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自由でいたずら好きな野良猫たちを色彩豊かに描く「ibohashi」。

可愛らしい猫のイラストはよく見ますが、今回紹介するイラストレーター「ibohashi(イボハシ)」さんが描くのは、鋭い目つきをして自由に生きているワイルドな野良猫たち。今月28日まで『つくね美術部10周年展』を開催している新発田市の「TAICOや(タイコヤ)」さんにお邪魔して、ibohashiさんにお話を聞いてきました。

 

 

ibohashi

1990年新発田市生まれ。長岡造形大学を卒業後、障がい者児童施設を経て絵画教室を開くようになり、その傍ら自身の作品の制作発表を続けている。制作中はラジオを聴くことが多く、好きなパーソナリティは島村仁さん。

 

工作を教えながら、障がいのある子ども達と触れ合う。

——ibohashiさんは昔から絵を描くことが好きだったんですか?

ibohashiさん:僕は兄弟がいなかったので、ひとりで遊ぶことが多かったんです。そうなると、どうしてもお絵描きが遊びのメインになるんですよね。いつも好きなアニメや漫画のキャラクターを描いて楽しんでいたので、将来はアニメーターや漫画家になりたいと思っていました。高校では美術部に入ってイラストを描いていましたし、長岡造形大学では美術・工芸科の絵画コースで油彩画を勉強しながら、中学校や高校の美術教員免許を取得しました。

 

 

——美術の先生を目指していたんですか?

ibohashiさん:そうではないんですけど、イラストレーターや画家っていうのはすぐになれる職業じゃないと思ったので、絵に携わる仕事として考えたときに思いついたのが、絵を教える仕事だったんです。

 

——大学卒業後は美術の先生になったんでしょうか?

ibohashiさん:障がい者児童施設で児童指導員の仕事に就きました。クリスマスにはプレゼントを入れる靴下、七夕には短冊をつけた笹飾りというように、工作の指導をメインに子ども達と触れ合っていましたね。

 

——なかなか難そうな仕事ですね。

ibohashiさん:まずは仲良くなることが大切だと思ったので、小さい子どもとの距離感のつかみ方には苦労しましたね。あと、こだわりの強い子どもが多かったので、意地を張り出すとやっぱり動いてくれなくなるので気をつけていました。ただ思いがけない描き方をする子もいて、面白い作品が多かったですね。

 

 

——自分で絵画教室をはじめたのは、どうしてなんですか?

ibohashiさん:新型コロナウィルス感染症の影響で、勤めていた施設が閉鎖されることになったので、今までの経験を生かして自分で絵画教室を開くことにしたんです。ギャラリーやカフェなどを借りながら、新潟県内3カ所で開講しています。最初は生徒が集まるか心配でしたけど、おかげさまで募集定員に達しました。

 

——それはすごい。絵画教室開く上で、大切にしていることはあるんでしょうか?

ibohashiさん:終わった後に「楽しかった」「また来たい」と思ってもらえるような楽しい雰囲気を心掛けています。絵が上手く描けるようになるためには、ひたすら数を描かなければならないんです。そのためには描くことが好きでなければならないと思うので、その気持ちをいかにキープしてあげられるかが僕の役目だと思っています。

 

——なるほど。

ibohashiさん:僕自身、学校の先生に指導されて絵を描くことが嫌いになった経験があるので、同じような思いをしてほしくないんです。だから楽しく絵を描いてもらうために、多少の私語は大目に見るようにしていますし、教室の終わりにはおやつタイムを設けて雑談を楽しんでいます。絵が好きで入ってきた人に、絵を嫌いになってほしくないんですよね。

 

多くのファンを生んだ「nekonotami」シリーズ。

——ibohashiさんの作品は、どんな画材を使って描かれているんですか?

ibohashiさん:水彩絵の具や油絵の具をメインに使っています。水彩は用紙でなければ描けないと思っていたんですけど、あらかじめ下地を塗ることで用紙以外のものに描けることに気づいたんです。今ではキャンバスやスケートボードにも描いています。僕は形を描くことが苦手で、デッサンやパースが歪んでいることが多いんです。でも色彩では評価してもらえることが多かったので、思い切って色彩を前面に出したスタイルにしました。水彩絵の具や油絵の具は、そんな僕のスタイルに合った画材だと思います。

 

 

——なるほど。ちなみに作品のコンセプトはあるんでしょうか?

ibohashiさん:今までいろんなモチーフの作品を描いてきましたけど、最近は「nekonotami(ネコノタミ)」というシリーズを制作しています。ヘッドホンを頭に乗せた野良猫たちで、野生的で鋭い目つきをしているんですけど、どこか親しみやすさも兼ね揃えているというキャラクターなんです。

 

——そうなんですね。でも、どうして野良猫を?

ibohashiさん:昔は近所に野良猫がたくさんいたので、子どもの頃から野良猫に愛着を持っていたんです。そんな野良猫をモチーフに絵を描きはじめたら、気持ちが自由に解放された気がしました。綺麗な色彩や構図を描かなければならないという縛りから抜け出して、自分の描きたいものをのびのびと楽しんで描けるようになったんです。

 

 

——ふむふむ。

ibohashiさん:自分の中にあるいたずら心を野良猫に託して表現することで、子どもの頃に戻って気持ちを自由に解放しようというメッセージを発信しているんですよ。そのメッセージが共感を呼んだのか「nekonotami」シリーズではファンがたくさん増えました。

 

——へぇ〜、これからも楽しみですね。

ibohashiさん:今後は「nekonotami」シリーズをいろいろな場所で見てもらえるように活動していきたいと思っています。それから絵画教室も含めて、自分の拠点にできるようなアトリエ兼ギャラリーを構えることが夢なんです。

 

 

 

ibohashi

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