海沿いの小さな田舎町で
暮らしと人々をつなぐカフェ「絲と糸」
カフェ
2025.12.13
海沿いの小さなまち、糸魚川市。駅前ロータリーを左に曲がって商店街を歩くと、ガラス張りのおしゃれなカフェに出会います。「絲と糸」は、元高校教師のご夫婦がオープンしたカフェ。以前は糸魚川駅北広場「キターレ」で営業していましたが、2025年6月に移転してきました。地域とのつながり、そして糸魚川の魅力について、オーナーの今野さんに伺いました。
今野 直倫
Naomichi Konno(絲と糸)
1995年愛知県生まれ。大学卒業後、東京で高校教員を経験した後、2019年に個人事業主として独立。移動販売のコーヒー屋を営みながら、Webマーケティングを中心とした事業を行う。2023年に糸魚川に移住し、2024年3月に「絲と糸」をオープン。休みの日は同じ通り沿いにある「樵カフェ」で過ごす。
地域の起点になる場所へ、
移転オープン。
――「絲と糸」がお店を移転されたのは今年の6月でしたよね。
今野さん:そうですね、それまでは糸魚川市駅北広場「キターレ」で営業していました。
――移転の理由を伺ってもいいですか?
今野さん:「キターレ」はスタートアップ支援という目的のある施設です。常設店は1年が目途なので、元々移転場所を探していました。ご厚意で少し長い間「キターレ」で営業を続けさせてもらいながら、紆余曲折あって今の場所が見つかり、移転に至りました。
――駅前商店街にあって、駅から徒歩2分と良い立地ですよね。
今野さん:市外からうちに来てくれた人が、他のところにも立ち寄ってもらいやすい場所に出したかったんです。うちは歩いてたまたま見つけるというより、遠方からでも目的を持って来てくださる方が多いというのもあって、うちのカフェを起点に糸魚川を知ってもらえたらなと思っています。
――お店のこだわりについて、改めて教えてください。
今野さん:内装や家具にもこだわっていますが、以前から変わらないところは、糸魚川の地で、その季節にしか味わえない食材を使っているところですね。
――地元の食材を使っているんですよね。おすすめはなんでしょう?
今野さん:プリンアフォガードです。自家製レトロプリンに、ミルクジェラートをのせています。プリンの卵は、糸魚川の養鶏場・渡辺鶏園さんの「元気卵」で、お好みでかけていただくエスプレッソの豆は、老舗製茶問屋である正香園さんが焙煎したものです。糸魚川がぎゅっと詰まったお店の看板スイーツなんですよ。

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丁寧なコミュニケーションで、
地域とのつながりを大切に。
――糸魚川の生産者さんたちとは、移住後どのように知り合われたのでしょうか?
今野さん:最初に会ったのは、卵を仕入れている渡辺鶏園さんです。「共場糸魚川コモンズ」というフリースペースでやっていたイベントに偶然立ち寄ったとき、知り合いました。そこからはありがたいことに紹介でつないでいただいたり、自分で探して会いに行ったりしながら関係を築いています。
――生産者さんとコミュニケーションをとる上で、今野さんが気をつけていらっしゃることはありますか?
今野さん:ただのお金と物のやりとりだけにならないように気をつけています。例えば、お米を仕入れている「清耕園ファーム」は同じ糸魚川市内でも谷を挟むので、少し遠いんですよね。最初にお話させていただくときも、40分くらいかけて自転車で農園まで行きました。
――自転車で40分!すごいですね!
今野さん:電話1本で済ませないで、ちゃんと対面することが大事だと思っています。自分が何者なのか、どういう想いで食材を使いたいのかを必ず伝えています。あとは、SNSで新しいメニューの紹介をするときは、キャプションに説明とメンションをつけて、どこの食材を使っているか、どんな特徴があるのかを投稿しています。
――SNSは、農家さんにとってどんなメリットを感じてもらいやすいですか?
今野さん:投稿を農家さんが見ることで、食材がどんなふうに使われているかがわかりますし、ご自身の作られたものが「絲と糸」を通じてたくさんの人に食べられていることを知ってすごく喜んでくれるんです。うちで食べて美味しかった食材がどこで作られたものか分かれば、お客さんも、今度他の場所で目にしたときに手に取ってくれるかもしれません。継続的にお付き合いしていきたいので、うちのお店に卸して良かったって農家さんにも思ってもらいたいし、お金だけじゃなく、少しでもそういう面で還元したいと考えています。

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海の近くに住みたくて、
糸魚川へ。
――今野さんは愛知のご出身で、大学卒業後は東京にお住まいでしたよね。糸魚川に移住したきっかけを聞いてもいいですか?
今野さん:元々移住することは夫婦で考えていて、“海の近くに住む“というのが第一希望でした。その候補のひとつに挙がっていたのが糸魚川ですね。
――海は海でも日本海側を選ばれたのはなぜでしょう?
今野さん:妻の出身が新発田市なので、新潟県内に移住することは決めていたんです。僕は進学で富山にいたこともあって、日本海側の気候に慣れていたのも理由のひとつですね。村上なども候補に挙がったのですが、最終的には立地で決めました。糸魚川は、金沢にも東京にも行きやすいですし。
――なるほど、そういうことだったんですね。
今野さん:糸魚川市自体は小さなまちですが、買い物なら上越に行けばいいし、県外にも出やすくて便利なんですよね。お客さんも皆さんドライブがてら来てくれるみたいで。市内の常連さんもいますが、6~7割くらいは市外の方です。
――今野さんは移住して今3年目ですが、この辺りでおすすめのお店はありますか?
今野さん:お店の通り沿いにある「樵カフェ」ですね。こだわりのスペシャリティコーヒーが飲めます。実はそこのマスターも移住者で元教員という共通点もあって、休みになるとよく通っているんです。
――最後に、店名の「絲と糸」について由来を教えてください。
今野さん:旧字の絲と常用漢字の糸で、どちらも糸魚川の糸を表しています。うちでお出ししているメニューは、糸魚川の老舗といわれるお店や農家さんから仕入れた素材を使っていますし、そういう伝統ある糸魚川と、新しく移住してきた僕たちのような人間やサービスなどを組み合わせて、新たな糸魚川の魅力を紡いでいけたらいいねというコンセプトでつけました。


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