れ方や焼きサンドの作り方を教わりました。サイフォンを使ったコーヒーの淹れ方を勉強してみたかったんです。
——どうしてサイフォンにこだわったんですか?
髙津さん:フィルターを使ってコーヒーを淹れるご家庭はあると思いますけど、サイフォンを使うご家庭ってそんなにないじゃないですか。お店でしか飲めないコーヒーを味わってほしかったんです。
——こだわりのあるコーヒーなんですね。この場所でカフェをやろうと思ったのは、やっぱりロケーションが気に入ったからですか?
髙津さん:そうです。ここは以前更地だったんですけど、散歩で通るたびに「ここでカフェをオープンできたらいいだろうな」って思っていたんです。裏の駐車場と合わせて土地を購入して、大工の主人に建ててもらいました。海が見えるように大きな窓をつけて、カウンター席やテラス席を作ったんです。
——おすすめのメニューを教えてください。
髙津さん:焼きサンドのレシピは修業先のコーヒーショップで教えてもらった通りなんですが、お気に入りのベーカリーから仕入れた発酵バター入りのパンを使っているんです。あとナポリタンには隠し味として赤ワインを使っていますね。メニューをもっと増やしたいんだけど、コンロの数が少ないから作れる料理に限りがあるんです。今後はカレーも作れるようになるといいんですけどね。
——ところでずっと気になっていたんですけど、店内にある「誰でもピアノ」ってなんですか?
髙津さん:その名の通り、誰でも弾いていただけるピアノです。ときどきストリートピアニストやオペラ歌手がいらっしゃって、弾いてくださることもあるんです。そんなときに偶然居合わせたお客様はラッキーだと思いますね。あるときはカップルで来ていたお客様が「誰でもピアノ」を見つけて、男性が車のなかからチェロを取ってきたんです。女性がピアノを弾いて、ふたりで「アヴェ・マリア」を演奏してくれて、聴いていた全員が震えるほど感動していました(笑)
——ピアノひとつで、いろいろな物語が生まれるんですね。
髙津さん:物語といえば、もうひとつ「幸せの椅子」も紹介させてください。「じょいあす新潟会館」の結婚披露宴で使われていた新郎新婦の椅子を、閉館する際に譲ってもらって、秋冬シーズン限定で「幸せの椅子」として使っているんです。
——そこに座ると幸せのおすそ分けがあるんでしょうか。
髙津さん:近くで車が故障して、修理の人が着くまで休んでいった県外のカップルがいたんです。その後正式にお付き合いをはじめたという報告があったので、とっても嬉しかったですね。
——それは素敵なエピソードですね。ロケーションもいいし、カップルのお客さんが多いんでしょうか?
髙津さん:老若男女、カップルで来られるお客様がいますが、ひとりでいらっしゃる年配の方も多いですね。 喫茶店がどんどん減っていって、年配のお客様が落ち着いてコーヒーを味わえる場所がなくなってきているんですよ。私が県庁で働いていた頃に通っていた和風カフェみたいに、お客様が居心地よく過ごせるお店にしていきたいです。
——なるほど。
髙津さん:あとは地元の方々に愛されるお店にしていきたいです。間瀬には地元の方が気軽に立ち寄れるお店が少ないんですよ。だから間瀬関係の本を置いたりして、地元の方がゆったり過ごせる工夫をしています。地元以外の場所から来られたお客様にも、間瀬の情報を発信していきたいですね。
Café gran
新潟市西蒲区間瀬4353-1
0256-78-8646
11:00-18:00
木金曜休