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自然をお手本にした暮らしを提案する、燕の農家「ハーヴェスト」。

JR燕三条駅の近くにある井土巻(いどまき)エリアに、「ハーヴェスト」という名を掲げてコシヒカリ、花苗やハーブ、そしてハチミツを生産している農家があります。農業以外にもハーブの講習やガーデニング施工、コーチングセッションなど様々なことに取り組んでいる様子。農作業でお忙しいなかお邪魔して、土田さんご夫婦にお話を聞いてきました。

 

 

ハーヴェスト

土田 信行 Nobuyuki Tsuchida

1967年燕市生まれ。県外の大学で農業を学ぶ。様々な経験を重ねてから新潟に戻り、実家の農家を継ぐ。1995年より「ハーヴェスト」の屋号で農業を中心とした取り組みにチャレンジしている。

 

ハーヴェスト

土田 陽子 Yoko Tsuchida

1968年東京都生まれ。大学時代に信行さんと出会い、都内の企業で働いた後に結婚。現在は「ハーヴェスト」の広報や渉外を担当する傍、ハーブ講座やコーチングセッションを開催している。

 

花苗やハーブ、ハチミツを生産する農家。

——お忙しいなか取材に対応していただいて、ありがとうございます。

信行さん:昨日は雨降りで作業ができなかったので、今日はやることがたくさんあるんです(笑)。私が相手にしている植物やミツバチは、こちらの都合を待ってはくれませんからね。

 

——では早速お話をお聞きします。信行さんは大学で農学部に進学したそうですけど、最初から実家の農家を継ぐ意志があったんでしょうか。

信行さん:当時の農家は継ぐことが当たり前だったんですよ。ただどうせ農業を継ぐんだったら、いろいろな勉強や経験をして知識を広げておきたいと思ったんです。

 

——卒業後はすぐ新潟に?

信行さん:いろいろなところで経験を積んできました。造園業や花農家との出会いを通して花に興味を持つようになりましたし、農業とはかけ離れた建築や芸術に触れる機会もありましたね。そうしたすべての経験が今やっていることに生かされているように思います。

 

——例えばどんなふうに生かされているんでしょうか。

信行さん:それまではお米と野菜を作る農家だったんですけど、野菜の代わりに花苗の生産をはじめたんです。それも贈り物に使う切り花ではなく、暮らしのなかで育てられる花を作りたかったんですよね。私は華やかな花よりも、楚々とした花をつける植物が好きなんです。だから素朴さを感じるハーブも生産するようになっていきました。

 

陽子さん:新潟県内ではいちばん多くの種類を扱っているんじゃないでしょうか。珍しいハーブもあるので、マニアの方に驚かれることがあるんですよ(笑)

 

 

——ハチミツの生産もされていますが、こんな町中でハチミツが採れることに驚いてしまいます。

信行さん:以前からハチミツ作りに興味があったので、養蜂家の知り合いがうらやましかったんです。そんなある日、トラックのなかに迷い込んできた巣分かれのミツバチを試しに飼ってみたら、この辺りでも飼えることがわかったんです。あれは神のお告げのような出来事でしたね(笑)。その出来事をきっかけに、改めて許可を取って西洋ミツバチの養蜂をはじめたんです。

 

 

——ハーブや花に囲まれているから、ミツバチにとっても恵まれた環境かもしれませんね。こちらのハチミツはどんなふうに作っているんですか?

陽子さんまったく手を加えていない、自然のままのハチミツなんです。うちは採取したあと濾過するだけで加熱など何もしていません。そういったハチミツの食べ方や素晴らしさをお伝えしたいので、「燕三条地場産センター」や「道の駅SORAIRO国上」に置いていただいている他は、直接手売りすることにこだわっているんです。

 

自然に学びながら生活をする素晴らしさを伝えたい。

——ところで陽子さんはどこで信行さんと知り合ったんですか?

陽子さん:私は子どもの頃から犬や猫といった動物が好きだったので、獣医さんになりたかったんですよ。でも獣医を諦めることになったので、得意だった生物学を生かすかたちで大学の農学部に進んだんです。夫とはそこで知り合いました。

 

——大学ではどんなことを勉強されたんですか?

陽子さん:実践型の農業学習を推進している大学でしたので、田植えや畑作、牛や豚の飼育などを体験しました。ミツバチの研究所まであったんです。その体験を通じて、自然の中で暮らすのが人間本来の姿だと思うようになりました。

 

——じゃあ、大学卒業後は農業を?

陽子さん:ところが、都内でOLをしていました(笑)。仕事を右から左にこなすことで精一杯の日々を送りながら、週末には夫が当時働いていた山梨の山中へ遊びに行くんです。ストレスがリセットされて、自然のなかで過ごすことの素晴らしさを感じましたね。

 

 

——信行さんは山梨でも働いていたんですね。新潟へは一緒に戻ってきたんでしょうか。

陽子さん:結婚を機に新潟で暮らすことになりましたが、最初のうちは農業にはほとんどタッチしていなかったんです。農業は義理の両親と夫がやっていたので、私は子育てをしながらスーパーで働いていました。

 

——東京から新潟にやってきて、どんな印象を持ちました?

陽子さん:冬の寒さはともかく灰色の空が苦手で、気持ちが滅入ったりしました。子育てに対しての悩みもあって、あるとき試しにコーチングセッションを受けてみたんです。そしたら人生が180度変わったんですよ。それからは自分でも資格を取ってコーチングセッションの講師をするようになって、11年前からは夫と一緒に農業に本格的に関わって今は広報や渉外を担当しています。

 

——いろいろ大変なこともあったんですね。コーチングセッション以外にも、取り組んでいることはあるんですか?

陽子さん:ハーブの使い方やレシピ、寄せ植え、ハチミツの採取体験といった講座やワークショップをおこなっています。特にハーブには力を入れていて、「NPO法人ジャパンハーブソサエティーのハーブインストラクター上級」という資格を取得して認定校になりました。ハーブを取り入れた生活の素晴らしさを伝えています。

 

 

——ハーブといえば、ハーブ入りのアイスクリームも販売しているんですよね。

陽子さん:「燕三条 畑の朝カフェ」というイベントでデザートとして提供したのがきっかけなんです。好評だったので販売してみようということになって、「レモンバーベナ」のアイスクリームを作りました。他にも4種類のベリーを使った「ミックスベリー」、うちで採れたハチミツを100パーセント使った「ハニーミルク」を作っています。

 

——どれも美味しそうですね。お花にしろハーブにしろ、信行さんはどんなことにこだわって農業をしているんですか?

信行さん:「無理はしない」ということですね。できるだけ農作物には関与しないようにして、自然の力だけで育てるようにしています。ただ無農薬栽培にこだわり過ぎると、農家の負担が大きくなってしまい、続けていくのが困難になってしまいますので、最小限の農薬やテクノロジーは使わせてもらっているんです。農家も無理せず、農作物にも無理をさせずに共存していきたいですね。

 

 

——今日はありがとうございました。今後はどんなことに力を入れていきたいですか?

陽子さん:今までコロナ禍で開催できなかった、田植え体験やハーブ講座などのワークショップを再開して、生活のなかに自然を取り入れる素晴らしさを伝えていきたいですね。

 

 

ハーヴェスト

燕市井土巻1-458-3

090-7260-9970

9:00-17:00(毎週木曜オープンファーム15:00-17:00)

(来園時要連絡、オープンファームは予約不要)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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