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最強マーボー豆腐が人気の、新潟の老舗「中華飯店 保盛軒」。

新潟で中華料理のパイオニアといえば「保盛軒(ほせいけん)」の名を挙げる人が多いのではないでしょうか。長い間古町で営業を続けてきましたが、移転した現在は西区の住宅街で営業しています。人気メニューの「最強マーボー豆腐」をいただきながら、店主の恵さんからお店の歴史や料理のこだわりを聞いてきました。

 

 

中華飯店 保盛軒

恵 盛良 Seiryo Ei

1950年新潟市中央区生まれ。大阪府の中華料理店で修業後、新潟市に戻って家業の「保盛軒」に就業。店の料理を支え続ける。2002年に建物の老朽化等の事情により、古町9番町から現在の場所に店舗を移転する。

 

昭和2年に創業した、新潟初の中華料理店。

——この「最強マーボー豆腐」はそんなに辛くないんだけど、山椒の痺れがピリピリ効いてきますね。

恵さん:当店でいちばん人気のあるメニューです。インパクトのあるメニューにしたくて、スパイスを強めに効かせた麻婆豆腐を作ったんです。品名もインパクトを出したかったので「最強」とつけました(笑)

 

 

——ご飯やお酒が進むヤツですね。他の人気メニューも教えてください。

恵さん:「サンラータンメン」「えびそば」「フカヒレそば」「牛肉あんかけ焼きそば」あたりでしょうかねぇ。「フカヒレそば」はフカヒレの価格が高騰してしまい、現在はお休みしているんですけどね(笑)

 

——それは残念ですねぇ。それにしても麺料理は人気がありますね。

恵さん:うちは新潟初の中華料理店なんです。それだけではなくて、新潟で初めてラーメンを提供した店でもあるんですよ。当時はどこにも中華麺なんて売っていなかったので、麺打ちからやっていました。大和デパートの食堂にも、うちで製麺した中華麺を卸していたんですよ。まだラーメンが珍しかった時代だったので、ずいぶん話題になりましたね。

 

——そうだったんですね。創業はいつなんですか?

恵さん:昭和2年に横七番町で父が創業しました。中国出身の父は、貴金属の行商をしていた親戚を頼って新潟に来たそうです。父は料理経験がなかったので、東京や大阪の中華料理店で修業を積んでから新潟で店をはじめたんですよ。

 

 

——昭和2年というと……もうちょっとで創業100年じゃないですか。最初は横七番町で営業していたんですね。

恵さん:そうなんです。その後、昭和17年に古町9番町へ移転しました。古町では60年間営業してきましたが、さすがに建物の老朽化が進んで営業に支障が出るようになったんです。

 

——60年も営業していたら、あちこち傷んでくるでしょうね。でも、建て直さずに移転したのはどうしてなんですか?

恵さん:広い店舗だったので、建て直しに大変な額のお金がかかるんです。バブル景気の崩壊でメインにしてきた宴会料理も激減してしまったし、役所の接待も時代の流れで減ってしまいました。なによりも大型ショッピングセンターの郊外進出で、古町から人がいなくなってしまったのは大きかったですね。

 

——時代の流れを感じますねぇ……。

恵さん:店を閉めることも考えたんですけど、長く続いてきた歴史ある店の名を残したかったので、移転オープンすることにしたんです。

 

伝統的な中華料理の精神を、今も守り続ける。

——恵さんは最初から「保盛軒」で働いていたんですか?

恵さん:実家だとどうしても甘えが出てしまうし、他の店を見て勉強しておきたかったので、大阪にある大きめの中華料理店で修業しました。

 

——どのくらい大きなお店だったんでしょう?

恵さん:30人の料理人が働いていて、1,000人の宴会に対応できる店でした。私もその規模の宴会を二度ほど経験しましたが、10人分の大皿100枚を8品分作るのは大騒ぎでしたね。住み込み修業だったので、朝から晩まで働いて休日は月に1回あればいい方でした。

 

——それは大変でしたね。恵さんは修業時代は主にどんな仕事をしていたんですか?

恵さん:その店は料理人が多いから完全分業制で、私は鍋振りを専門にやっていました。最初は鍋洗いしかさせてもらえませんでしたが、洗う前に鍋についているソースを味見できるのが利点でしたね。でも意地悪な先輩はすぐに水を入れちゃうんです(笑)

 

 

——いろんな人がいるんですね(笑)。その店ではどのくらいの期間、修業されたんですか?

恵さん:2年半です。私は5年間修業するつもりでいたんですけど、父が病気で倒れてしまったので新潟へ戻って「保盛軒」を手伝わなければならなくなったんですよ。

 

——それ以来、老舗の味を支えてきたんですね。料理をする上でこだわっていることがあったら教えてください。

恵さん:今はラーメンやランチメニューがメインになっていますけど、伝統的な中華料理を忘れることなく作るようにしています。ラーメンのスープを作るにしても、本場の中華料理の製法を守って、鶏を使って出汁を取っているんです。あくまでも中華料理店なんだという精神を守っていきたいですね。

 

——なるほど。ラーメンやランチがメインになったのは?

恵さん:古町のような繁華街ではなく住宅街ですからねぇ。宴会よりも食事をメインにしたスタイルを変えたんです。

 

 

——ランチメニューはどれも本格的な中華料理なのに、リーズナブルな料金じゃないですか。ライスやスープ、デザートまでつくんですよね。

恵さん:そうなんです。ライスの大盛りを無料にしているんですけど、諸物価が高騰していてなかなか厳しいんですよ(笑)。でもお客様のことを考えると、なかなかやめることができないですね。

 

——サラリーマンには有難いですね。メニュー以外で変わったことはあるんでしょうか?

恵さん:以前よりも店が小さくなったことで、厨房からお客様が見えるようになったんです。特にオープンキッチンなので、常連のお客様が帰り際に声を掛けてくださることもあります。お客様の反応を見ながら料理を作れるのは嬉しいですね。

 

 

 

中華飯店 保盛軒

新潟市西区ときめき西1-12-12

025-379-1010

11:30-14:00(L.O 13:50)/17:00-20:30(L.O 20:20)

水曜、第3木曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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