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舌の肥えた新潟のお客さんに挑戦する「pâtisserie LE DÉPART」のケーキ。

新潟市中央区、高志中等教育学校の近くに、フランスの港町をイメージさせるデザインの洋菓子店があります。「pâtisserie LE DÉPART(パティスリー ル・デパー)」。週末になるとケーキやお菓子を買い求める人たちが大勢詰めかける人気店です。どうしてそんなに人気があるのでしょうか? その秘密を探るべく、今回はオーナーシェフの岡田さんに、お菓子作りに対するこだわりをお聞きしました。

 

pâtisserie LE DÉPART

岡田 崇 Takashi Okada

1971年東京都生まれ。大阪の辻調理師専門学校を中退し、アルバイト先のケーキ店に就職。その後は東京、大阪、北海道などのケーキ店、ホテル、レストランでパティシエとして腕をふるう。知り合いの紹介で新潟の人気ケーキ店に勤務。2019年に独立して「pâtisserie LE DÉPART」をオープンする。趣味はゴルフや食べ歩き。

 

東京のスケボー少年が、新潟でケーキ店をオープンするまで。

——まずは、岡田さんがパティシエを目指したきっかけを教えてください。

岡田さん:僕は高校生の頃スケボーをやっていたんです。その練習をしていた場所の隣にケーキ屋さんがあって、窓からケーキを作る職人の仕事を見ているうちに、憧れるようになったんですよ。買い物に来るお客さんがみんな幸せそうで、大事そうにケーキを抱えて店から出てくるのも印象的でした。それで高校を卒業するときパティシエになる決心をして、大阪の「辻調理師専門学校」に入学したんです。でも、中退してしまって。

 

——辻調理師専門学校って有名な専門学校ですよね。どうしてやめちゃったんですか?

岡田さん:学校に行きながらケーキ店でアルバイトをして、腕のいい先輩からケーキ作りを教わるうちに、学校で学ぶよりは実戦で鍛えた方がいいと考えるようになったんです。そこでアルバイト先にそのまま就職することになりました。しばらくその店で働いて、別の店に移りました。いろいろな店で経験を積みたいという気持ちがあったので、その後もいろいろな店で働いてきました。

 

 

——いろいろなお店というと、例えばどんなところでパティシエをやってきたんですか?

岡田さん:東京ディズニーランドのオフィシャルホテルにいたこともあります。そこのフランス人シェフから、フランスのケーキ店を紹介してもらって、そこで修行させてもらうこともできました。

 

——おお、フランスにまで。海外経験はいかがでしたか?

岡田さん:自分と同世代のパティシエの仕事に対する姿勢が、とてもいい刺激になりましたね。彼らに勧められて参加したコンクールで、自分のレベルがどれくらいなのかを知ることもできました。フランスでの修行を通して技術や知識を覚えることができたのはもちろん、お菓子作りに本気で向き合えるようになったことが大きかったですね。

 

 

——帰国してからは?

岡田さん:東京や大阪でパティシエとして働いていた後、友人から誘われて北海道の有名なケーキ店で商品開発の仕事をすることになりました。乳製品の生産者に会って話を聞いたり、いろいろ見学させてもらったりして、ケーキの材料になる牛乳や生クリーム、バターについて勉強することができたし、何より生産の過程を知ることで原料の重みを感じられるようになりましたね。

 

——パティシエではなく商品開発の仕事をしていたんですね。

岡田さん:はい。メーカーからいろいろな新製品のサンプルがもらえて試すこともできたし、たくさんのお菓子を試作できましたね。ただ大きなお店だったから、自分が苦労して作り上げたお菓子でも、完成するとパッケージや価格設定は他の人が担当することになるんです。そこにだんだんと寂しさを感じるようになっていきましたね。

 

——自分が作ったレシピが自分だけのものにならない、と。東京や大阪ではなくて、新潟でお店を始めたのはどうしてなんですか?

岡田さん:北海道時代に知り合った乳製品メーカーの友人から新潟のケーキ店を紹介されて、働くことになったんです。新潟に来てわかったことは、新潟の人たちって食に恵まれているから舌が肥えているんですよね。だから「本当に美味しいものをわかってもらえるに違いない」と思ったんです。それで2019年に独立して、新潟で「pâtisserie LE DÉPART」をオープンしました。店名の「LE DÉPART」は、私がパティシエになって初めて任されたケーキの名前なんです。

 

お菓子作りは、自分の心がけ次第で美味しくなる。

——岡田さんがケーキやお菓子を作るとき大切にしているのはどんなことですか?

岡田さん:パティシエにとって大切なのは観察力なんじゃないかって思っています。作っているときに材料を観察して、どんな状態なのか把握するのは重要なことなんですよ。

 

——なるほど。岡田さんにとっても、観察力はパティシエとしての武器になっているわけですね。

岡田さん:今までいろいろな職場でいろいろなシェフから仕事を教わってきたのも、僕にとっては武器になっていると思います。それぞれに得意なこと不得意なことがあって、そのいいとこ取りをするかたちで学んできました。これは僕にとっての大きな財産ですね。ただ、それをそのまま使ってケーキを作るんじゃなくて、そこに自分のテイストを盛り込んで作っています。

 

 

——他にも心がけていることってありますか?

岡田さん:お菓子作りっていうのは自分の心がけ次第だと思っているんです。手を抜けばそれなりのものしかできないし、手を掛ければ掛けただけ美味しいものができるんですよ。この店では自分がトップだから、叱ってくれる人が誰もいないわけです。「これでいいか」なんて気持ちだとダラダラしてしまうから、自分に厳しくし続けることが大切だと思いますね。ケーキの味って技術とか知識とかだけじゃなくって、最後は作る人の人間力が大事なのかもしれないです。

 

 

——トップならではの考え方ですね。

岡田さん:自分に厳しくするためにも、新製品を作ったら必ず女性スタッフに試食してもらって、思ったままの感想を聞くようにしています。お店に来てくれるお客様はほとんどが女性ですからね。うちのスタッフはハッキリしているので「これ売れます?」なんて言われてカチンとくることもありますが、そういうときはあきらめてボツにしています。自分ひとりでお店を営業するのは無理ですから、スタッフたちにもお店のことを共有してもらいたいんです。あとはスタッフが働きやすい環境をしっかり整えるように気を使っています。

 

——お店に並んでいるケーキやお菓子の中で、特におすすめのものってありますか?

岡田さん:北海道時代の試作で生まれた「フロマージュ・デエス」があります。社長に味見してもらって褒められたものの、手間がかかって生産性が悪かったので封印されたケーキなんです。チーズの組み合わせを何通りも試した末にできたチーズケーキで、同業者には真似できないほど手間をかけた作り方をしているんです。

 

美味しいものを食べることは、身近にある小さな幸せ。

——今後はどんなふうにお店をやっていきたいですか?

岡田さん:今後はコロナ禍で、ますます家族団らんの時間が増えてくると思うんです。そんなときにケーキやお菓子の需要も増えて、味に対しての期待も大きくなってくるんじゃないかと思います。その期待を裏切らないようにするには、プレッシャーも感じますが、とにかく平常心を保ちながら美味しいケーキを作っていくだけですね。ケーキに限らず、美味しいものを食べるっていうのは、身近にある小さい幸せだと思うんです。そんな誰にでも手が届くような小さい幸せをこれからも提供していきたいですね。

 

 

いろいろなケーキ作りの経験を生かして、新潟で「pâtisserie LE DÉPART」をオープンした岡田さん。あまりの人気で店の周囲に路上駐車の車が出てしまうのが悩みの種だとか。今回の取材でケーキの美味しさの秘密がわかったような気がしました。皆さん、お買い物の際は路上駐車にお気をつけください。

 

 

pâtisserie LE DÉPART

新潟県新潟市中央区高志2-9-15

025-286-5526

10:00-19:00

火曜休

 

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