藤井道人監督作品「青の帰り道」。新潟でリバイバル上映。

映画のコト、表現のコト。舞台挨拶にやってきた映画監督にインタビュー。

新潟市中央区・万代シティにある「新潟・市民映画館 シネ・ウインド」で、7月27日、藤井道人監督作品「青の帰り道」リバイバル上映の舞台挨拶が同日2回に渡って開催されました。本作は若手俳優7人が演じる青春群像劇。東京、大阪、京都などの主要都市をはじめとした映画館で上映され、ついにここ新潟でも。今回は監督自ら壇上で舞台挨拶を行うとあり、Things編集部、ここぞとばかりに浮足立って取材を敢行。この作品にまつわる想いを藤井監督本人にたっぷりと聞いてきました。

 

BABEL LABEL

藤井道人 Michihito Fujii

1986年生まれ。東京都出身。映像作家、映画監督、脚本家。BABEL LABELを映像作家の志真健太郎と共に設立。日本大学芸術学部映画学科脚本コース卒業。脚本家の青木研次に師事。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』でデビュー。以降、『7s/セブンス』などの作品を発表する一方で湊かなえ原作ドラマ『望郷』、ポケットモンスター、アメリカンエキスプレスなど広告作品も手がける。2017年Netflixオリジナル作品『野武士のグルメ』や『100万円の女たち』などを発表。2019年『デイアンドナイト』『青の帰り道』『新聞記者』公開中。

 

7人の若者。群馬県前橋市と東京を舞台に描いた群像劇。

人生の大きな分岐点である高校卒業のタイミング…進学したり、就職したり、何かを夢見て上京したり。高校卒業を迎え、それぞれに大人の階段を上り始めた7人の若者たち。それから3年、再び戻ってきた“あの場所”で、彼ら彼女らの胸に宿る思いとは…。群馬県前橋市と東京を舞台に、それぞれの人生が交錯し、過去の思いと葛藤をしながら進んでいく青春群像劇「青の帰り道」。

 

「ハロー!プロジェクト」よりソロ歌手としてデビューした真野恵里菜をはじめ、清水くるみ、横浜流星、森永悠希、戸塚純貴、秋月三佳、冨田佳輔らが出演した本作。昨年12月7日から全国30館以上の劇場で公開され、現在、約20館でリバイバル上映されているこの青春群像劇について、藤井道人監督本人にインタビューしてきました。

 

Ⓒ映画「青の帰り道」製作委員会

どんな不細工な人生であっても、それでいい。自分にしか決められない人生。

――昨年の冬に公開となったこの映画が、現在、リバイバルという形で各都市で再び上映されていますが、その理由をまずはお聞きしていいですか?

藤井監督:「青の帰り道」は、夏が舞台のストーリーとなっていますが、いろいろな事情が絡み合い公開は真逆の冬となってしまいました。しかも公開期間は3週間程度と満足がいくものでもなく…。「観たいのに終わってしまった…」という声も多く届いたので、自分たちの力で何かできないかと思い、自ら劇場に営業をしてリバイバル上映をスタートしました。

 

――今日もたくさんの方が映画館に足を運ばれていましたね。本作の原案は、元モノマネタレントのおかもとまりさんだとお聞きしました。どのようなキッカケで、映画化となったのですか?

藤井監督:2016年に台北に留学していたことがあって、その時に盟友でもあるプロデューサー・伊藤主税さんから、おかもとさんの話を聞きました。親友を自死によって失った経験、「生きる道はひとつじゃない」ってことを伝えられなかった後悔。それに共感して、一緒に映画を作りましょうと、制作がスタートしました。

 

――どのような点で共感されたのですか?

藤井監督:僕も友人を自死によって失っています。自死というものは答えがなく、残された人はやるせない思いを抱えて、どう消化していいものなのかと日々葛藤を繰り返していると思うんです。表現として自分には映画というものがあります。いつかこの思いや感情、考えを伝えられる作品が作れたらと思い、「なぜ、生きることを諦めてしまったのか」というテーマで、男性5人の物語を書いていたんです。おかもとさんも同じ思いをして、作品として多くの人にメッセージを伝えたいとの思いがあったので通じるものがありましたね。

 

 

――藤井監督も同じような気持ちを経験したのですね。この作品を通して、伝えたいこと、考えてもらいたいことはありますか?

藤井監督:映画を観て何かを思ったり、考えることは観客次第だと考えているので、「絶対やめよう、自殺!」みたいな説教がましいことはしたくないんです。だから、「どんな不細工な人生であっても、それでいいじゃないか」と自信を持てるように、自分は自分と感じてもらえたら嬉しいとは思っています。自分が生きてきた人生を肯定できる映画になれたら、素敵だなって。

 

――自分は自分。そんな考えに至るまでに、藤井監督ご自身、もがき苦しんだ経験があるのでしょうか?

藤井監督:「自分も売れたい!評価されたい!」とか、いろいろあります。その理想に対して現実に、こんなはずでは…と悩むこともあります。ただ、それは“たられば”の話なんですよね。自分の人生は、自分でしか決められません。なったことや起きたことをただ悲観するのではなく、新しい人生があると考えたり、肯定できる方がいい。この作品がそんな映画になれたらと思います。

 

コウタのシーンには続きがあった。居酒屋での大喧嘩。

――藤井監督、おかもとまりさんの気持ちや考えは、どのようにして表現しましたか?

藤井監督:「こういう人生もあるんだ」と感じてもらえるように、主観的に誰かの人生を追うのではなく、多面的に客観的に、ある意味で感情をのせないで、キャラクターたちとの距離感を保ちながら表現することを重視しました。演出する側はどのキャラクターにも肩入れしないように。そうすることで、観客はいろいろな角度から感情移入して観てもらえると思います。

 

――ネタバレしない程度に、思い入れのあるシーンを教えてください。

藤井監督:もう、ネタバレしても大丈夫だと思うので(笑)。全編を通して思い入れはありますが、とくに「葬式シーン」「ラストシーン」ですかね。

 

――「葬式シーン」は、どのような思い入れが?

藤井監督:葬式って、今まで見て見ぬふりをしてきたものが露呈される場だと思うんです。都合よく振舞っているやつがいたり。いろいろな人の感情がぶつかり合ったり。先ほどお話したように、僕は自死によって友人を亡くしています。自分の場合は葬式ではありませんでしたが、何回忌かのとき、お酒を飲んでいる席で友人たち数人と大喧嘩したことがありました。劇中では、戸塚純貴が演じるコウタが激昂するシーンですね。抑えきれない感情が爆発してぶつかりあう様子を、俳優たちがしっかりと感情を乗せて演じてくれたので、嘘のないシーンが撮れました。本当に感謝しています。

 

 

――ご自身の体験と重ね合ったシーンなんですね。

藤井監督:そうなんですよ。ただ、現実では続きがあって。みんなで正直な気持ちを話して、号泣するんです。すべてをさらけ出すというか、人間らしさが全面に出たというか。作品では描きませんでしたけど、元となったストーリーが存在するんです。

 

――「ラストシーン」についても教えてください。

藤井監督:過去から来た道を逆方向に進んで、昔の自分たちと対峙するシーン。あの日は戻ってこないけれども、前に進んでいく。進んで行かなければならない。過去は過去として、この表現は一番してみたかったとても思い入れのあるシーンです。って、めちゃくちゃネタバレですよね(笑)。

 

 

『エターナル・サンシャイン』からはじまった、映画人生。

――藤井監督は、どのようなキッカケで映画の世界に入ったのですか?

藤井監督:高校時代に「1日1つ何かをしよう」と友人と話したことがキッカケです。映画の道がはじまったわけではありませんが、毎日1本の映画を観ることにしていたので、それから映画が本当に好きになりました。この「1日1つ何かをしよう」がなければ、映画監督にはなっていなかったかもしれませんね。

 

――毎日1本ですか。どのような映画を選ばれていましたか?

藤井監督:はじめはアメリカンコメディーばかり観ていましたが、段々と欲が出て芸術家を気取ってシネマ系に手をだしてみたり、最終的にはヨーロッパやアジアの映画に行き着きました。

 

――相当な数の映画を観てこられたと思いますが、マイフェイバリットは?

藤井監督:高校3年生のときに観た映画で、日本大学芸術学部に進学しようと思ったキッカケになったミシェル・ゴンドリー監督「エターナル・サンシャイン」(2004)です。脚本、いわばストーリーに感動して、心を奪われた作品。この1本が映画人生のスタートですね。

 

――記憶を消す手術をする物語ですよね。最後に、これからの活動について教えてください。

藤井監督:僕は台湾3世なんですよ。それが理由とはいいませんが、本能的に「アジアで映画を撮りたい」と漠然と思っていました。それもあって最近、35歳までにアジアで撮ることを目標に「BABEL ASIA」というアジアを中心に活動するユニットを結成しました。これから精力的に活動していく予定です。ゆくゆくは「日本の藤井」ではなく「アジアの藤井」となれるよう、その準備段階ですね。日本だけでなく、台湾、韓国、中国などのアジアで、自分自身の表現をお伝えできたらと思います。

 

Ⓒ映画「青の帰り道」製作委員会

 

 

『青の帰り道』

真野恵里菜、清水くるみ、横浜流星、森永悠希、戸塚純貴、秋月三佳、冨田佳輔、山中崇、淵上泰史、嶋田久作、工藤夕貴、平田満

主題歌:amazarashi「たられば」

監督:藤井道人

原案:おかもとまり

脚本:藤井道人/アベラヒデノブ

制作プロダクション:and pictures

製作協力:BABEL LABEL/プラスディー

配給:NexTone

配給協力:ティ・ジョイ

再上映配給:BABEL LABEL/ボタパカ/and pictures

 

 

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