絶品の とん汁や創作酒粕スイーツが楽しめる上古町の「古町ぺんぎん商店」。今年8月にオープンするまでの経緯やお店のコンセプトなど、いろいろなお話を代表の早川さんに聞いてきました。
古町ぺんぎん商店
早川 幸司 Koji Hayakawa
1983年新潟市中央区生まれ。株式会社文久堂の代表取締役。新規事業として「古町ぺんぎん商店」を立ち上げる。
――まずはオープンまでの経緯を教えてください。
早川さん:2021年8月8日末広がりの日に合わせてオープンしました。母体は株式会社文久堂という印刷会社で、私はそこの3代目として代表をしています。65年続いている会社で、文字モノといって冊子や文集、官公庁や学校関係のお便りや本の印刷製本がメインになっています。
――じゃあ新規事業としての飲食店オープンだったんですね。
早川さん:デジタル化に加えてコロナ禍で、実際うちの会社もどんどん縮小してコンパクトなかたちで続けている状態だったので、何か新しい事業をやらなきゃいけないっていうのは、これまでずっと考えていたんですよ。
――この場所はどうやって決めたんですか?
早川さん:ここは築94年の、しばらく使われていない倉庫だったんです。ただ家賃は格安で、しかも商店街の中にあって1階の路面店という立地はとても良い条件だと思ったんです。始めてしまえばランニングコストは安いから、最初にコストが多くかかっても長い目で見れば悪くないんじゃないかと。
――立地を重視したんですね。
早川さん:あとは自分のエゴになってしまうかもしれないんですけど、私は生まれがこの近くで、学生の頃とかはすごく賑わっていたエリアなんですよ。「お酒を飲む」ってなったら今みたいに万代や駅前じゃなくて、古町だったような時代で。古着屋さん巡りをしたりもしました。それが大学進学で上京して就職して離れている10年とか15年のあいだにどんどん衰退していってしまって。人通りも少なくなって夜も真っ暗になってしまって残念な気持ちはあったんです。
――それで、ぜひ古町にと。
早川さん:こんな小さい店舗をはじめたくらいで大それたこと言えないんですけど、地域のために何かできないかっていう気持ちもありました。せっかく空き家があるのであれば、それを活用して古町に人が戻って盛り上がっていくようなことやりたいって気持ちがずっとあったんですね。
――新規事業として飲食業以外は考えなかったんですか?
早川さん:新潟に帰ってきた当初から印刷会社が別事業をやるとき、親和性の高い広告とかWEBのような事業をはじめる会社さんは多かったですね。でも印刷業界が不況でみんなが同じように広告やWEBを始めると、結局それだけ競合が増えていくので、必然と運営は厳しくなりますよね。だったら印刷屋が母体としてある強みを活かしながら、まったく別の業界での売り上げの柱を作った方が安全だと思ったんです。
――「古町ぺんぎん商店」の構想はどんなところから生まれたんですか?
早川さん:ぺんぎん商店に関しては、去年の夏にこの事業とは関係なく友達の居酒屋の駐車場を間借りして、夏期間限定でかき氷とドリンクの販売をしたんです。一緒にやっているスタッフがぺんぎんが好きなのもあったり、あとは夏だから涼しげな感じが良くて「ぺんぎん」とつけたんです。それでこの事業をやるにあたって、そのままぺんぎんは残してもいいんじゃないかって思ったんです。ぺんぎんは鳥だけど空を飛べなかったり、歩き方もてくてくかわいらしく歩くじゃないですか。昔を振り返ったときに、このあたりは上古町から下古町まで歩いている方たちがたくさんいたのを思い出して、当時みたいにまたみんながてくてく歩きまわる姿が戻ってほしいなっていう想いからつけました。
――2階はイベントスペースにしているんですね。
早川さん:最初は2階まで飲食店として使おうと思ったんだけど、コロナ禍でなかなか難しいんじゃないかと思って、自分たち発信で何かイベントをして人を集めたりだとか、あとはスペースを貸し出すことで人が集まることを他の人にも考えて欲しい、っていう気持ちがあります。
――まずは人を集めよう、ということなんですね。
早川さん:とにかく人が集まる何かっていうのをやりたくて。最初はもっと飲食に特化した方がいいってまわりから指摘されたんですけど、私としてはこのふわっとしてる曖昧な感じも狙いだったりするんですよ。
――どんなイベントがあるんですか?
早川さん:8月末にはうちの主催で「ぺんぎん市」っていうイベントを行いました。面白いのが、うちのツイッターのフォロワーさん見てもらうと分かるんですけど、ぺんぎん好きとかぺんぎんグッズ集めている方とかが多くて全国的にフォローしていただいているんです。そこからハンドメイドでぺんぎんグッズ作っている方とかを募集してここで販売会したんですよ。
――とん汁をメインにしたのには何か理由があったんですか?
早川さん:妙高の方で食べるとん汁って、玉葱たっぷりで甘くてほぼ無水のおかずとん汁みたいな感じですよね。そんなとん汁とご飯で定食が成り立つのを見て、それを食べられる店が新潟市にひとつもなかったのでやってみようとなったんです。自分たちが単純に食べたいっていうのもありましたけど、新潟って文化的に豚肉の消費量が多い県で、とん汁とかカレーがすごい好きな県民性なんです。
――確かに新潟市内で上越風のとん汁食べられたら嬉しいです。
早川さん:新潟市内では競合も少ないし、上越風とん汁ということで知名度もあるし、市内でやれば新潟初にもなるし。そんなわけで新潟のブランド豚を使った豚汁専門店になったんです。夏にとん汁のお店オープンして尖ったことやってたから、周りからは何やってんのって結構言われましたけどね(笑)。その辺の意見も取り入れて、若い子向けにはスイーツとかもはじめたりしました(笑)
――これからもメニュー増える可能性ありそうですね。
早川さん:今は「豚そば」と言ってとん汁に中華麺を付けて食べるつけ麺をだしているんですけど、秋冬にかけては「とん汁ラーメン」というのも考えています。
――今後の目標は?
早川さん:まずは古町に人が戻ってきてほしいですね。なので自分のお店の売上アップと地域活性化っていうのを目指していきたいです。ここをオープンする前は、近隣のお店とお客さんの取り合いになっちゃうんじゃないかとか、受け入れてもらえないんじゃないかって思ったんですよ。だけど商店街の方たちは優しくて、みんなで盛り上げていこうよとか話しかけてくれました。今あるお客さんを取り合うんじゃなくて、みんなで協力してお客さんの絶対値を増やして活性化していきたいと思っていて。それを達成できたらいちばんですね。
古町ぺんぎん商店
新潟市中央区一番堀通町513ー4
080-3313-2233
営業時間:11:00~19:00
定休日:不定休