Things

町屋でステーキやすき焼きを堪能できる「村上牛専門料理店 江戸庄」。

城下町の風情が感じられて観光客に人気がある「越後村上町屋通り」。その通りをひとつ曲がった路地にあるのが、古い旅籠の面影を色濃く残す「村上牛専門料理店 江戸庄(えどしょう)」です。立派な暖簾のかかった格式ある佇まいにちょと躊躇していると、気さくな人柄の女将さんが優しく出迎えてくれました。

 

 

村上牛専門料理店 江戸庄

室橋 ひろこ Hiroko Murohashi

1963年村上市生まれ。四代目女将。東京や大阪の会社勤めを経て新潟へUターン。結婚を機に2001年から「江戸庄」で働く。特撮技術を使った映画が好きで、お気に入りの作品は「ライトスタッフ」。

「江戸庄」という屋号に秘められた、意外な事実。

——とても素敵な佇まいですね。

室橋さん:ありがとうございます。ここは以前旅籠だった建物なんですよ。井戸掘りを商いにしていた祖先の庄太郎が、昭和25年に一杯飲み屋を開いたのが「江戸庄」のはじまりなんです。

 

——井戸掘りの庄太郎さんが、どうして飲み屋を?

室橋さん:ハンター仲間としょっちゅう獲物で一杯やっていたので、自分たちが気兼ねなく飲むことのできる場所として店を開いたそうです(笑)

 

——村上牛専門店の創業が、まさかそんないきさつだったとは……(笑)。店名に「江戸」とついているので、庄太郎さんは東京に由来のある方なんですね。

室橋さん:いえ、井戸掘りの庄太郎だから「井戸庄」という屋号だったんですが、訛って「江戸庄」になったんです(笑)

 

 

——それまた衝撃の事実ですね(笑)

室橋さん:「村上牛専門料理店」として営業をはじめたのは主人の代からで、その前はずっと食堂として営業を続けてきたんです。ラーメン、そば、丼物をお出ししていて、出前もやっていました。近所の警察署へも出前していたそうです。

 

——「村上牛専門料理店」として営業するようになったのは、どうしてなんですか?

室橋さん:食堂の頃から村上牛を使った料理を提供していたんですが、村上牛が注目されるようになるにつれて観光客からの需要が増えてきたので、2004年あたりから「村上牛専門料理店」として営業することにしました。

 

——そうだったんですね。

室橋さん:「平成18年豪雪」の際に建物が被害を受けたこともあって、ちょうどその前からはじまった「むらかみ町屋再生プロジェクト」に合わせて改装をしたんです。主人は町屋の雰囲気を壊さないような内観にこだわっていて、毎週のように大工さんや設計士さんと打ち合わせをしていました。

 

村上牛専門料理店で、いちばん人気の料理とは。

——こちらでは、どんな料理をいただくことができるんでしょうか?

室橋さん:村上牛のステーキをはじめ、すき焼きやしゃぶしゃぶをお楽しみいただけます。より豊かな味わいを楽しんでいただける、ワインとのペアリングもおすすめですね。ワインは5大シャトーのセカンドラベルも揃えています。

 

——どれも美味しそうですが、調理の際はどんなことにこだわっているんでしょう?

室橋さん:良質な肉だけで充分美味しいので、余計なことはせず素材そのものを生かすようにしています。お米はもちろん、地元の岩船産コシヒカリです。

 

 

——味や食感を引き立てる調理を心がけているんですね。ちなみに、村上牛ってどんな特徴があるんですか?

室橋さん:村上牛は、村上地域の豊かな自然のなかで、主にコシヒカリの稲わらを飼料として育てられた黒毛和牛なんです。霜降りが多くて甘みのある、とろけるような味や食感が特徴で、数々の受賞歴があります。おかげさまで当店も「ミシュランガイド新潟2020」のミシュランプレートに選ばれたんですが、コロナ禍ということでパーティーもなかったんです。

 

——それは残念でしたね。では、お店でいちばん人気がある料理を教えてください。

室橋さん:すき焼きには根強いファンがいますね。最初だけ砂糖と醤油で村上牛を焼いて、2枚召し上がっていただいたら、後は割り下で味わっていただくんです。ありがたいことに「すき焼きは江戸庄と決めている」というお客様も多くて、転勤先から里帰りするたびにご来店くださる方もいます。

 

田舎のおせっかいおばちゃんでいたい。

——女将さんは「江戸庄」で働く前は、どんなお仕事をされていたんですか?

室橋さん:東京の運送会社や大阪の販売会社で事務をやっていました。飲食業はまったくやったことがなかったんですよ。

 

——なんだか意外ですね(笑)

室橋さん:ずっと立ちっぱなしの仕事が、慣れるまでは辛かったです(笑)。以前は夜も営業していたので、地元の常連さんが飲みにきていたんです。会話が盛り上がってお酒を勧められることもありましたが、主人から「仲間じゃなくてお客様なんだから」と咎められていました(笑)

 

 

——しっかりしたご主人ですね(笑)

室橋さん:その主人が11年前に亡くなってからは、私が店を切り盛りしています。主人の調理を手伝って間近で見てはいたものの、ひとりで調理したことはなかったので、慣れるまでは大変でしたね。うっかり油断して肉を焼き過ぎたり、肉を薄くスライスするのが上手くいかずに腱鞘炎や肩こりになったりしました。

 

——大変なご苦労をされたんですね。

室橋さん:3人の子どもの誰かが、店を継いでくれるまでの中継ぎのつもりで頑張っています(笑)。店を継がなくても構わないし、違うお店をはじめてもいいとは思っているんですけどね。

 

——それはもったいない。村上を訪れる観光客のためにも、「村上牛専門料理店 江戸庄」を長く続けていただきたいです。

室橋さん:頑張ります(笑)。普段は、村上へ観光にいらっしゃったお客様から何か質問されてもお答えできるよう、常に地域の情報を入れるように心がけているんです。村上の魅力をどんどん伝える「田舎のおせっかいおばちゃん」でいたいですね(笑)

 

 

 

村上牛専門料理店 江戸庄

村上市大町2-17

0254-50-1181

11:00-14:00

不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • 僕らの工場
  • She
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP