どんな人にも、飲みやすい一杯を。
鳥原にある「COFFEE KATAOKA」
カルチャー
2026.04.08
西区鳥原の住宅街にある「COFFEE KATAOKA」。新潟や東京で編集のお仕事をしてきた片岡さんがはじめた、どんな人でも気軽にコーヒーを楽しめるお店です。今回はお店にお邪魔して、片岡さんのこれまでのことや、お店のこと、コーヒーのことなど、お話を聞いてきました。取材中もご近所の方がふらっと入ってきて、片岡さんと会話をするひとコマもあり、のんびりとした雰囲気がとても心地よかったです。
片岡 樹
Tatsuki Kataoka(COFFEE KATAOKA)
1993年新潟市生まれ。農家の家系に生まれ、学生時代はサッカーに打ち込む。大学卒業後、雑誌編集業を経て上京し、都内のコーヒーショップでバリスタとしての経験を積む。その後新潟に戻り、2025年12月に「COFFEE KATAOKA」をオープン。お菓子担当を探し中。
雑誌の編集から、コーヒーの道へ。
コーヒーは、日々の生活の癒しだった。
――今日はよろしくお願いします! お店があるエリアは「鳥原(とっぱら)」っていうんですね。
片岡さん:馴染みのない方もいるかもしれませんね。この場所はもともと、僕のおばあちゃんの農機小屋があった場所なんですよ。せっかくなので、元の小屋っぽさを活かしてお店の内装を作ってもらって、近所の人にふらっと立ち寄ってもらえるような雰囲気が残るようにしました。ここが小屋として使われていたときも、おばあちゃんが作った野菜を近所の人に販売していたんです。
――窓代わりに使われている波板からは小屋っぽさを感じます。
片岡さん:きれいに整えすぎないほうが、肩肘張らずに来てもらえるかなと思って。小屋をカフェにした事例は日本にあまりなかったので、事例の多い東南アジアのカフェを調べて、お店の中の見た目を作っていきましたね。お店の壁を漆喰にしたり、植物を多めに置いているのも、東南アジアのカフェに影響が大きいですね。
――ところで、片岡さんはどうしてお店をはじめることに?
片岡さん:前は新潟で『Pas magazine』の編集の仕事をしていたんです。休刊してからは、上京して編集の仕事をすることにしました。でもそこはデザインやブランディングをする会社で、アシスタントディレクターとしてリサーチをしたり記事を書いたりしていたんですけど、なかなか激務で。そんな生活の中で、コーヒーが唯一の癒しだったんです。
――コーヒーが癒し、といいますと?
片岡さん:東京に行ってから、仕事に追われて人と話す機会もあまりなかったんです。そんな中で、コーヒーと焼き菓子を買うときに、店員さんと話している時間がすごく楽しくて。そのコーヒー屋さんが求人を出していたので、応募して、そこで働くことにしました。
――その後、新潟に戻ってきます。
片岡さん:実家が農業をしていたのですが、父が病気で倒れてしまったので、農業を手伝うために新潟に帰ってきました。農作業がひと段落した後、父が亡くなって、家業として農業は終わりになって。また仕事を探しはじめて、地域課題などに取り組むデザイン会社に入社しました。そうしたら「イベント用のキッチンカーがあるから、名刺配りや営業も兼ねて、コーヒーを販売してきて」って言われて、キッチンカーでコーヒーを淹れはじめたんです。
――思わぬところで、コーヒーと関わることになったんですね。
片岡さん:そしたら、コーヒーのほうが楽しくなっちゃって(笑)。コーヒー屋さんがあることで、その地域のためになっているんじゃないかって思いはじめて、その後会社をやめてコーヒー屋さんをすることに決めました。


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気づいたら、飲み終わっている。
毎日飲めるような、飲みやすい一杯。
――昨年「COFFEE KATAOKA」をオープンされました。
片岡さん:2023年には、この場所でお店をやるって決めていました。でも、年明けに地震が起こって、その影響でお店の工事がなかなか進まなくて。去年の夏にようやく工事がはじまって、冬にお店をオープンすることができました。それまでは枝豆農家さんのお手伝いをしたり、他のコーヒー屋さんで働いたり、旧三越前の「み〜つ」でコーヒーを入れたりしていましたね。
――こちらではスペシャリティコーヒーを楽しめますが、スペシャリティコーヒーがどんなものが、いまいちピンときていません……(笑)
片岡さん:スペシャルティコーヒーって、お米で例えると、「新潟の、どの地域で、〇〇さんが、どこの田んぼで作ったコシヒカリで、等級も1等で、美味しい」みたいな。誰がどこで作った、どんな品種の豆なのか、生産や加工、流通などの過程でしっかり品質が管理され、味も評価基準をクリアしているようなコーヒー豆です。
――すごくわかりやすいです。でも、それを知るとちょっと身構えてしまうかもしれないです。
片岡さん:確かに、とてもいいコーヒー豆だと一杯の値段が高いところもあります。でも、ここはすごくローカルなお店なので、近所の人にふらっと立ち寄ってもらえるような、使いやすいお店にしたかったんです。だから、スペシャリティコーヒーだけど、日常で気軽に飲めるような味わいと価格のものを選んでいます。
――毎日飲めるようなスペシャリティコーヒー、というわけですね。
片岡さん:「なんか飲みやすい」っていうコーヒーを自分なりに探して選ぶようにしていますね。毎日飲めるような、気がついたら飲み終わっているようなコーヒーをここで提供できたらいいな、と思っています。
――お店にはカルチャー誌も結構置かれていますよね。これは読んでもいいんですか?
片岡さん:もちろんです。読みながらコーヒーを飲んでもらえたら、と思って置いています。ひとりでコーヒーを飲んでいるときって、手持ち無沙汰になることがあると思うんですよ。そのときに、スマホを見ながら飲むのも、なんだか切ないなと。ここに置いているのは僕の私物なので、ラインナップをみたらなんとなく僕のことが分かってもらえるかもしれません(笑)


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目の前の人のために、仕事をする。
片岡さんが目指す、コーヒー屋のあり方。
――編集のお仕事をされてきた片岡さんは今、コーヒー屋さんになっています。
片岡さん:雑誌の編集をしているときも、今も、目の前の人に自分の届けたいものが届いていたらいいなと思うんです。それが、雑誌からコーヒーになっただけというか。昔は「自分が書いた雑誌で世の中に影響を与えるんだ!」みたいに意気込んでいたこともあるんですけど、雑誌って誰が読んだかっていうリアクションが分からなくて。それからは、自分が取材した人に喜んでもらうために頑張る、っていうふうに考えるようになったんです。
――目の前の人を喜ばせたい、と。
片岡さん:そうそう。仕事の休みの日にコーヒー屋さんに入って、バリスタさんとお話をしただけで、すごく心が軽くなったっていう経験を僕自身もしているので。それを経験したからこそ、目の前の人のために頑張ろうって思えたんです。それは編集をしていたときも、今も変わらず大事にしています。
――とても素敵な考え方です。片岡さんのこれからの目標を教えてください。
片岡さん:まずはこのままお店を続けていって、もっと気軽に、近隣の方々にも使ってもらえるお店になっていきたいですね。ここでお店をはじめる前、最初は「ここでコーヒー屋はできないんだろう」と思っていたけど、「できるかも?」と可能性を感じはじめました。だって、コーヒーってインスタントのものを飲んだり、コンビニで買って飲んだりする人も多いじゃないですか。それは世代を問わないし、繁華街でも住宅街でも同じだと思ったから。ここでは、近所のおじいちゃんも、SNSで気になって来てくれた女性も、赤ちゃん連れのご家族も、同じ空間で、同じようにコーヒーを飲んで過ごしています。世代の垣根がないことがうちの特徴のひとつなのかなって思います。これからも、美味しいコーヒーを淹れられるように頑張って、近所のおじいちゃんに飲み続けてもらうことが、いちばんの目標ですかね。


COFFEE KATAOKA
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