いい食材を使えば、自然と美味しい料理ができる。新発田の「CERISIER」。
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2021.09.03
新発田市に「真野の桜並木」と呼ばれる桜の名所があります。そのすぐそばに「CERISIER(スリズィエ)」という完全予約制のフレンチレストランが、今年の5月にオープンしました。どんな思いやこだわりでオープンしたお店なのか、オーナーシェフの花野さんにお話を聞いてきました。


CERISIER
花野 洋一 Yoichi Hanano
1977年新発田市生まれ。東京の辻調理師専門学校卒業後、都内やニューヨークのレストラン、ホテルで修行を積み、神奈川でフレンチレストランをオープン。2021年に地元の新発田市に戻り「CERISIER」「Cafe546」をオープンする。仕事も兼ねて国内外を旅行して食べ歩くのが趣味。
東京で一番厳しいフレンチレストランを選んで修行。
——遊歩道もあって、とても緑の多い場所ですね。セミ採りしている子供をひさびさに見ました。
花野さん:あれは桜の名所として有名な「真野の桜並木」なんですよ。オープンしたのが今年の5月だったので桜の開花シーズンは終わっていたんだけど、夏のあいだは涼しそうな緑を楽しむことができました。これから秋は紅葉、冬は雪景色が楽しめるのかな。来年の春に桜が満開になるのが楽しみです。ちなみに店名の「CERISIER」もフランス語で「桜」っていう意味なんですよ。
——そんな景色を眺めながらフレンチが食べられるなんて贅沢ですね。花野さんはいつ頃からフレンチの料理人をやっているんですか?
花野さん:調理師専門学校を卒業してすぐ、東京のホテルにあるフレンチレストランに勤めました。
——専門学校ではフレンチを勉強したんですか?
花野さん:そうですね。でも最初は日本料理をやろうと思っていたんですよ。
——それはどうして?
花野さん:料理のバラエティー番組やアニメ番組をテレビで見ていたのが影響しています。とくに『料理の鉄人』に出てくる道場六三郎さんに憧れていたから、日本料理をやりたいと思っていたんです。
——それが、どうしてフレンチをやることになったんでしょう?
花野さん:当時はフレンチがどんな料理なのか想像できなくって、とても興味が湧いてきたんですよ。世界各国でおもてなしの席に使われるのって、だいたいフレンチなんですよね。

——詳しく知りたくなったんですね。最初に修行したホテルのレストランはいかがでした?
花野さん:東京にあるフレンチレストランの中で、一番厳しいところを選んで修行したんです。仕事もハードで大変で、先輩たちがとにかく厳しかったんですよ。
——どうして、わざわざそんな厳しい職場を選んだんですか?
花野さん:それ以上厳しい職場はないわけだから、そこを耐えられたらあとはどこでも通用すると思ったんですよ。一度新潟に戻ったんですが、そのあいだにプロティンを飲んで体を鍛えて、また東京の別な厳しい店で修行をしました。
——あえて厳しい環境に身を置いたわけですね。その後はどんな修行をしてきたんでしょうか?
花野さん:ニューヨークのフレンチレストランで修行をしたり、シェフとして表参道にあるふたつの店舗を掛け持ちで任されたりしていました。最後はホテルで料理長を経験して、ひと通り修行させてもらったので独立して自分の店を始めたんです。

安心できる地元の食材を使って、健康的な料理を。
——修行した後は新潟に帰ってきたんですか?
花野さん:いいえ、神奈川でフレンチレストランをやったり、商業施設内で切り売りピザの店をやったりしていました。
——新発田市で「CERISIER」をオープンすることになったのは?
花野さん:神奈川でフレンチレストランをやっているときに、地産地消の素晴らしさに気づいたんです。そこで生まれ育った新発田市の美味しい食材を、今まで身につけてきた知識や技術を使って料理して、全国に発信したいと思うようになったんですよ。

——それじゃあ、使っている食材は地元で採れたものばかりなんですね。
花野さん:手に入るものは、できるだけ地元のもの……それも誰が作ったのかちゃんとわかる農産物を使うようにしています。本当は食材の調達も自分でやりたいと思っているんですよね(笑)。安心できる食材を使って、身体にいい健康的な料理を作っていきたいと思っているんです。
——「食材の調達も自分でやりたい」っていうのは、どういうことなんですか?
花野さん:例えば塩です。フレンチって塩で味が決まるんですよ。だから地元の海から海水を汲んできて、自分で塩を作っています。時間をかけて海水を大鍋でゆっくり炊くことで、結晶の大きな食感のいい塩ができるんです。ミネラルもたっぷり含まれていて、とっても美味しい塩なんですよ。

——へ〜、塩まで Made in 新発田なんですか!他にも自家製の食材はあるんでしょうか?
花野さん:オリーブやハーブ類は自家栽培しています。あと狩猟免許も取得したので、自分で獲った肉でジビエ料理を作ってみたいと思っていますし、魚も自分で獲ったものを使いたいので一般船舶免許も取得する予定です。卵を産んでもらうために鶏も飼おうと思ったんだけど、周りから反対されたので諦めました(笑)。今はバナナの栽培に挑戦しています。

——おぉ、なんでも自分で栽培したり調達したりしたいんですね(笑)
花野さん:そうすれば確実に安全な食材だってわかるじゃないですか。自分が納得できる食材を使えば、自然と美味しい料理ってできるもんなんですよ。だから素材の味を引き立てるように調理するよう心がけていて、砂糖なんかも使わずに野菜の甘みだけで料理を作っています。

——地元の食材では、野菜以外にどんなものを使っているんですか?
花野さん:肉は新発田牛や紫雲寺で飼育されているパイオニアポークを使っています。その肉を使った燻製や塩漬けはすべて自家製なんです。魚は友人が釣りたてを持ってきてくれるので、鮮度のいいものを使うことができますね。まわりの人たちには色々助けていただいています。

——なるほど。ところで、お店は完全予約制なんですよね。
花野さん:はい。地元の食材を大切に使いたいので、食品ロスを出したくないんです。ひと組ひと組のお客様のためにしっかり仕込みをして、集中して料理を作りたいとも思っています。中にはテリーヌみたいに3日間かけて作る料理もありますから。そういった意味で完全予約制にさせていただいています。アレルギーや好き嫌いのあるお客様は事前に伝えてほしいですね。

海水から塩を精製しているっていうだけでも驚きなのに、今後は肉や魚も自分で獲ったものを使いたいというこだわりぶりには頭が下がりました。そんなこだわり食材を使ったフレンチを、満開の桜並木を眺めながら味わってみたいですね。
CERISIER
新発田市真野原546
070-4293-6531
月火曜休
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